1997116

成績概要書      (作成平成10年1月)

課題の分類:
研究課題名:ごぼうの省力安定生産技術
        (ごぼうの省力安定生産技術の確立)
予算区分:道単
研究期間:平5〜9年度
担当:十勝農試 研究部園芸科・農業機械科
協力・分担関係:なし

1.目的

 移出野菜として有望なごぼうを高品質に安定生産するため、その生育特性及び栄養特性を明らかにし、施肥・機械作業体系・作型開発も含めた総合的な栽培技術を確立する。

2.方法

1)施肥に関する試験

(1)基肥の全層施用の有無と生育の関係:高度化成肥料(S555,S121)及びリン酸資材(重焼リン)で検討
(2)緩効性肥料による全量基肥栽培の検討:供試資材5(スーパーIB,LPコート40号・70号、ロング70・100)
(3)肥料の混和深度と生育の関係17年(50,60,70,80,90,100㎝)、8年(10,40,70,100㎝)、9年(20,50,100㎝)
(4)リン酸施肥量と収量・晶質の関係:施肥量O〜400kg/10a、収量・有効根長・尻こけ指数・乾物率の検討
(5)現地におけるリン酸用量試験:施肥量0〜200㎏/10a、火山性土圃場3ヶ所・沖積土1ヶ所

2)施肥・播種床造成・播種作業の改善

(1)播種床造成法の違いによる土壌物理環境・肥料混和状態の検討
(2)トレンチャの施肥同時作業における施肥位置の改善
(3)施肥・播種床造成・播種同時作業による省力化の検討

3)春まき作型の確立:品種、被覆資材、栽植密度、施肥法について検討した。

4)豆まき(越冬栽培)作型の検討:播種期の違いによる、越冬率・抽台率を調査した。

5)栽植密度の検討:晩春まきにおいて、株間6〜10c皿、畦幅55〜90㎝の試験処理を行い、根重・収量・規格割合に及ぼす影響を検討。

3.結果の概要・要約

1)基肥の窒素およびリン酸の全面全層施用を省略し、トレンチャ構内のみに肥料を混和する省力的な施肥法が可能であった。

2)緩効性肥料を用いた全量基肥栽培により、慣行の分施体系と比較しても同等以上の収量を得ることが可能であった。

3)リン酸肥沃度の低い十勝農試圃場では、施肥リン酸による増収効果が顕著であり、高収量を得るためには、80kg/1Oa程度のリン酸が必要であったが、これ以上の施肥量では増収効果は頭打ちとなった(図1)。

4)リン酸を増肥することにより、根の生育が促進され収量は高まるが、根長や尻こけ指数にはほとんど影響はなかった(図2)。

5)十勝農試圃場の他に、火山性土3ヶ所・沖積土1ヶ所の現地圃場を加えた合計5ヶ所でのリン酸用量試験の結果から、ごぼうに対するリン酸の施肥基準を策定した(表1)。

6)現在の慣行法であるトレンチャ港内の肥料混和深度100㎝に対して、表層20㎝までに肥料を浅く混和することにより、火山性土であっても、60〜80㎏/10a必要であったリン酸施肥量を20kg/10aまで減肥することが可能であった(図3)。

7)施肥装置付きトレンチャにおける肥料供給位置と播種床内の深度別肥料分布の関係は、供給位置を標準位置である「前方」とした場合は均一かやや下層に偏り、ホイール軸やや後方の「中央」とした場合はやや表層に偏る傾向があった。供給位置を「中央」にした場合の収量は、「前方」と比較すると同等かあるいは1割程度の増収であった。

8)施肥・播種床造成・播種の同時作業が可能なホイールトレンチャの作業効率は5.9a/hであり、慣行の作業体系と比較すると、2〜3割程度の作業時間短縮が可能となる(表2)。

9)春まき作型における栽培指針を作成した(表3)。

10)豆まき作型(越冬栽培)は、越冬後の腐敗・抽台により生産が不安定であり、8月収穫を目標とするのであれば、現在のところ春まき栽培の方が有利であった。

11)晩春まき作型における栽培指針を作成した(表4)。

12)ごぼうの平均根重と規格割合の関係を示す図によると、晩春まきにおいて、収益性の高い「M」を中心とした規格構成にするためには、目標根重を200〜220gとするのが適当であった(図4)。

4.成果の活用面と留意点

1)春まき作型の栽培指針は道東北地域、晩春まき作型の栽培指針は全道を対象とする。
2)リン酸の施肥指針は100㎝混和を削提としており、20㎝混和では大幅な減肥が可能となる。

5.残された問題点とその対応

施肥混和深度が20㎝までで、1工程作業が可能なトレンチャ(肥料混和装置付トレンチャ)の開発