研究課題名:ジャガイモ半身萎ちょう病の発生状況と土壌中の微小菌核密度に基づく当面の作付け指針
        (平成6年度研究開発調査事業「ジャガイモ半身萎ちょう病の発生実態調査」)
        (ジャガイモ半身萎ちょう病の発生実態解明と緊急防除対策試験)
予算区分:道費
担当科:中央農試 病虫部 土壌微生物科
研究期間:平成6−9年
協力・分担関係:根釧農試 研究部 馬鈴しょ科
          南羊蹄地区農業改良普及センタ−
          石狩南部地区農業改良普及センタ−

1.目的

 ジャガイモ半身萎ちょう病の発生状況と発生生態を明らかにするとともに本病原菌の他作物への影響も見据えた上で、即応的対策を見出すことを目的とした。

2.方 法

 病徴と診断手順,発生状況,発生生態,発生状況と土壌中の微小菌核密度に基づく当面の作付け指針,薬剤による防除対策

3.結果の概要

【病徴と診断手順】

(1)本病ははじめ、下位の葉先や葉脈間が萎れて褪緑し、葉縁が巻き上がる。後に褪緑した葉は黄化し、褐変して枯れ上がる。発病初期の葉の黄化や萎ちょうは、複葉や茎および株の片側の葉だけに見られ、この点が本病の特徴である。診断は、上記症状が生じた茎の地際部を切断して、維管束褐変の有無を調査する。この際、他の病害虫の症状や被害でないことを確認する。

【発生状況】

(1)本病はすでに道内の広範囲におよんでいたが、その発生はほとんど認識されていなかった。

(2)本病の多発生ほ場は22ほ場あり、13市町村で確認された。少〜中発生ほ場は125ほ場あり、53市町村で確認された。

(3)5年以上の輪作ほ場で発生量が少なく、ほ場の汚染程度が低レベルに保たれると考えられた。

(4)本病発生ほ場や隣接畑で他の作物にバ−ティシリウムによる病害が発生していた。ばれいしょ栽培中に本病の発生の有無や発生程度を正確に把握することは輪作に導入する他の作物でのバ−ティシリウムによる病害の被害を回避するためにも、非常に重要であると考えられた。

【発生生態】

(1)病原菌はV. dahliae,V. albo-atrum,V. nigrescensで、主体はV. dahliaeであった。

(2)V. dahliaeは1ほ場を除きナス系であり、V. albo-atrumはジャガイモ系であった。

(3)ばれいしょに対する病原力はV. albo-atrum>V. dahliae>V. nigrescensの順であった。

(4)本病のばれいしょへの被害は年次や菌種により異なり、6〜31%の減収となった。

【発生状況と土壌中の微小菌核密度に基づく当面の作付け指針】

(1)V. dahliaeの土壌中の微小菌核密度が10個以上/乾土1g(高密度)で多発するものと推定された。

(2)V. dahliaeの微小菌核高密度ほ場は23ほ場あり、14市町村で確認された。微小菌核低密度ほ場は55ほ場あり、32市町村で確認された。

(2)V. dahliaeとV. albo-atrumの寄主範囲は非常に広くV. nigrescensは狭かった。V. dahliaeとV. albo-atrumの作物ごとの感受性程度を整理した(表−1)。

(3)発生状況と土壌中の微小菌核密度の調査結果から、本病発生ほ場を以下のように区分した。

  i )多発生ほ場か微小菌核高密度ほ場(該当ほ場が確認された市町村を表−2に示した。)

  ii)少〜中発生ほ場か微小菌核低密度ほ場

(4)本病の発生状況と土壌中の微小菌核密度に基づく当面の作付け指針を作成した(表−3)。

【薬剤による防除対策】

(1)クロルピクリンくん蒸剤(錠剤)(未登録)やダゾメット粉粒剤(未登録)による土壌消毒は高い防除効果が認められた。

4.成果の活用面と留意点

 1)本病に関与する病原菌および発生程度に応じた作付け指針を実施する。

 2)ばれいしょ栽培中に本病の発生の有無や発生程度の把握につとめる。

 3)バ−ティシリウムによる病害に対し防除対策がある作物は、対策を講じれば本病発生ほ場に作付けできる。

 4)未登録ではあるが、本病に有効な土壌消毒剤が認められた。

5.残された問題とその対応

 多発要因や伝染環の解明,耕種的防除対策の確立,抵抗性品種の探索,実用性のある薬剤防除対策の確立,以上を組み合わせた総合防除体系の確立