【指導参考事項】
成績概要書                         (作成 平成9年 1月)
課題の分類
研究課題名:春小麦のアカクローバ間作によるダイズシストセンチュウ密度低減効果
予算区分:道費
担当科:北海道農試
     生産環境部線虫研究室
担当者:串田篤彦、
     植原健人、百田洋二
試験期間:平3−8年度
協力・分担関係:なし

1.目的
 ダイズシストセンチュウの非寄主植物アカクローバは、ダイズシストセンチュウ卵の孵化をよく促進し、孵化した幼虫を餓死させることにより密度を低減させる作用を有している。そこで豆類におけるダイズシストセンチュウの被害を軽減するため、アカクローバを作付体系の中に有効に活用する方法として、小麦に間作した場合のダイズシストセンチュウ密度低減効果の有無、その程度等を調査し、間作栽培での有効性を検討、環境調和型農業推進に資する。

2.方法
1)アカクローバ間作によるダイズシストセンチュウ密度低減効果の検討
 ダイズシストセンチュウを増殖させたコンクリート枠圃場(1.5m×2m)に春小麦のみ栽培した区および春小麦の畝間にアカクローバを間作した区を3匹ずつ設け、間作当年と翌年の土壌中のダイズシストセンチュウ卵密度の推移を調査した。
2)間作翌年春の土壌中における孵化促進効果の有無の検討アカクローバ間作翌年の5月20日に各試験区の土壌約500mlに対して500mlの蒸留水を加え、浸出液を採取し、その液中における孵化率を調査した。
3)アカクローバを間作した時の主作物春小麦の収量調査
4)アカクローバ鋤込み後の後作馬鈴薯の収量調査

3.結果の概要
 1)アカクローバ間作当年のダイズシストセンチュウ卵密度は、対照の小麦単作区が秋までに初期密度の70%程度に低下したのに対し、間作区では、40%程度に減少した。しかし、小麦刈り取りによりクローバの生育が旺盛となる8月下旬以降でのダイズシストセンチュウ密度低下は確認されなかった(図1)。
 2)アカクローバ間作翌年の春に採取した土壌浸出液中でのダイズシストセンチュウ卵の孵化率は、小麦単作区の孵化率より有意に高まり、土壌中に孵化促進効果が残存していることが確認された(図2)。
 3)アカクローバ間作翌年のダイズシストセンチュウ卵密度は、アカクローバ間作区で残留孵化促進効果によると考えられる密度低下が顕著に表れ、1996年8月1日時点では試験開始時密度の10%未満となった。 単年度ごとでは、アカクローバ間作による密度低減効果は、間作当年よりも翌年の方が大きく表れる結果となった(図1)。したがって、アカクローバ間作によるダイズシストセンチュウの密度低減効果は、翌年に非寄主作物を栽培することによってさらに大きくなることが明らかとなった。
 4)アカクローバ間作による小麦の収量は小麦を単作した場合の収量とほぼ同等であった(表1)。
 5)アカクローバを緑肥として鋤込んだ後の馬鈴薯収量は増加した(図3)。


図1 アカクローバ間作によるダイズシストセンチュウ卵密度低減効果
   点線グラフは、1996年5月1日時点の卵密度を100とした密度推移


図2 アカクローバ間作翌春の土壌中の孵化促進効果
   (処理後25日目の孵化率)

表1 春小麦収量
  収量(kg/10a) 千粒重(g)
春小麦単作 222 37.9
アカクローバ間作 257 39.1
各数値は水分含量12.5%として算出
[小麦栽培条件]品種:ハルユタカ、畝幅:30cm条播、播種量:11kg/10a、
     施肥:082化成6kg/10a全量基肥(道施肥標準の10%)
[アカクローバ栽培条件]播種量:2kg/10a、畝間条播、無施肥


図3 後作物(馬鈴薯)の収量
[馬鈴薯栽培条件]品種:トウヤ、畝幅:60cm、株間:40cm
       施肥:S053 40㎏/10a(北海道施肥標準の半量)
       植付日:5月22日、収穫:9月17日

4.成果の活用面・留意点
 1)ダイズシストセンチュウ総合防除の一手法として利用できる。
 2)アカクローバの栽培は、小麦への間作緑肥としての栽培法に準ずる(表1)。
 3)小麦収穫後は、アカクローバの生育量を十分に確保することが重要である。
 4)アカクローバでネコブセンチュウ類が増殖した場合は、後作としてネコブセンチュウ感受性作物の導入は避ける。

5.残された問題点
 1)ドリル蒔きによる栽培法に対応したアカクローバの間作法の検討。
 2)秋小麦に間作した場合のアカクローバ生育量確保の検討。