1997181

成績概要書   (作成 平成10年1月)

課題の分類:
研究課題名:大区画水田における適正区画規模と指導指針
        (大区画水田における機械化営農体系の指針策定)
予算区分:道費
研究期間:平成7年〜9年
担当科:中央農業試験場農業土木部 農村環境科
            農業機械部 機械科
            経営部 経営科
            稲作部 栽培第一科
協力・分担関係:  

1、目的

 大区画水田の適正区画規模並びに営農体系上の指導指針を得るため、大区画水田における区画形状・圃場作業量・生育収量および経営評価を行う。

2、方法

 現地大区画水田圃場(深川市、妹背牛町、長沼町、栗山町、北村、中富良野町)における各種調査。大区画水田のシミュレーションモデルとして植民区画を圃区数4・3・2に等分割し、それをさらに畦畔により分割した耕区数18・9・6区画の合計8タイプを設定し、適正区画規模を検討した。

3、結果の概要

1)大区画水田の整備手法(表1)

 ①大区画モデルの畦畔の延長は、標準区画(4分割18耕区0.36ha)に比べ、大幅な減少となった。同様に草刈り面積はターン式農道の大区画2分割モデルで10〜15%の減少であったのに対し3・4分割モデルでは大幅な減少となった。

 ②長辺長が概ね200mを越える区画の水口の位置は、湛水に要する時間を考慮し、耕区の両側に設置するなど1辺に集中しないような設置場所に対する配慮が必要(50aに1カ所の割合で設置)である。

 ③大区画水田の造成費は整地費の他に暗渠、農道、用排水路の更新を含めた区画整理型で712〜896千円/10aまた用排水残置型では同様条件で435〜459千円/10aを要する。

2)機械化作業体系に対応した適正区画(表1)

 ①農家慣行田と大区画田を比較し、現有機械の使用を前提に耕起作業から収穫作業までの圃場作業量や圃場作業効率を調査した結果、両者とも大区画田で高いことが明らかになった。

 ②シミュレーションを行った結果、圃場作業量は面積の増加に伴い増加する傾向を示したが、1haで鈍化し、1.5haを越えるとその増加はわずかであった。

 ③したがって適正区画は、面積では1〜1.5ha、長辺長では170m程度が望ましい。また、短辺長では実作業幅の4倍以上で偶数工程になることが好ましいとの結論に至った。 

3)大区画化が水稲の生育、収量に及ぼす影響(図1)

 ①実態調査からは、一部を除き水田の大区画化に伴う収量の低下は認められなかった。

 ②生育収量では、突き均し工法による切り土、盛り土の影響と水口の影響でむらが認められた。

 ③前者に対しては既往の対応技術の導入により、後者については水口の適正配置と取水時刻の適正化を図ることにより、大区画化に伴う生育収量のむらは回避できるものと判断された。

4)大区画水田利用の経営的効果

 ①大区画水田利用に伴う省力効果を検討したところ、10a当たり稲作投下労働時間は慣行区画水田に比べて0.97〜1.51時間減少し、15ha規模の水稲作付け面積では年間150〜230時間の省力化が期待できることが明らかになった(図2)。

 ②大区画水田の移植作業能率の向上に着目し、水稲作付け可能面積の拡大効果を検討したところ、慣行区画水田に比べて1.6〜2.0haの拡大が可能であることが明らかになった。

 ③大区画水田の整備に当たっては、受益農家の年増加所得額が必ずしも高くないことから、高補助率等生産者に対する支援策が必要となる。



  図2 水稲作付け面積規模別にみた水田区画の拡大による省力効果

4、成果の活用面と留意点

 ①本成績は、現行の稲作個別経営・栽培体系を前提とした圃場作業量のシミュレーションに基づく大区画水  田の適正区画規模と指導指針である。
 ②農家個々の経営形態(保有機械・経営規模等)は多様なため、圃場整備にあたっては本成績を参考に無  理のない範囲で実施すること。
 ③水田整備の事業効果は水田区画の拡大以外も含まれるが、今回の検討からは除外している。
 ④強風地帯においては、区画規模や配置方向に配慮し、さらに防風対策を十分考慮する。

5、残された問題とその対応

 ①分散した農地の集積・集団化を伴う大区画化についての検討。
 ②大区画水田を有効に活用する将来の機械化体系や、営農技術(水稲の栽培様式:直はん栽培等)につい  ての検討。