成績概要書(作成 平成10年1月)
課題の分類 研究課題名:りんご台木の品種特性 (リンゴわい性台木の適応性検定試験) 予算区分:道費 担当科:中央農試 果樹部 果樹第一科 担当者: 研究期間:昭和61〜平成9年度 協力・分担関係: |
1.目 的
近年、国の内外で育成されたりんご台木の特性を明らかにし、今後の本道のりんご台木選定にあたっての資料を提供する。
2.方 法
1)供試台木等
試験1(海外育成台木) | 試験2(国内育成台木) | |
穂品種 | つがる | ふじ |
供試台木数 | 4 | 10 |
対照台木 | M26 | M26 |
栽植距離(m) | 4.5×2.5 | 4.5×2.0 |
10a当たり栽植樹数 | 88 | 111 |
栽植時台木長 | 30cm(地上15cm、地下15cm) | 同左 |
接木年次 | 昭和63年春切接ぎ | 平成元年春切接ぎ |
栽植年次 | 平成元年春 | 平成2年春 |
試験区の規模 | 1区4〜5樹 1区制 | 1区2〜5樹 1区制 |
2)栽培管理 標準法に準じた。
3) 整枝法 わい化度の強い台木は細型紡錘形仕立て、わい化度の弱い台木は紡錘形を目標とした。
4)調査項目 樹体生育、着花性、収量、果実品質、根張りの良否、接木親和性、繁殖性。
5)調査方法 「寒冷地果樹特性検定試験調査方法」に準じた。
3.結果の概要
供試した14台木のうち、現在一般農家が入手可能で且つ総合評価が3以上の台木についてM26と比較し、記載した。
また、総合評価は現在わい性台木に求められている特性を考慮に入れて、M26よりもわい化度が大きく、挿木繁殖性を有することを重点に評価した。
「JM1」わい化度が強く、早期着花性で、花芽率も高い。一樹当たり収量や生産性はM26よ り高い。果実形質は一果重、果実品質ともM26よりやや優る。樹体の安定度や「ふじ」との 接木親和性はM26並に良い。挿木繁殖が可能。
「JM2」わい化度、着花性はM26並。一樹当たり収量や生産性はM26並。果実形質は一果重 がやや小さいものの、果実品質はM26並。樹体の安定度や「ふじ」との接木親和性はM26 並に良い。ひこばえの発生はやや多い。挿木繁殖が可能。
「JM5」わい化度が強く、花芽率も高い。一樹当たり収量は低いが生産性はM26と同等。果実形質は一果重がやや低く、果実品質は硬度、糖度、酸度ともM26よりやや高い。極わい性で台負けし、根張りもやや劣る。挿木繁殖が可能。
「JM7」わい化度がやや強く、着花性はM26並。一樹当たり収量はM26並で生産性はM26よりやや優る。果実形質はM26並。樹体の安定度や「ふじ」との接木親和性はM26並に良い。挿木繁殖が可能。
「JM8」わい化度、着花性はM26並。一樹当たり収量及び生産性はM26より優る。果実形質 はM26並。樹体の安定度や「ふじ」との接木親和性はM26並に良いが、ひこばえが発生する。挿木繁殖が可能。
主要成果の具体的数字
表 総合評価
項目 | 樹体生育 | 収量 | 果実形質 | 樹体の諸形質 | 取 木 繁 殖 の 難 易 |
総 合 評 価 |
|||||||||||||
わ い 化 度 |
着 花 性 |
樹 体 生 育 総 合 |
樹 当 た り 収 量 |
生 産 性 |
収 量 総 合 |
果 重 |
硬 度 |
糖 度 |
酸 度 |
果 実 形 質 総 合 |
樹 体 の 安 定 度 |
接 木 部 の 接 合 状 態 |
接 木 部 の 肥 厚 |
台 木 の 勝 ち 負 け |
バ ー ノ ツ ト |
ひ こ ば え |
|||
評点 | 5:大1:小 | 5:良1不良 | 5:優1劣 | 5:多1:少 | 5:多1:少 | 5:優1:劣 | 5:大1:小 | 5:高1:低 | 5:局1:低 | 5:局1:低 | 5:優1:劣 | 5:良1:不良 | 5:良1:不良 | 5:大1:小 | 5:優1:劣 | 5:少1:多 | 5:少1:多 | 5:易1:難 | 5:優1:劣 |
JM1 | 5 | 4 | 5 | 4 | 5 | 5 | 5 | 4 | 4 | 4 | 4 | 3 | 3 | 3 | 2 | 5 | 2 | 5 | 5 |
JM2 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 1 | 4 | 3 | 4 | 2 | 3 | 5 | 5 | 3 | 5 | 1 | 5 | 3 |
JM5 | 5 | 4 | 5 | 1 | 4 | 3 | 1 | 5 | 4 | 5 | 2 | 1 | 4 | 3 | 1 | 5 | 2 | 5 | 3 |
JM7 | 4 | 3 | 4 | 3 | 5 | 4 | 3 | 3 | 4 | 4 | 3 | 3 | 4 | 4 | 4 | 5 | 3 | 5 | 4 |
JM8 | 3 | 3 | 3 | 5 | 5 | 5 | 5 | 3 | 4 | 3 | 4 | 4 | 4 | 5 | 4 | 5 | 1 | 5 | 5 |
M26 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 |
4.成果の活用面と留意点
1)りんご台木品種選定上の資料となる。
2)樹齢8〜9年生までの成績である。
3)他の穂品種を接いだ時の台木特性については未検討である。
5.残された問題とその対応
1)他の穂品種を接いだ時の台木特性の検討。
2)樹齢10年生以降の台木特性の検討。
3)JM系の効率的挿木繁殖法の検討。