【指導参考事項】
成績概要書                        (作成 平成9年 1月)
課題の分類  − 根釧農試
研究課題名:乳牛のボディーコンディションの推移と繁殖性との関係
       (乳牛における体蓄積脂肪量の簡易評価と繁殖性に関する試験)
予算区分:道費
担当科:根釧農試研究部酪農第2科
試験期間:平成5ー7年度
協力・分担関係:なし

1.目的
 乳牛の体蓄積脂肪の指標ひいてはTDN充足の代替になると考えられるボデーコンディションスコア(以下、BCS)を用いて、その推移と繁殖性との関連を検討した。

2.方法
 中標津町の乳検成績や繁殖成績に基づき4農場を選定し、1995年12月から1996年9月までの10ヶ月間、月2回づつ各農場の経産牛と分娩が近い未経産牛のBCSを採点した。また、当場の牛についても同様に採点した。BCSの採点は基本的には、Wildmanの原法を簡易化したFergusonの方法で行った。

3.結果の概要
1)各農場毎に特徴的なBCSの推移が見られ、繁殖成績との関連が示唆された。(図1、表1)。
2)分娩後のBCSの低下が0.75以上と大きい場合は、空胎日数は長くなり、特に分娩時BCS4.0以上であれば授精回数及び初回授精受胎率も劣った。(表2)
3)蹄疾患は繁殖成績に影響しBCSの低下も招いた。(表3)
4)BCSの低下は体重役51kgの減少に相当した。

表1 各農場毎に特徴的なBCS,疾病発生および繁殖成績(1995年乳検成績)
農場 牛群
頭数
平均
産次
分娩時
BCS
分娩後
8週まで
低下
搾乳牛
BCS2.251)
卵巣卵
管疾患
2)
蹄疾
患数2)
分娩
間隔
授精
回数
初回授
精受胎
空胎
日数
24.8 2.1 3.61 0.55 0-1% 6.0 2.0 382 1.2 71.4% 9.3
45.5 3.5 3.46 0.61 17-10% 31.8 9.1 422 2.1 35.8% 144
56.3 3.4 2.88 0.39 34-17% 37.7 7.1 406 1.9 39.8% 138
63.4 3.1 3.09 0.61 41-24% 37.7 7.1 407 2.4 29.1% 137
56.7 2.7 3.56 0.62 3-4% 3.5 2.6 423 2.9 35.7% 139
1)夏期−冬期%
2)100頭当たり年間診療回数


図1 農業別に見たBCSの推移

表2 分娩時BCS別.分娩後BCS低下別と繁殖成績との関係
分娩時の
BCS
分娩後の
BCS低下

初回授精
日数
授精回数 初回授精
受胎率
空胎日数
2.50〜3.00 0〜0.5 30 76±26 1.7±0.8 53% 100±35
3.25〜3.75 0〜0.5 35 69±26 1.7±0.9 54% 94±37
0.75以上 32 67±23 1.9±1.2 50% 101±44
4.00以上 0〜0.5 4 67±28 1.5±0.6 50% 82±17
0.75以上 4 81±23 2.5±0.6 0% 126±32

表3 蹄疾患と繁殖成績との関連
蹄疾患 頭数 初回授
精日数
授精回数 初回授精
受胎率
空胎日数 BCS低下
なし 32 64±25 1.9±1.1 47% 89±35 0.51±0.30
あり 13 79±33 2.2±1.1 38% 115±39 0.73±0.31
(P=0.090) (P=0.037) (P=0.031)

4.成果の活用面と留意点
 1)牛群のBCSの採点は継続的に行い、個体管理にまで利用できれば最善であるが、一時点の採点でも牛群全体の栄養状態を把握できる。
 2)一時点の乾乳牛群および搾乳牛群のBCS分布からBCS2.25以下の割合、乾乳牛群と搾乳牛群とのBCSの差を知り、その農場の飼養管理を評価する。
 3)BCSの採点は採点者により変動するので、各農場で経営者が採点できるようになるのが望ましい。

5.残された問題とその対応
 1)牛群の繁殖成績を評価するにはBCSのみでは不十分と思われるので、乳量、産次、飼養条件による変動を考慮して行う。また乳中尿素窒素(MUN)を加えた評価法の開発が待たれる。
 2)本成績のBCS採点は主としてFurgusonの初期の方法で行った。その後改変されたものが出されたのでその精度の比較が必要と思われる。