【指導参考事項】
成績概要書 (作成 平成9年 1月)
課題の分野 研究課題名:北海道産小豆の品質特性と種皮色区分 (豆類の加工適性向上試験 2.アン用豆類の食味変動要因解析試験) 予算区分:道費 担当科:中央農試農産化学部品質評価科 試験期間:平成4−7年度 協力・分担関係: |
1.目的
道産小豆と中国産小豆の品質特性に関して、外観形質並びに成分組成等の差異について検討を行った。また、流通上最も重視されている外観品質の一つである種皮色の表示法を検討し、色彩色差計による測定値を基に、明度および彩度を座標軸とした2次元の色調空間による種皮色区分の作成を試みた。
2.方法
1)供試試料・十勝農試・中央農試・上川農試・北見農試・植物遺伝資源センター産小豆:146点(17品種・系統、平成4〜7年産)・輸入小豆他:37点(中国産小豆4銘柄17点、平成4〜7年産)
2)分析・測定項目百粒重・水分、種皮色、タンパク、デンプン、脂肪、煮熟増加比、あん収率、あん色、あん粒径、抽出色素の吸収スペクトル、デンプンの糊化特性、α一アミラーゼ、タンパク質のポリペプチド組成(SDS−PAGE)、煮熟臭強度(ニオイセンサー)、香気成分(ガスクロマトグラフィー)
3.結果の概要
1)道産小豆と中国産小豆の種皮色には明らかな差異が認められ、a*値(赤味度)およびb*値(黄味度)でその差が大きかった。一般成分については、両者の間に大きな差は認められなかった。煮熟特性については、主要道産品種の「エリモショウズ」では中国産小豆よりも煮熟増加比が大きく、あん収率も高い傾向にあった(図1)。
2)抽出色素の吸光度には、年次や栽培地といった栽培環境による影響が大きかったが、中国産小豆の中にはクロロフィルと想定される663nmのピークが認められる品種もあった(表1)。
3)デンプンの糊化特性は品種よりも栽培環境による変動が大きかったが、αアミラーゼ活性については品種による差異が認められた。また、タンパク質のポリペフチド組成には、道産小豆と中国産小豆の間で差異が認められ、道産小豆の中でも遺伝的背最の異なる品種では一部に差が認められた(表2)。
4)煮熟臭強度は道産小豆が中国産小豆よりも高い傾向にあったが、その差はわずかであった。また、香気成分のガスクロマトグラムには品種間で違いがみられ、中国産小豆との間にも差異が認められた。
5)中国産小豆との差異が明瞭であった種皮色に関して、生産から加工までの多方面で広く利用し得る、色調に基づく2次元座標の種皮色区分を作成した(図2)。本区分により、道産小豆と中国産小豆の種皮色は識別可能であった(図3)。
6)本区分を用いて、種皮色の品種・年次・栽培地による差異が区別でき、年次または栽培地による変動は、明度方向で大きく、彩度方向では比較的小さいことが明らかにできた(図4)。
図1 煮熟増加比の差異
平成4年〜7年十勝・中国産普通小豆の平均値
(平成4年は東北小豆を除く)
表1 抽出色素吸光ピークの吸光度(ABS)
品種 (銘柄) |
産地 | P1 (445nm) |
P2 (588nm) |
P3 (663nm) |
P3×100 |
エリモショウズ | 十勝農試 | 0.927 | 0.635 | 0.033 | 3.3 |
アケノワセ | 十勝農試 | 1.155 | 0.687 | 0.043 | 4.3 |
きたのおとめ | 十勝農試 | 0.933 | 0.672 | 0.054 | 5.4 |
サホロショウズ | 十勝農試 | 0.977 | 0.711 | 0.057 | 5.7 |
アカネダイナゴン | 十勝農試 | 0.978 | 0.650 | 0.054 | 5.4 |
カムイダイナゴン | 十勝農試 | 0.706 | 0.557 | 0.044 | 4.4 |
ほくと大納言 | 十勝農試 | 0.688 | 0.492 | 0.035 | 3.5 |
天津小豆 | 中国 | 1.152 | 0.700 | 0.072 | 7.2 |
東北小豆 | 中国 | 1.273 | 0.943 | 0.136 | 13.6 |
唐山小豆 | 中国 | 1.224 | 0.913 | 0.216 | 21.6 |
表2 グロブリン画分のポリペプチド組成
No | 分子量 (kD) |
エリモ ショウズ 平成5年 |
エリモ ショウズ 平成6年 |
エリモ ショウズ 平成7年 |
アケノ ワセ 平成5年 |
アケノ ワセ 平成6年 |
アケノ ワセ 平成7年 |
天津小豆 平成5年 |
天津小豆 平成6年 |
天津小豆 平成7年 |
1 | 90.6 | + | + | + | + | + | + | + | + | + |
2 | 83.9 | + | + | + | + | + | + | + | + | + |
3 | 63.5 | + | + | + | + | + | + | - | - | - |
4 | 60.9 | - | - | - | - | - | - | + | + | + |
5 | 60.1 | + | + | + | - | - | - | + | + | + |
6 | 58.5 | - | - | - | + | + | + | - | - | - |
7 | 55.4 | + | + | + | + | + | + | + | + | + |
8 | 54.0 | + | + | + | + | + | + | + | + | + |
9 | 50.0 | ++ | ++ | ++ | ++ | ++ | ++ | ++ | ++ | ++ |
10 | 46.4 | ++ | ++ | ++ | ++ | ++ | ++ | ++ | ++ | ++ |
11 | 43.7 | + | + | + | + | + | + | + | + | + |
図2 小豆の種皮色区分
図3 種皮色の産地間差異(平成4年産小豆)
◇:十勝産普通小豆、△十勝産大納言、◆中国産小豆
図4 小豆種皮色の年次間差異
平成4〜7年十勝農試産小豆
4.成果の活用面と留意事項
1)道産小豆と中国産小豆の間で認められた成分的な差異は、両者を識別する上での一手段となり得る。
2)色調(L*値およびC*値)に基づく種皮色区分は、品種間、年次問または産地間の差異を識別する上で活用できるが、品種の特性を把握するためには、本区分に色相(H゜)の値を括弧で補助的に併用することが望ましい。
5.残された間題とその対応
1)道産小豆と中国産小豆の間で認められた成分的な差異と製あん特性との関係。
2)種皮色区分に基づいて分類された小豆の加工業者による評価。