【指導参考事項】
成績概要書                  (作成 平成9年 1月)
課題の分類
研究課題名:土壌硬化材によるパドックの泥ねい化防止
予算区分:受託
担当科:新得畜試 家畜部 肉牛飼養科
     滝川畜試 研究部 養豚科
試験期間:平7〜8年度
協力・分担関係:北農試農村計画部農地農業施設研究室

1.目的
 土壌硬化材によるパドックの泥ねい化防止効果を検討する。

2.方法
1)資材:
パルコート、主成分のフライアッシュにセメントとカルシウム化合物を添加している、土と反応してエトリンカイト(カルシウムアルミネートトリザルフェートハイドレート)となる。
2)試験場所と試験処理:
新得蓄試では肉牛体測所パドックを用い、滝川畜試では分娩豚舎子豚パドックを用い、次表のとおりそれぞれ2つの試験を実施した。

 施工
月日
試験処理土壌使用量処理区の施工手順




7/9/11
試験1 パルコート区(243㎡)
      無処理区(40㎡)
火山灰30㎝・3%
火山灰追加〜資材散布〜混合
〜整地〜散水〜転圧(3tonローラ)

7/9/13
試験2 パルコート+T区(162㎡)
     パルコート+K区(141㎡)
    無処理区(52㎡)
 30㎝・3%
30㎝・3%
火山灰追加〜資材散布〜混合〜
排水材等埋設〜整地〜散水〜
転圧(3tonローラ)




7/8/22
試験1 バルコート区(50㎡)
     無処理区(50㎡)
重粘土30㎝・3%
耕起〜資材散布〜混合〜整地〜
散水〜転圧(550kgローラ)

8/9/17
試験2 火山灰区(95㎡)
     重粘土区(95㎡)
火山灰
重粘土
30㎝・3%
30㎝・5%
表土置換〜資材散布〜混合〜
整地〜転圧(550㎏ローラ)
注1)新得畜試試験2:TとKは排水材
 2)滝川畜試試験2:古い表土を搬出して置換
 3)使用量:混合厚と土重量に対する混合率
 4)無処理区の施工手順:資材の散布・混合なし

3)調査項目
 土壌のサンプルの理化学性・透水性、現場透水試験(円筒法)、山中式土壌硬度、泥ねい化の状況(越冬前後の蹄没跡の深さ、泥ねい化面積)

3.結果の概要
<新得畜試>(1)施工直後の測定では両試験とも、無処理区に比べて処理区の土壌の硬度が大きく、とくに試験1では山中式硬度で38mに達し、土壌硬化材による土の硬さの改善効果は認められた。しかし、粗孔隙量は増しても透水性の改善効果は認められず、試験2で地中に設置した排水材による排水性の改善効果も認められなかった。(表1、表2)
(2)越冬前後における蹄没跡の深さでも、無処理区に比べて処理区の方が浅く、土壌硬化材の泥ねい化防止効果は明らかであった(図1)。また、使用感想の調査でも全員が「やや効果あり」孝たは「かなり効果あり」と回答した。
(3)ただし、1年後の土壌の硬度をみると、試験1では地表面の硬度が無処理区並に低下し、その傷んだ層の下に硬い面(山中式硬度で30㎜以上)が残っていた(表3)。

<滝川畜試>(1)パルコート区の土壌硬度が全般に大きく、土の硬さの改善効果は認められた。透水性の改善効果については、土壌サンプル分析値と現場透水試験結果が逆転し、不明であった。(表1、表2)
(2)降雨後における泥ねい化・湿りの面積はパルコート区の方が著しく少なく、泥ねい化防止効果は明らかであった。(図2)
(3)火山灰と重粘土の比較では5%混合の重粘土区の方が硬く仕上がったが、1ヶ月の使用期間中に3%混合の火山灰区並となった。(図3)

以上のとおり、土の硬さが改善され、泥ねい化防止効果は認められる。しかし、仕上がりの状態が不安定であり、本試験の条件が限定されていることから、今後の検討課題も多い。

表1 施工直後の土壌サンプルの分析値(深さ5cm)
  含水比
(%)
乾燥
密度
(g/cm3)
粗孔
隙量
(%)
飽和
透水係数
(cm/s)
有機物
含有量
(%)
新得・試験1 パルコート区 17.1 1.45 16.4 2.99×10-3 0.3
無処理区1 18.9 1.56 11.2 4.13×10-3 0.1
滝川・試験1 パルコート区 30.6 1.14 10.6 1.08×10-4 6.3
無処理区 34.4 1.27 1.5 3.37×10-5 4.8
注)土性:新得壌質砂土(LS)、滝川 軽埴土(LiC)

表2 施工直後の土壌硬度と現場透水試験結果
  硬度(㎜) ベーシック
インテークレート
(㎜/h)
透水係数
ヘの換算値
(cm/s)
深さ0cm 10㎝
新得・試験1 パルコート区 38 31 1.61 4.48×10-5
無処理区 13 22 2.08 5.79×10-5
試験2 パルコート+T区 29 25 1.98 5.51×10-5
パルコート+K区 25 26 2.97 8.25×10-5
無処理区 22 17 0.72 2.00×10-5
滝川・試験1 パルコート区 31 28 0.09 2.47×10-5
無処理区 28 18 0.56 1.54×10-5

表3 1年後の地表面の土壌硬度(㎜)
  湿潤時 乾燥時
新得・試験1 パルコート区 10-31 18-34
無処理区 6 11
試験2 パルコート区 23 25
パルコート+K区 22 22
無処理区 14 13
滝川・試験1 パルコート区 22 27
無処理区 20 26
注1)新得:湿潤時8/19、乾燥時10/23
  滝川:湿潤時10/15、乾燥時11/1
 2)新得・試験1バルコート区:地表面-地中の硬い面


図1 越冬後における蹄沈跡の深さ
  (新得:平8/4/24)


図2 泥濘化面積割合
  (滝川 試験1:17日平均)


図3 硬度の土壌別推移
  (滝川 試験2)

4.成果の活用面と問題点
 (1)仕上がりの状態が施工条件で異なるので適宜散水しながら、十分に転圧する。

5.残された問題点とその対応
 (1)永続性の検討が必要である。
 (2)施工法および凍上の影響の検討が必要である。