【指導参考事項】
成績概要書           (作成 平成9年 1月)
課題の分類
研究課題名:フリーストール牛舎施設の低コスト化
予算区分:道単
担当科:根釧農試研究部酪農施設科
試験期間:平成5〜8年度 協力・分担関係:なし

1.目的
 フリーストールミルキングパーラ方式移行時の、既存牛舎施設の積極的な活用技術を明らかにすると共に、牛舎施設建設時のコスト低減法の検討と、簡易な牛舎構造のフリーストール牛舎を設計・開発し、フリーストール牛舎施設の低コスト化を図る。

2.方法
1)既存牛舎の有効活用法
(1)現地事例調査:国内外の10事例について、改造前後の施設諸元、搾乳作業状況を調査した。
(2)既存牛舎の改造法:典型的な間口10.8mの牛舎についての改造方 法を検討した。
2)低コスト牛舎施設の開発
(1)現地事例調査:低コストでの建設を行っている2事例について調査 を実施した。
(2)簡易フリーストール牛舎
 ①構造・設計:フレーム構造の簡易フリーストール牛舎を設計し、16年床の牛舎を建設した。
 ②乳牛適応性:年床数16の簡易フリーストール牛舎において乳牛の利用状況を解析した。
 ③構造・強度試験:フレームの載荷試験を行ない、設計積雪深による適応範囲を検討した。

3.結果の概要
1)既存牛舎をフリーストールヘ改造する場合は、間口10.8mでは、改造牛舎内には2列あるいは3列のストールを設置することができる。屋内での給餌は難しいので、屋外に新たな給餌施設を設置する必要がある。また、天井が低く、換気が不良な牛舎では壁面の開口部や、棟部の開放を行って換気量の確保に十分留意する必要がある。また、ミルキングパーラーへの改造では間口10.8mの場合、簡易なフラットバーン、アブレストヘの改造はもとより、ピット式パーラヘの改造も十分に可能である。搾乳時の作業姿勢、改造費用、将来計画などを考慮してどのパーラ形式が最適かを判断して改造する。
2)施工法による低コスト化では牛舎分割法、並びに帆布式牛舎の事例調査を行った。帆布式牛舎では屋根工事価格は在来工法に比較し約65%で可能である。
3)簡易フリーストール牛舎の開発では、英国で利用されているケンネル牛舎をモデルに、ホルスタイン用の簡易フリーストール牛舎を設計し、搾乳牛を収容して利用性について検討した。自家施工の場合、基礎をのぞいた建物部分1頭あたり約46千円程度で建設できた。
4)乳牛の適応性では横臥動作終了時にフレームに触れることはあったが、横臥動作を大きく阻害するものではなかった。牛床の利用率のうち、横臥可能な時間にしめる横臥時間の割合は全日平均で41〜54%で、一般のフリーストール牛舎と同程度であり、牛床素材、敷料および換気等に留意すれば構造的な問題はない。
5)フレームの構造計算、および強度試験の結果、柱1本あたり1000㎏程度の過重に耐える事から、lm〜1.5m程度の静的積雪荷重であれば十分な耐力があることが確認された。しかし、積雪過重に応じた屋根部材の補強、屋根からの落雪の除去などを行う必要がある。

スタンチョン牛舎の改造方式別問題点
改造方法 牛舎へ改造 パーラへ改造
長 所 ○搾乳は移行時でも継続して可能。
○省力的な搾乳が最初から可能。
○牛舎は、既存の施設に関係なく自由に
建設することができる。
○資金的に余裕ができてから、パーラを
作ることができる。
問題点 ○天井が低いため、喚起が悪い。
○パーラの建設費が高い。
○増頭が難しい。
○乳牛の移動に時間がかかる。
○改造時の搾乳手順に難点がある。
○乳牛の移動に時間がかかる。
○搾乳の省力化が少し遅れる。
備 考 ○パーラを新築する。 ○パーラへ改造しなくとも搾乳は可能。


図1 既存牛舎改造事例
(上:牛舎、下:パーラ)


図2 簡易フリーストール(ケンネル)牛舎

表2 簡易フリーストール牛舎での
   搾乳牛の牛床利用率
期間 8/3-8/4 8/4-8/5 8/5-8/6
47.6 22.6 50.1
57.7 51.7 51.5
全日 54.2 40.9 51.0
朝搾乳終了〜朝搾乳開始まで


図3 簡易フリーストールでの牛床利用頭数

4.成果の活用面と留意点
 1)既存牛舎の改造利用にあたっては、利用年数、増頭年次計画等を考慮して総合的に判断する。
 2)簡易フリーストール牛舎は、設計積雪深をもとに使用する部材の厚さ等を決定して利用する。
 3)腐蝕防止のため、地面に接する部材および地面から30〜60㎝の範囲は防腐処理を行う。
 4)転倒防止のため、パドック舗装面にアンカーボルト等で固定すると良い。
 5)暑熱対策が必要な地帯では、軒高さ3.0mとし屋根面に輻射熱防止措置をする。
 6)耐用年数は、基礎構造によって異なるが、およそ5年〜10年程度である。

5.残された間題とその対応
 1)簡易飼槽については、今後、現地の事例をもとに強度試験等も含めた検討が必要である。
 2)基礎構造の違いが耐用年数に及ぽす影響についての検討が必要である。