【普及奨励事項】
新品種候補

                              (作成 平成9年 1月)
課題の分類
新品種候補名:とうもろこし(サイレージ用)「TH9128」
試験場所名:北海道立十勝農試、上川農試、北見農試、天北農試、農水省北海道農試

1.来歴および試験経過

1)来歴
とうもろこし(サイレージ用)「TH9128」は、ドイツのKWS社が育成した単交配(フリント×デント、構成系統名は不明)の一代雑種である。1991年にOECD登録された。
2)導入および試験経過
平成3年、タキイ種苗株式会社が導入し、平成5年、場外予備検定試験を行った。平成6〜8年に、北海道立十勝農試、上川農試、北見農試および天北農試においてとうもろこし(サイレージ用)品種比較試験を行った。さらに平成7〜8年に忠類村、士別市、遠軽町および豊富町において同現地試験を行った。また、平成5〜6、8年には、農林水産省北海道農試において、すす紋病およびごま葉枯病に対する特性検定試験を行った。

2.特性(標準品種「ダイヘイゲン」(早生の中))

1)熟期
絹糸抽出期は「ダイヘイゲン」および「ワセホマレ」より1〜2日遅い。収穫時熟度は「ダイヘイゲン」並みかやや進み「ワセホマレ」並みである。総体の乾物率は「ダイヘイゲン」および「ワセホマレ」並みである。熟期は早生の中に属する。HRMは134日である。
2)耐倒伏性
「ダイヘイゲン」および「ワセホマレ」より強い。
3)発芽および初期生育
発芽は「ダイヘイゲン」および「ワセホマレ」並みである。初期生育は「ダイヘイゲン」および「ワセホマレ」並みである。
4)収量性および乾物特性
乾総重およびTDN収量は「ダイヘイゲン」より多い。乾物中TDN割合は「ダイヘイゲン」並みかやや低い。
5)形態特性
稈長および着雌穂高は「ダイヘイゲン」より高い。葉数は「ダイヘイゲン」より多い。
6)耐病性
すす紋病抵抗性は「ダイヘイゲン」よりやや強い。
ごま葉枯病抵抗性は「ダイヘイゲン」より強い。

3.試験成績
1) 生育収量調査
場所 品種・系統名 発芽期
(月日)
初期
生育
絹糸
抽出期
(月日)
倒伏
(%)
収穫時
熟度
稈長
(cm)
着雌
穂高
(cm)
不稔個
体割合
(%)
収量(kg/10a) 総体
乾物率
(%)
乾雌穂
重割合
(%)
乾物中
TDN
(%)
乾総重 推定
TDN
同左比
(%)



TH9128 5.27 1.1 8.02 0.9 黄初〜中 251 105 0.0 1303 950 115 29.3 55.0 73.0
ダイヘイゲン 5.26 1.1 8.01 2.8 黄初 234 96 3.9 1137 823 100 28.6 53.0 72.4
ワセホマレ 5.26 1.2 8.01 2.1 黄初〜中 219 73 8.3 982 705 86 29.2 50.8 71.8
リビア 5.27 1.6 7.31 0.4 黄初〜中 227 100 0.6 1213 878 107 28.5 53.1 72.4



TH9128 5.27 1.7 7.24 0.2 黄後〜完熟 259 112 0.0 1619 1155 104 28.4 49.4 71.5
ダイヘイゲン 5.28 1.7 7.25 5.5 黄中〜後 242 104 4.4 1553 1108 100 28.1 49.5 71.5



TH9128 6.04 1.8 8.10 0.6 糊後 237 95 0.6 1553 1104 119 26.3 48.1 71.1
ダイヘイゲン 6.04 1.7 8.08 3.3 糊後 214 88 0.6 1289 931 100 26.2 52.3 72.2
ワセホマレ 6.04 1.5 8.08 1.8 糊後 214 74 5.0 1227 880 94 26.1 50.3 71.7



TH9128 6.06 1.2 8.20 0.0 糊中〜後 203 83 0.0 1287 909 120 25.0 44.3 70.1
ダイヘイゲン 6.06 1.5 8.19 4.9 糊中〜後 185 71 0.9 1061 753 100 24.9 46.4 70.7
ワセホマレ 6.06 1.6 8.18 2.6 糊中〜後 177 53 0.0 1091 774 103 25.1 46.1 70.6


TH9128 6.09 1.0 8.21 0.2 糊中〜後 0.0 1073 766 119 27.8 49.6 71.5
ダイヘイゲン 6.09 1.2 8.21 6.6 糊中 6.7 899 646 100 26.5 51.0 71.9
ワセホマレ 6.10 1.3 8.22 4.2 糊中〜後 4.2 766 547 85 26.3 49.4 71.5

TH9128 6.06 1.8 8.04 0.3 黄中〜後 247 111 2.4 1920 1363 125 29.8 47.7 71.0
ダイヘイゲン 6.07 2.0 8.07 7.7 黄中〜後 236 108 9.0 1547 1094 100 27.0 46.1 70.6


TH9128 6.06 8.09 0.0 黄初 227 82 0.0 1335 928 108 25.1 42.2 69.6
ダイヘイゲン 6.06 8.08 3.8 黄初 214 84 16.3 1234 864 100 23.9 44.0 70.0
ワセホマレ 6.06 8.09 3.0 黄初 211 72 17.5 1203 831 96 24.4 40.2 69.0


TH9128 6.04 1.2 8.13 0.0 黄初 207 76 0.0 1425 1011 121 27.7 47.6 71.0
ダイヘイゲン 6.04 1.7 8.12 0.0 黄初 180 63 0.0 1148 840 100 26.3 55.8 73.2
ワセホマレ 6.04 1.5 8.12 0.0 黄初 174 46 0.0 1102 796 95 27.1 52.0 72.2
注1)試験年次は,各農試は平成6〜8年,各現地は平成7〜8年である。
 2)初期生育は,指数(1:良〜5:否)で示す。
 3)TDNの算出は,新得方式(TDN=乾茎葉重×0.582+乾雌穂重×0.85)による。

2)耐病性に関する調査
 病害抵抗性(特性検定試験,北海道農試)
  項 目 すす紋病   ごま葉枯病
品種系統名 調査時期 H5.9.20 H6.8.30 H8.9.22 H5.9.5 H6.8.29
TH9128 2.8 3.0 2.7 2.5 3.0
ダイヘイゲン 3.3 2.7 3.0 4.2 4.3
ワセホマレ 2.0 2.7 2.7 4.0 4.0
注1)伝染源は,すす紋病については罹病葉の粉砕懸濁液,ごま葉枯病
 については麦粒培養した菌の接種による。
 2)Elliott & Jenkinsの指数(0:無〜5:甚)による。
 3)試験年次は,すす紋病に関しては平成5〜6,8年の3か年,
 ごま葉枯病に関しては平成5〜6年の2か年である。

3)形態に関する調査
 葉数(枚,十勝農試)
品種系統名 試験年次 H6 H7 H8 平均
TH9128 16.7 17.0 16.0 16.6
ダイヘイゲン 14.7 15.1 14.5 14.8
ワセホマレ 14.2 14.3 13.7 14.1
注1)十勝農試における収穫時の調査である。

4.配布しうる種子量
 平成9年度  15t
 平成10年度以降   25t

5.普及対象地域および普及見込地域
 十勝、道央北部、網走地域ならびに道北の気候条件の良好な地域
 1000ha