【指導参考事項】
成績概要書 (作成 平成9年 1月)
課題の分類 北海道 畜産・草地 畜産 研究課題名:養豚飼料への添加物(中鎖脂肪酸、フィターゼ)の給与効果 (配合飼料の高品質化による肉豚の生産性向上試験Ⅱ) 予算区分:道費 担当科:滝川畜試研究部養豚科 試験期間:平6−8年度 協力・分担関係:なし |
1.目的
養豚用配合飼料において、近年発育や肉質の向上または飼料の利用性を高めるためにの効果が有望視されている添加物がいくつか報告されているが、わが国での試験データは少なく、効果や利用方法について明らかでないものもある。本試験では、肉豚における発育の改善と脂肪品質の改善等が期待される中鎖脂肪酸と、飼料中のリンの利用性を改善することが報告されているフィターゼを取リ上げ、養豚飼料への添加効果について検討した。
2.方法
試験1.中鎖脂肪酸の飼料添加が肉豚の発育と枝肉形質に及ぼす影響
肥育後期飼料へ中鎖脂肪酸(MCT)を4%および8%添加した場合の発育と枝肉形質に及ぼす影響を検討した。
試験2 フィターゼ添加がリン排泄量および離乳子豚の発育に及ぼす影響
リンが不足する飼料に対するフィターゼの添加効果、およびリンの不足を無機リンの添加またはフィターゼの添加によって補ったものの比較をリンの出納と発育調査によって検討した。
3.結果の概要
1.中鎖脂肪酸の飼料添加が肉豚の発育と枝肉形質に及ぼす影響
(1)中鎖脂肪酸(MCT)のエネルギー補給原料としての効果は、日増体重および飼料要求率の向上の程度について大豆油に比較してほぼ同等であった(表1−1)。
(2)MCTの添加は枝肉の脂肪のL値および融点を高め、この効果は飼料への4%添加でも明らかであった(表1−2)。
2.フィターゼ添加がリン排泄量および離乳子豚の発育に及ぼす影響
(1)飼料へのフィターゼの添加は飼料中の未利用のリンの吸収および蓄積を促進し、リン排泄量の低減に効果か示された(表2−1)。
(2)飼料中のフィターゼ量500PU/gと1500PU/gとの間では1500PU/gとした場合のリン利用性改善効果が高い傾向にあったが、その差はわずかであった(表2−1)。
(3)フィターゼ添加によリ離乳子豚の発育成績は改善される傾向にあったが、リンの不足を無機リンの添加で補った場合に比較して改善の程度は小さかった(表2−2)。
表1-1 発育成績
対照 | MCT4% | MCT8% | 大豆油4% | 大豆油8% | |
飼料摂取量(㎏/日) | 3.60±0.36 | 3.57±0.24 | 3.31±0.12 | 3.42±0.35 | 3.11±0.16 |
日増体重(g/日) | 894±93 | 1008±54 | 948±47 | 1025±113 | 965±75 |
飼料要求率 | 4.03±0.30a | 3.55±0.21b | 3.49±0.12b | 3.35±0.26b | 3.23±0.24b |
表1-2 体脂肪(内層脂肪)の理化学的特性
対照 | MCT4% | MCT8% | 大豆油4% | 大豆油8% | |
脂肪色L値 | 66.2±2.9b | 68.8±1.1c | 71.1±1.6d | 65.5±0.5ab | 63.6±0.9a |
脂肪融点(℃) | 33.1±1.5b | 35.3±1.9bc | 36.7±2.4c | 29.7±1.6a | 28.0±0.7a |
表2-1 リンとカルシウムの摂取量および排泄量
対照 | 500PU | 1500PU | ||||
P | Ca | P | Ca | P | Ca | |
摂取量(g/日) | 7.53 | 16.50 | 7.52 | 16.48 | 7.54 | 16.52 |
糞中排泄量(g/日) | 5.54a | 5.98 | 3.90b | 5.20 | 3.69b | 4.96 |
尿中排泄量(g/日) | 0.05 | 0.41 | 0.28 | 0.25 | 0.40 | 0.13 |
吸収量(g/日) | 1.98a | 10.53a | 3.62b | 11.28b | 3.84b | 11.55b |
蓄積量(g/日) | 1.93a | 10.12a | 3.34b | 11.03b | 3.45b | 11.42b |
表2-2 発育成績
無添加 | 無機リン強化 | フィターゼ添加 | |
日増体重(g/日) | 466.0±78.6 | 543.3±97.6 | 495.0±45.4 |
飼料摂取量(g/群) | 200.2 | 212.1 | 200.9 |
飼料要求率 | 1.92 | 1.74 | 1.81 |
4.成果の活用面と留意点
(1)中鎖脂肪酸は現在食品添加物として製造されており、コスト面で飼料への利用は難しいが、将来的にコスト低減が図られれば枝肉品質向上のために利用できる。
(2)フィターゼの飼料添加を行なう際には、飼料中のリン含量は、豚の発育ステージによるリン要求量を考慮して設定する必要がある。
5.残された問題とその対応
(1)中鎖脂肪酸の効果が現われる最低添加水準の検討
(2)豚の生産性を損なわずにリン排泄量を低減させるためのフィターゼ利用技術