成績概要書                      (作成 平成10年1月)

課題の分類:北海道総合農業農業物理
研究課題名:GPSによる車両位置計測
予算区分:道費
研究期間:平成7年〜9年
担当:中央農試 農業機械部 機械科
協力・分担関係: なし

1.目 的

 圃場作業の省力化、無人化にはトラクタおよび作業機の自律走行が有効な手段と考えられる。このためには圃場内でトラクタや作業機の位置計測が不可欠であり、視覚センサやGPSセンサによる位置計測システムの検討を行う。

2.方 法

 (1)試験場所 中央農試、十勝農試、根釧農試、新得畜試、北大
 (2)試験期日 平成7〜9年
 (3)試験内容

 圃場内のトラクタや作業機の位置計測を行うため、各種センサによる位置計測精度や位置情報などの通信システムの検討を行った。試験内容は以下に示した。

  1)視覚センサによる位置計測試験
  2)GPSによる位置計測試験
  3)RTK−DGPSによる位置計測試験
  4)通信システムに関する試験

3.結果の概要

(1)CCDカメラモジュールによる車両位置検出では、距離60mまでの平均誤差は6.3cmであり、車両を自律走行させるには十分な精度であったが、これ以上の距離での誤差は大きくなった。100m以上の圃場区画やさらに高い検出精度が要求される場合には、GPSやミリ波など他の手法が必要である。

(2)1周波受信のGPSでは、静止時単独測位の最大と最小の差は緯度で約7秒、経度で約3.5秒である。DGPSでの測位誤差は緯度で平均0.08536秒(2.64m)、経度では平均0.07107秒(1.56m)と単独測位より大幅に測位精度が向上する。

(3)2周波受信のリアルタイムキネマティックDGPS(以下RTK-DGPS)では、静止時、緯度、経度および高度の測位誤差は全て5cm以下と測位精度は良好で、安定した測位である。また、測位誤差は経度、緯度、高度の順に大きくなる。

(4)ばれいしょ畑での防除作業、草地圃場でのモーアコンディショナによる牧草刈り取り作業を行い、トラクタキャビン上に搭載したGPSによりトラクタ走行軌跡の計測が可能であった。計測結果から、圃場の高低マップ、作業経路などの情報が得られた。

(5)省電力無線モデムによる通信は、平地では受信感度の低下はほとんどなかったが、建物の陰、樹木の枝、圃場の凹凸などにより受信感度が低下し、測位精度の低下を招いた。このため、無線モデムの種類や出力、アンテナ、アンプなどの検討が必要であった。

4.成果の活用面と留意点

(1)1周波GPSは安価であるが測位精度が低いため、利用目的に合わせた使用法の検討が必要である。

(2)RTK-DGPSによる測位精度は2〜4cmであり、圃場内の車両位置計測に利用可能である。また、車両の走行データより圃場の高低、形状などの圃場情報が入手できる。

(3)省電力無線モデムは障害物などにより受信感度が低下するため、機器やアンテナの選定、アンテナの設置方法などに注意が必要である。

5.残された問題とその対応

(1)圃場内の位置情報とともに、収量、土壌や作物情報などを入手するセンサの開発が必要である。

(2)位置情報により制御可能なトラクタの開発、また作業機制御技術の開発が必要である。さらに、無人走行を行うためには車両および作業機の制御システムの開発が必要である。

(3)通信モデムの改善とともに、固定局情報の入手方法の検討が必要である。