【指導参考事項】
成績概要書                  (作成 平成9年 1月)
課題の分類 研究課題名:ジャガイモそうか病の発生実態
      (ジャガイモそうか病の総合防除法開発試験)
予算区分:道費、受託
担当科:十勝農試研究部病虫科、土壌肥料科、作物科
     北見農試研究部病虫科、土壌肥料科、作物科
     中央農試病虫部土壌微生物科
試験期間:平成6−8年度
協力・分担関係:中央農試生物工学科細胞育種科、
                      遺伝子工学科

1.目的:北海道における馬鈴しょのジャガイモそうか病の発生実態を明らかにする。

2.方法:本病の発生程度、土壌理化学性、耕種概要等を調査した。

3.結果の概要
 a.各支庁別の発生状況と病原菌の分布  各支庁の年次ごとの発病度を平均すると石狩・空知・胆振・日高は0.0〜2.0、上川、十勝がそれぞれ5.0、2.4と少発であるが、渡島、後志がそれぞれ9.6、9.1と比較的高かった。網走は他と比較して発生が多く、発病薯率で50%以上、発病度で20以上であった。網走管内での発生には地域的偏りがあり、斜網地区(網走市・東藻琴村・小清水町・清里町・斜里町を指す)が突出して高く、その他の地区(北見・東紋・美幌地区を指す)は前述の道内他の支庁とほぼ同等の発生程度であった。釧路・根室の発生程度は網走・斜網地区と同様に高かった(図−1)。これらの多発地帯では発生の年次間差異が比較的少なく、土壌中の病原菌密度が高い水準にあることが考えられた。
 そうか病菌Strcptomycesturgidiscabiesは道東地方に、S.scabiessubsp.achromogenesとS.scabiessubspscabiesは道央・道南・上川地方に優占した。その分布の傾向は1986年の調査結果とほぼ同様であった。
 b.土壌理化学性とそうか病の発生
 土壌pHが5.0以下では発病程度が低く、4.8以下ではほとんど発病が認められなかった(図−2)。また、置換酸度ylが8以上の圃場では発病程度が低かった。一方、交換性カルシウムや有効態リン酸、易還元性マンガンと発病の関係は明らかではなかった(図−3)。
 C.種薯消毒の有無とそうか病の発生
 種薯消毒実施率は網走・斜網地区で12.3%と最も低く、次いで根室が33.3%、上川では49.6%、網走・その他と十勝が比較的高く、それぞれ66.7、69.4%であった。
 d.輪作年数とそうか病の発生
 少発地帯の道央・道南・上川、十勝、網走・その他では、輪作年数が長い圃場で発生が少なかった。しかし、多発地帯である網走・斜網地区では輪作年数による傾向は認められなかった(表−1)。輪作による発病抑制効果はマイルドであり、少発地帯ではその効果が長期輸作ほど高いが、激発地帯では土壌中の菌量等、他の大きな要因が作用すると低下すると推測された。
 e.根菜須の作付け頻度とそうか病の発生
 1993年の道央・道南・上川、1994年の十勝では根菜類の作付け頻度が高い圃場で多発する傾向が認められたが、他の調査では明確な傾向は見られず、今後さらに検討を要す。
 f.豆頚の作付け頻反とそうか病の発生
 少発地帯の道南・道央・上川、十勝では1993、1994年に豆類の作付け頻度が高くなると発生は軽減される傾向が認められたが、1995年の十勝および網走・その他ではそれほど顕著でなかったことから、豆類の発病抑制効果はマイルドであると推察された。
 g.前回作付け時と今回のそうか病発生の関係
 少発生地帯である道央・道南・上川あるいは網走・その他において、前回作付け時に無発生であった圃場での発生増加が目立った。また、斜網地区でも前回の少発圃場が多発圃場になっている。少発地帯の汚染圃場では病原菌量の増加は緩慢であるが、多発地帯では急激に起こり易いと推測される。
 h.そうか病の発生が目立つようになった年の頻度
 多発地帯の網走・斜網地区では1980年以前から発生の見られた圃場が多く、道内その他の少発地帯では1980年代後半から発生の目立つようになった例が多かった。
 i.有機物施用、圃場排水性、圃場の傾斜、土層改良、土壌改良資材施用とそうか病の発生
 これらの項目とそうか病発生との関連については明確な傾向は認められなかった。


図-1 そうか病の支庁別発生状況(1994年)

表-1 輪作年数とそうか病の発生(1994年)
支庁・地区 輪作
年数
地点数 病薯率 発病度
道央・道南
・上川
>5年 13 6.9% 0.5
4〜3 19 9.4 3.0
1〜2 9 22.1 10.0
十勝 >5 20 6.9 2.8
4〜3 53 17.2 6.2
1〜2 4 49.1 32.0
網走・
  斜網
>5 8 81.7 40.1
4〜3 38 79.5 40.1
1〜2 19 82.4 41.1
網走・
  その他
>5 8 24.1 7.1
4〜3 35 22.7 7.9
1〜2 8 43.6 19.0


図-2 置換酸度y1と発病度の関係


図-3 土壌pHと発病度の関係

4.成果の活用面と留意点
 1)発生の実態をとりまとめたものです。

5.残された間題とその対応
 1)根菜類および豆類の作付けと発生の関係の究明
 2)堆肥施用が発生に及ぼす影響
 3)畑作圃場の土壌pH管理方法の検討など、今後の試験を継続する。