【指導参考事項】
成績概要書                      (作成 平成9年 1月)
課題の分野
研究課題名:タマネギ品質・調理適性の品種間並びに年次間差異と品質評価法
       (タマネギの調理・加工適性解明と品質評価技術の開発)
予算区分:道単
担当科:中央農試農産化学部品質評価科
     中央農試園芸部野菜花き第一科
    (現花・野菜技術センター研究部野菜第二科)
試験期間:平成6年〜8年
協力・分担関係:

1.目的
 同一生産地(中央農試)で栽培されたタマネギをもとに、その品質の品種間、年次間変動について検討を行い、品種の特性を明らかにしようとした。タマネギの品質調査項目の関連性から、タマネギの調査上の要点や問題点を明らかにする。また、タマネギ品質の機器測定による客観的評価法について検討するとともに、タマネギの食味の面からも品種の特性についても調査を行う。

2.方法
1)形態的特性調査(オニオンリングの利用、内皮着色など、加工用途を想定した)
2)タマネギの内部品質調査
  上記、1)と2)の供試試料中央農試産、17品種・系統
3)タマネギの調理と官能検査(天使女子短期大学で実施)
  在来種(そらち黄)を標準として、F品種との比較で、官能検査を実施。

3.結果の概要
 1)タマネギの各調査項目(1球重、鱗葉数・厚、外皮色、内皮着色、硬さ、ブリックス、内部成分など)について、各項目ごとに品種の平均値を図示し、品種間差および年次間差や品種の特性を明らかにした(内皮着色/緑色部b値を例示:図1、分散分析結果一覧:表1)。
 2)タマネギの機器測定による品質評価法として、色彩色差計による内皮着色の測定法並びにタマネギ鱗葉切片の貫入応力測定による硬さ測定法を新たに設定した(硬さの測定値:図2)。
 これらの測定法は従来の観察による評価法と有意の相関関係が認められ、客観的評価法として産地間差、栽培条件などの比較・検討に活用可能である(硬さの機器測定と触感:図3)。
 3)タマネギの品質の検討結果から、次の点が明らかになった。
 ①鱗葉の1枚の厚さ(リング部分)と球径には直接的な関連性はみられなかった。
 ②タマネギの内皮の白色については、明瞭な品種間差は認められなかった。
 ③タマネギの内皮緑色部のb値は、品種の特性値として利用可能であった(図1参照)。
 ④タマネギの内皮着色の濃さと、外皮色の濃さとの間に関連性はなかった。
 ⑤硬いタマネギ(機器分析値)の貯蔵性は、良好な傾向にあることが確認された(図4)。
 ⑥タマネギのブリックス値は、乾物率の代替値と考えるのが適当であった(図5)。
 ⑦ブリックス値と貯蔵性(健全球率)との間には関連性がみられなかった。
 4)ソテー、ゆでおよびさらしの3形態、そらち黄、月輪および北もみじ86の3品種の食味試験を行った。ソテーおよびゆでの総合評価では3か年を通して品種間に共通の傾向はみられず、品種間の食味の差異は明らかにならなかった。さらしでは、北もみじ86(2月調査)はそらち黄に比較し、形のくずれが少ない特長があったが甘さが弱く、味は嫌われ総合評価は低かった。
 5)官能検査の総合評価を行う際に重点がおかれた項目は、ソテーとゆでは甘さと食感が、さらしでは辛さ、次いで甘さであった。


図1 内皮緑色部分b*値の品種比較(12月・3か年平均値)

分散分析(品種、年次の二元配置)の有意性検定結果一覧
調査項目 品種
間差
年次
間差
調査項目 品種
間差
年次
間差
収量(規格内重量) ** ** 内皮着色被度全体 - **
規格内率 ** ** 被度上部 - **
一球重 ** ** 被度下部 - **
平均球径 * ** 内皮着色濃さ上部 ** **
球径指数 ** ** 濃さ下部 - **
リング1枚厚 - ** 内皮緑色部L* - **
リング数 ** ** 緑色部a* ** **
リング総厚 ** ** 緑色部b* ** **
鱗葉数 ** ** 内皮白色部L* - **
健全球率 ** ** 白色部a* - -
外皮色(観察) ** - 白色部b* - -
全糖含量 - - 硬さ(TP) ** **
還元糖含量 * - タンパク質含量 - **
ブドウ糖含量 - * Brix ** *
果糖含量 ** - 乾物率 ** *
ショ糖含量 ** **  
無相関の検定 *:5% **:1%


図2 テンシプレッサーによる硬さ評価の品種別平均値
  (最小有意差は、各年の分析データより算出)


図3 硬さの触感評価と機器測定「硬さ(TP)」の関係
  (17品種、各3か年平均値の関係)


図4 硬さ(TP)と健全球の関係
  (16品種、各3か年平均)


図5 Brixと乾物率の関係

4.成果の活用面と留意点
 機器による内皮色および硬さの測定法は、客観的評価法として利用できる
 3か年の品種特性値の比較した結果であり、品種の特性把握や選択の参考となる

5.残された間題とその対応
 タマネギ品質に及ぼす産地(栽培環境)間差並びに栽培法の影響
 タマネギの品質評価値と調理・加工品質の直接的関連性