【指導参考事項】
成績概要書           (作成 平成9年 1月)
課題の分類
研究課題名:カラーの採化率向上技術
      (カラーの安定生産技術)
予算区分:道単
担当科:花・野菜技術センター研究部花き第二科
試験期間:平5〜8年度
協力・分担関係:

1.目的
 カラーの採化率を高めるための球根処理方法と栽培方法を検討し、安定生産に資する。

2.試験研究方法
(1)ジベレリン処理に関する試験。
 1994年:濃度(0,25,50ppm)x品種(ブラックアイビューティー、バーゼルマリー、ピンクパースウェイション)、定植;5月24日
 1995年:濃度(0,25,50ppm)x品種(ブラックアイビューティ、定植;6月27日
 1996年:濃度(0,25,50ppm)x処理時期(催芽処理前、催芽処理前十定植前、定植前)×処理方法
     (3秒間浸漬、30秒間浸漬、噴霧)、定植、6月20日
(2)催芽温度に関する試験
 1995年:催芽温度20,30℃×34日間品種(ブラックアイビューティー )、定植;6月27日
 1996年:催芽温度5,15,20、30℃×28日間品種(ブラックアイビュ ーティー)、定植;6月20日
(3)栽培方法に関する試験
 1994年:マルチ(稲ワラ、白黒ダブル)x品種(ブラックアイビューティー 、ブラフケマジック)、定植;5月24日
 1995年:灌水量(多:2リットル/週1回・24㎝ポット、少;1リットル/同)、マルチ(黒ポリワラ、稲ワラ、無)、
       覆土(ピートモス、ハウス土)、品種;ブラックアイビューティー、定植;6月27日
 1996年:灌水量(多:2リットル/週1回・24㎝ポット、少;1リットル/同)x時期区分(前期;6/25〜7/22、後期:7/23〜)、
       濯水が去(地上、地中)、マルチ(反射ポリワラ、無)、植穴(深さ;5,10cm×覆土:ピートモス、ハウス土)、
       品種;ブラックアイビューティー、定植:6月25日
(4)据え置き栽培に関する試験
 1993年8月6日定植→5℃加温ハウス越冬→1994年6月下旬〜7月下旬採花、品種;ブラックアイビューティー、ブラックマシック、
 ピンクパースウェイション各試験共通:畦幅80㎝条間30cm株間25cm2条檀え、N−P25一K0 2.0−1.8−2.0㎏/a

3.結果の概要
(1)ジベレリン溶液によるカラー球根浸漬処理は、開花球割合および一球当りの抽台数を増加させ採化率向上に有効であった。一球当りの採花本数は、熱処1璽球の1本前後にたいしジベレリン浸漬処理球では2〜5本であった。奇形花率が高くなることはなく、切花品質は良好であった。
(2)ジベレリン処理の効果は、催芽処理前と定値前の2回処理でもっとも安定した。その処理法としては、催芽処理前と定植前にそれぞれ25ppm溶液に3秒間浸漬処理すると
よい。1回処理では効果はやや不安定であったが、催芽処理前に25pp冊溶液に30秒間浸漬するか、または定植前に50ppm深夜に3秒間浸漬すればよいと考えられた。噴霧処理は効果がやや劣った。
(3)催芽温度5〜20℃(3〜4週間処理)では採化率に大きな差はなかったが、30℃では著しく低下した。30℃処理球では形成された肉穂花序の褐変と萎縮がみられた。
(4)試験条件の範囲では、植付深さ10cm、植え穴底部および覆土にピートモス施用、稲ワラまたはポリワラマルチ施用、適正な灌水(とくに定植後抽台までの生育初期)が採化率および切花品質向上に有益であると考えられた。
(5)加温ハウスで越冬させた「プラックアイビューティー」の翌年の花立ちは極めて良好で、一球当り採花本数は6.5本に達し、切花も極めて大型となった。据え置き栽培は、6月下旬〜7月下旬切りの作型として利用可能であると考えられた。

表1 ジベレリン処理の採花率向上効果(1996)
処理
時期
項目 処理濃度・処理方法
0ppm(水) 25ppm 50ppm
3秒間
浸漬
30秒間
浸漬
噴霧 3秒間
浸漬
30秒間
浸漬
噴霧 3秒間
浸漬
30秒間
浸漬
噴霧
催芽前 植込み球数 16 16 16 16 16 14 16 14 14
生存球数 15 14 16 14 15 13 15 15 12
採花本数(切花長60cm以上) 10 5 4 27 48 18 42 60 20
1球当採花本数(〃)* 0.7 0.4 0.3 1.9 3.2 1.4 2.8 4.0 1.7
奇形花率 26.7% 16.7% 0.0% 9.7% 10.9% 0.0% 11.5% 6.0% 22.2%
不開花球率 40.0% 57.1% 75.0% 14.3% 6.7% 30.8% 6.7% 0.0% 25.0%
催芽前

定植前
植込み球数 16 16 16 16 14 16 16 16 14
生存球数 15 13 15 14 14 15 14 15 14
採花本数(切花長60cm以上) 10 9 3 54 46 24 62 63 34
1球当採花本数(〃)* 0.7 0.7 0.2 3.9 3.3 1.6 4.4 4.2 2.4
奇形花率 23.1% 0.0% 25.0% 14.3% 10.2% 19.4% 7.2% 10.0% 12.8%
不開花球率 20.0% 69.2% 73.3% 7.1% 14.3% 20.0% 14.3% 0.0% 0.0%
定植前 植込み球数 14 14 16 10 14 13 16 14 14
生存球数 13 13 15 10 15 12 15 12 13
採花本数(切花長60cm以上) 2 6 9 27 26 28 58 26 23
1球当採花本数(〃)* 0.2 0.5 0.6 2.7 1.7 2.3 3.9 2.2 1.8
奇形花率 33.3% 25.0% 10.0% 12.5% 12.1% 0.0% 6.5% 12.9% 7.7%
不開花球率 61.5% 61.5% 33.3% 10.0% 6.7% 8.3% 6.7% 16.7% 23.1%
*生存球について算出

表2 ジベレリン処理と切花品質(1996,切花長60cm以上の個体)
処理
時期
項目 処理濃度・処理方法
0ppm(水) 25ppm 50ppm
3秒間
浸漬
30秒間
浸漬
噴霧 3秒間
浸漬
30秒間
浸漬
噴霧 3秒間
浸漬
30秒間
浸漬
噴霧
催芽前 切花重 76.5 60.1 69.0 50.0 65.3 51.9 67.0 56.0 70.4
切花長 100.3 87.2 96.1 82.5 93.1 83.0 94.8 90.7 94.8
苞長 9.6 8.6 9.3 8.8 9.3 8.5 9.3 8.8 9.4
茎径(中間部) 12.6 11.4 11.9 11.2 11.7 10.7 11.9 11.0 11.9
催芽前

定植前
切花重 56.3 55.1 54.1 52.5 47.9 59.9 52.3 58.6 54.7
切花長 87.0 80.5 70.7 86.6 85.1 89.5 86.1 90.2 85.0
苞長 9.0 9.1 9.4 9.2 8.4 9.5 8.9 9.2 8.8
茎径(中間部) 11.4 11.7 12.4 11.4 10.6 11.7 10.9 11.3 11.1
定植前 切花重 111.3 40.9 54.9 64.9 76.8 73.2 66.9 43.7 71.2
切花長 107.4 72.3 85.4 90.1 99.6 98.2 96.9 78.0 96.5
苞長 10.2 8.1 9.3 9.4 9.2 9.3 9.5 7.8 9.2
茎径(中間部) 14.3 11.3 11.1 11.5 12.3 12.3 11.7 10.2 12.4

表3 催芽温度の影響(1995)
処理区 植込み
球数
生存
球数
不開花
球数
(病疫球
と除く)
不開花
球数
割合
採花本数 一球当
採花
本数
切花長別割合 球根
肥大率
60cm以上 60cm以下 60cm以上 60cm未満
20℃ 30 24 8 33.3% 28 1 1.2 96.7% 3.3% 405%
30℃ 30 26 19 73.6% 10 1 0.4 91.7% 8.3% 421%

4.成果の活用と留意点
 1)タマネギ以外でも利用できるが、それぞれで測定条件の検索が必要である。
 2)圧感軸を交換すると貫入試験にも利用できる

5.残された問題点とその対応
 1)圧縮距離の精度の向上
 2)特許出願の準備中である。