成績概要書            (作成 平成10年1月)
課題の分類:総合農業 生産環境 土壌肥料 3-1-4
研究課題名:軽石流堆積物客土畑における有機物の施用効果
        (土地改良事業計画地区土壌調査)
予算区分:道単
試験期間:平成4〜8年
担当科:北見農業試験場 土壌肥料科 
     網走支庁 農業振興部計画課
協力・分担関係:なし  

1.目的

 物理性改善を目的とした軽石流堆積物の客土が作物収量に及ぼす効果を実証するとともに、客土に伴う化学性の低下に対応した堆肥など有機物施用効果について検討する。

2.方法

(1)供試土壌(試験地):<枠試験>多腐植質黒ボク土
               <現地試験>褐色森林土(置戸町)、褐色低地土(留辺蘂町)

(2)処理区:試験Ⅰ-客土量(0,5,10,15cm)-客土量は現地試験のみ
       試験Ⅱ-客土10cm区に有機物施用(堆肥、バ−ク堆肥、緑肥)

3.結果の概要

<枠試験>

 枠条件では根張りが良好と思われるが、それにも拘わらず作物は客土による養分希釈の影響を受け減収した。それに対し有機物施用は減収を緩和した。

<現地試験>

 ①施工断面:置戸試験地では客土が混合された土層の下に未混合の客土材が分布するのが特徴であり、その部位で土壌硬度が低下した(図1)。両試験地とも堆肥施用区では施工3年目でも堆肥由来と思われる黒変した有機物片が土層内で確認され、そこで盛んな根の伸張が観察された。

 ②土壌理化学性:置戸試験地では客土によって容積重、固相率が低下し、気相率、有効水量が増加した。留辺蘂試験地では有効水量の増加が認められた。また、客土により有機物、養肥分の濃度が低下した(表1)。有機物処理の影響は分析では明確でなかったが、局部的には理化学性を改善する方向で働くと考えられる。

 ③土壌微生物性:置戸試験地では客土による微生物活性の低下程度が小さかったが、留辺蘂試験地では作土の希釈に対応して微生物活性が低下した。また、両試験地とも堆肥8t区では微生物活性が回復し、堆肥由来の有機物片からは高い微生物活性が検出された。

 ④客土効果:容積重120g、固層率45%程度の褐色森林土(置戸試験地)では、施工の翌年でも客土のマイナス効果がみられず、2、3年目には 5及び 10cm区で増収効果が得られた(表2)。これに対し容積重80g程度、固相率35%以下の褐色低地土(留辺蘂試験地)では、客土により減収をまねく恐れがあり、客土量は有効水量10%を達成する最小にとどめるべきである。

 ⑤有機物施用効果:客土(10cm)を施工した圃場には4t/10a程度の堆肥施用が有効である。8t/10aの施用ではさらに明確な増収が得られ、その効果は施用3年目まで持続した。また、客土畑への堆肥施用は地力低下に対する緊急対策であるので、4t/10a程度までは堆肥施用に伴う窒素減肥を行わない。それを越えた量については、てん菜の糖分、ばれいしょのでん粉価を低下させる恐れがあるので北海道施肥標準(平成7年)に基づく減肥を考慮する。バ−ク堆肥の化学性の面での効果は小さく、緑肥の効果は初年目を中心に短期的であった。

表1.客土と有機物施用が土壌理化学性に及ぼす影響(平成7年)
試験
区分
処理 置戸試験地 留辺蘂試験地
容積重
(g/100ml)
固相率
(%)
有効水
分(%)*
熱水
抽出N
交換性MgO
(mg/100g)
容積重
(g/100ml)
固相率
(%)
有効水
分(%)*
熱水
抽出N
交換性MgO
(mg/100g)
試験Ⅰ ①無客土 122.8 44.8 5.2 5.6 39.8 85.6 36.2 6.4 13.2 37.5
②客土5cm 110.3 44.2 6.4 5.2 34.7 103.5 41.7 11.9 7.2 34.5
③客土10cm 104.0 40.4 7.5 4.7 28.3 107.3 43.2 15.3 4.6 22.0
④客土15cm 102.8 40.0 12.0 3.8 20.2 95.1 38.2 24.6 3.6 37.5
試験Ⅱ ⑤堆肥4t 112.8 46.5 10.3 4.3 32.4 108.5 42.8 14.4 4.8 29.1
⑥堆肥8t 115.6 43.7 6.6 5.4 48.6 104.8 42.4 13.2 5.4 39.2
⑧バーク4t 104.6 38.8 8.5 5.3 46.7 103.3 41.5 11.2 5.2 31.2
⑨緑肥3t 106.2 41.7 10.2 4.5 33.5 113.5 45.9 13.5 3.7 35.9
 *:pF1.8〜3.0

表2.収穫調査の結果
試験
区分
処理 置戸試験地 留辺蘂試験地
平6
てんさい
平7
ばれいしょ
平8
秋まき小麦
平6
小豆
平7
てんさい
平8
高級菜豆
菜根重
(t/10a)
糖分 
(%)
上いも
(t/10a)
でん粉
価(%)
子実
(kg/10a)
子実
(kg/10a)
菜根重
(kg/10a)
糖分 
(%)
子実
(kg/10a)
試験Ⅰ ①無客土 -5.54 15.7 -4.5 13.9 -305 -469 -5.38 18.3 -349
②客土5cm 100 16.1 117 13.6 111 83 103 18.1 89
③客土10cm 100 16.1 112 14.1 110 58 89 18.1 91
④客土15cm 92 15.6 103 15.3 94 64 68 18.2 78
試験Ⅱ ⑤堆肥4t 98 14.8 93 13.6 111 103 91 18.9 95
⑥堆肥8t 112 13.7 95 12.4 126 100 18.3 109
⑧バーク4t 84 16.3 113 13.9 105 40 98 18.4 89
⑨緑肥 110 16.0 116 14.4 103 83 88 18.1 109
 注)無客土区の数値は実収量

4.成果の活用面と留意点

 ①本成績で用いた客土材は屈斜路、または大雪由来の軽石流堆積物である。
 ②客土施工時に堆肥4t以上を施用した場合には、タネバエ発生の恐れがあるので施工翌年の豆類の作付  けを避ける。

5.残された問題点と今後の対応

 ①微生物活性を利用した基盤整備の評価法
 ②客土の効果的な混合様式