成績概要書(作成 平成10年1月)

課題の分類

研究課題名:     水稲直播用極早生品種の採種栽培における育苗法

           (水稲直播用高品質種子生産のための育苗管理技術の確立)

予算区分: 道費            担当科:中央農試稲作部栽培第一科

                        植物遺伝資源センター研究部資源利用科

研究期間: 平成7〜9年            協力・分担関係:

1.目的  水稲極早生種の慣行採種栽培では収量および種子品質の低下が懸念される。そこで収量性、苗立ち率、移植精度から育苗日数の検討を行い、水稲直播用極早生品種の採種栽培における育苗法を確立する。

2.方法  供試品種 直播用極早生品種 「きたいぶき」

1)収量性からみた育苗日数と播種粒数の検討

育苗法 成苗ポット(20〜40日育苗×3、5粒/ポット)  比較 稚苗マット、中苗マット

移植日 5月22日(1995年)、5月23日(1996年) 25株/㎡ 手植え 1区6㎡ 2反復

2)苗立ち率からみた育苗日数の検討

供試種子 手刈り、はさ掛け乾燥、比重1.10の塩水選を行った前年各試験区の採種種子

播種日 稲作部 5月17日(96年)、19日(97年) 資源センター 5月7日(96年)、16日(97年)

播種方法 催芽籾(カルパー無被覆)を100粒/区で湛水播種 2〜4反復

3)移植精度からみた育苗日数の検討

育苗法 成苗ポット(20〜35日育苗)  比較 稚苗マット、中苗マット

移植日 5月24日(1996年)、5月23日(1997年) 22〜24株/㎡ 

     機械植え(成苗ポット みのるRX−6、マット苗 ヤンマーARP−6) 1区20〜90㎡ 1反復

欠株率調査 植え付け本数を移植後3〜5日後に50〜100株/区調査

3.結果の概要

収量性(種籾収量=籾重×登熟歩合(塩水比重1.10))は、成苗ポット40日育苗で低く、20〜35日育苗では収量性に差はなかった(図1)。また、播種粒数間の差もなかった。

各試験で生産された種籾の苗立ち率は成苗ポット25(23)日育苗で高かった(図2)。

成苗ポット25(23)日育苗で高い苗立ち率が得られた要因は穂揃性が比較的良いために、過熟による種子活性の低下が小さいためと推察される(図3)。

欠株率は成苗ポット20日育苗で高まる事例がみられたが、25日以上では低かった。

成苗ポット25日育苗の苗形質は中苗マット苗と同等か中苗マット苗と成苗ポット30日育苗との中間的な値を示し、出穂期は中苗マット苗より2〜3日早かった。

成苗ポット育苗での苗形質は、草丈10cm、葉数3葉、地上部乾物重2g/100本程度が目安になると考えられる(図4)。

成苗ポット育苗で、育苗期間の気象条件が良好な年次では、25日以上育苗すると穂揃い性が悪化する可能性があるので、目安とする苗質に達した段階で直ちに移植を開始すべきと考えられる。

以上から、水稲原種栽培管理基準(平成6年4月8日付 農流第64号)中、「極早生種の育苗日数は、播種量を増し20〜25日程度に止める。」を「極早生種の成苗ポット育苗での育苗日数は、25日程度とする。このときの苗形質は草丈10cm、葉数3葉、地上部乾物重2g/100本程度を目安とする。」に改訂する。

 

 

 

 図4 成苗ポットにおける播種後日数にともなう草丈、葉数、地上部乾物重の推移

4.成果の活用面と留意点

1)極早生品種の採種栽培は改訂後の水稲原種栽培管理基準(平成10年1月改訂)に基づき実施する。

2)育苗期間の気象条件が良好な場合にはハードニングを早めに行うとともに、草丈10cm、葉数3葉、地上部乾物重2g/100本程度に達した時点で速やかに移植し、過度に育苗日数を延長しない。

5.残された問題とその対応  なし