1997117

成績概要書     (作成平成10年1月)

課題の分類:北海道作物園芸
研究課題名:ながいも催芽条件の検討およびヒートパネル利用による簡易催芽装置の開発
         (ヒートパネル利用によるながいも催芽技術の確立)
予算区分:共同
担当科:十勝農試 研究部園芸科
研究期間:平7-9年度
協力・分担関係:十勝農業協同組合連合会
          北海道電力株式会社
          株式会社テクセル

1.目的

 ながいものキュアリングおよび催芽処理における諸条件を検討するとともに、ヒートパネルを利用した簡易的な催芽装置を開発し、省力安定的な催芽技術を確立する。

2.方法

1)キュアリングおよび催芽条件の検討

(1)キュアリング程度と終了時期の検討
 ①湿度条件および被覆の有無による減耗率の推移:湿度3水準(50,70,90%)×方法2(被覆なし、新聞紙被覆)
 ②減耗率が萌芽に及ぼす影響:終了時の種いもの減耗率5水準(O,5,15,25,35%)

催芽処理:温度20℃、ピートモス充てん法で共通。キュアリングに要する日数および萌芽状況を調査(26,40目)

(2)キュアリングの温度条件の検討キュアリング温度平8=3水準(15,20,25℃)、平9-3水準(20,25,30℃)
  終了の目安:減耗率が10%になった時点 催芽処理:設定20℃で共通。萌芽状況を調査

(3)催芽温度が萌芽の早さ及びそろいに及ぼす影響:催芽温度7水準(16,18,20,22,24,26,28℃)×種いも部位1(胴)

(4)種いもの部位による萌芽特性:種いも部位3(首、胴、尻)×催芽温度4水準(16,20,24,28℃)

(5)催芽温度が圃場での萌芽率に及ぼす影響:催芽温度平8;3水準(15,20,25℃)、平9:2水準(20,25℃)

(6)順化処理に関する試験:順化処理3(低温、低湿度、光)×3日、順化なし 催芽温度:捌Cで共通。

  供試種いもの切片重:(1)一①のみ50g/個、他は120〜150g/個

2)ヒートパネルを利用した催芽装置の開発
 (1)平成7年度:ヒートパネル性能試験(熱容量400W/枚)設置場所3(D型ハウス、地下室、                      倉庫内の簡易貯蔵庫)
 (2)平成8年度:ヒートパネル性能試験熱容量3(800W/枚、600W/枚、400W/枚)、5段積みまたは3段積み。
 (3)平成9年度:①制御用センサ設置位置の変更:中段中央部から下段中央部へ
          ②被覆シートの種類の検討:催芽処理時のシート2(ビニールシート、アルミ蒸着シート)

3.結果の概要

1)キュアリングおよび催芽条件の検討

(1)キュアリングの終了は切り口が乾く程度で十分であり、そのときの種いもの減耗率は1O〜15%程度であった(表1)。また減耗率10〜15%の時の種いもの萌芽は良好であった。

(2)キュアリングは通気性シートで被覆して行うのが望ましく、湿度は極端な乾燥や多湿条件でなければ問題はなかった。

(3)キュアリングは、温度が高いほど早く乾燥が進んだが、低温による乾燥の遅延や高温による過乾燥を考慮すると、15〜2℃の範囲で8〜12日程度を目安にするのが適当であった(表2)。

(4)催芽温度は、萌芽ぞろいが良好であることと植付適期が1週間以上確保できることから、20〜22℃が適当であった(図1)。

(5)種いも部位により萌芽の早さに違いがあり、催芽温度20,24,28℃の中では、温度に関係なく「首」>「尻」>「胴」の順であった。部位による萌芽の早さの違いは24,28℃で顕著となった(図2)。

(6)一定温度条件で催芽処理した場合、催芽温度が高いほど圃場での萌芽率が低下した(表3)。

(7)一定温度条件で催芽処理した場合でも、植え付け前に温度や湿度を下げるなどの)順化処理を施すことにより、圃場での不萌芽を軽減できた(表4)。

2)ヒートパネルを利用した催芽装置の開発

(1)ヒートパネルの熱容量が400W/枚、600W/枚、800W/枚で比較すると、600W/枚・800W/枚のヒートパネルでは装置内の平均温度がほぼ設定通りに経過したため、実用規模では700W/枚のものを使用することとした(表5)。

(2)600W/枚および800W/枚のヒートパネルを使用し、制御センサの位置を中段中央部にした場合、ヒートパネルが一時的に高温になりすぎ最下段の種いもの乾燥が問題となった。制御用温度センサの位置を最下段の中央部にすると、ヒートパネルの過熱が防止され、上下段の温度較差も改善された(図3)。

(3)アルミ蒸着シートはビニールシートと比べて保温性が高く、もっとも温度較差が大きかった下段端部と中央部の温度較差を改善した(表6)。

(4)催芽装置での種いもの萌芽は最下段でやや遅くなる傾向にあったが、実用的に問題はなかった(表7)。

表1 種いもの減耗率による切り口の乾きおよぴ萌芽への影響
減耗率 切り口の乾き 枯死した種いも1)%
0% 湿 0
5% ヤヤ湿 0
15% 0
25% 11
35% 5
注1)催芽処理40日目の調査で、しなびたり芽の生長がとまっていた種いも

表2 温度条件による減耗率10%になるまでの日数
温度 日数
15℃ 12日
2℃ 8〜10日
25℃ 6〜8日
30℃ 4日前後
注)減耗率10%は、キュアリング終了の目安

表3 催芽温度による圃場における萌芽率のちがい
年次 催芽温度(℃) 萌芽率1)(%)
平8 15.O 98
19.2 94
23.0 77
平9 20.0 86
25.O 79
 注1)平8=7/22,平9=7/13調査

表4 順化処理の効果
試験区1) 萌芽率1)(%)
順化なし 79
低温 95
低湿度 100
100
 注1)低温=15℃に下げる,低湿度=無加湿,光=4.000ルクス照射
 注2)7/13調査

表5 催芽装置内の温度比較(℃)
試験区 800   600   600-31) 400  
設定温度(A) 17℃で共通
実際に経過した温度(B) 17.2 16.6 16.9 14.5
設定温度との差(B)−(A) 0.2 -0.4 -0.1 -2.5
 注1)3段積み

表6 アルミ蒸着シート使用による装置内温度較差の改善効果(℃)
設定温度 20 25
室内平均 8.2 7.6
被覆シートの種類 アルミ蒸着 ビニール アルミ蒸着 ビニール
装置内平均 17.4 16.9 21.7 19.1
下段中央部(A) 20.1 21.1 24.9 28.4
下段端部(B) 14.8 I3.7 18.4 15.6
(A)−(B) 5.3 7.4 6.5 12.8

表7 コンテナ位置による萌芽程度の比較(%)
コンテナ位置 大豆粒大 過大 青カビ・腐敗
4 10 13 69 4
1 18 13 66 2
0 48 19 28 5
注)アルミ蒸着シート使用、催芽処理30日目

4.成果の活用面と留意点

 1)低温庫など、温度制御可能な場所でのキュアリング及び催芽処理に応用できる。
 2)ヒートパネル利用の催芽装置は、D型ハウス、車庫、倉庫など直射日光の当たらない場所で使用する。

5.残された問題と対応

 1)一定温度条件で催芽処理した種いもの圃場での不萌芽対策