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成績概要書 (作成平成10年1月)
研究課題名:だいこんを加害するマルガタゴミムシの発生生態、被害多発要因と防除対策 (ゴミムシ類によるだいこんの被害多発要因とその防除対策) 予算区分:道費 研究期間:平成6−9年度 担当:道南農試 研究部 病虫科 渡島中部地区、函館地区農業改良普及センタ− 協力・分担関係 |
1 目 的
渡島中部地方を中心に多発するだいこんのゴミムシ被害について、加害種の特定及び発生生態、被害多発要因を解明し、有効な防除対策を確立する。
2 方 法
被害実態調査、落とし穴式トラップによる成虫の捕獲調査、圃場における防除効果試験
3 結果の概要
(1)被害実態
① 渡島中部地方におけるトンネル栽培だいこんの6月収穫調査では被害個体率が60%前後と高かったのに対して、道央部や道東部における共選場での7月調査では同11−26%と比較的低く、被害はトンネル栽培だいこんで大きかった。
(2)ゴミムシ類の発生生態
① 大野町(道南農試圃場)では落とし穴式トラップで合計50種のゴミムシ類が捕獲、同定された。
② 成虫生存日数:マルガタゴミムシ越冬成虫の平均生存日数は6月15日を起点として雌雄とも約40日、最長個体は約3か月間生存した。
③ 成虫捕獲消長:落とし穴式トラップによるマルガタゴミムシ成虫の捕獲はじめは4月上旬で、5月中旬から捕獲数が増加し、7月中旬以後減少する(図1)。新成虫は6月後半から捕獲され、大部分は雑草地で捕獲されており、畑地では少なかった。
④ 活動時刻:時刻別捕獲数から、ゴミムシ類4種は日没後の暗黒となった時間帯に活動が高まった。
⑤ 行動距離:マ−ク虫の放飼試験結果から、ゴミムシ類の行動距離は一晩に約7.5mであった。
(3)被害多発要因
① 被害多発圃場でのゴミムシ類相:被害多発圃場における優占種はマルガタゴミムシ、トックリナガゴミムシ、キンナガゴミムシ、ゴミムシの4種で、マルガタゴミムシが占める割合が高かった。
② 加害種の特定:だいこんブロック片に対する接種試験ではキンナガ、マルガタ、トックリナガゴミムシの食害度が大きかった。しかし、だいこん幼根への接種試験ではマルガタゴミムシは外部から活発に食害したが、キンナガゴミムシは外部から食害せず、加害種はマルガタゴミムシであると特定された。
③ 被害発生年の気象経過:被害多発年の気象経過は高温多照少雨、被害少発年は低温多雨寡照であった。
④ 作型の影響:作型別の被害調査から、加害時期は5月中旬から6月にかけてであった(図2)。
⑤ 品種:現在一般的に栽培されている品種については、ゴミムシ被害に品種間差はないと判断された。
⑦ 緑肥栽培の影響:えん麦野生種「ヘイオ−ツ」ではゴミムシ類が好む日陰部分が小さく、後作だいこんでも被害は高まらなかった。マリ−ゴ−ルド圃場では6月中旬以後にマルガタゴミムシ捕獲数が増加し、新成虫の捕獲数も多かった。
⑧ 堆肥・有機物の影響:前年に牛糞バ−ク堆肥または各種混合有機物を多施用した圃場でも被害が高まる傾向はみられなかった。
⑨ 殺虫剤に対する感受性:BT、IGRは全く影響がなく、合成ピレスロイド系はノックダウン効果が大きいが死虫率は高くない。有機リン系は全体に死虫率が高く、影響が大きい(図3)。だいこんで被害が多発している一要因として、使用される殺虫剤の変遷が影響している可能性が推測される。
(4)防除対策
① 土壌施用殺虫剤の効果:室内試験では供試8剤のうち、ガス化する性質をもつテフルトリン及びダイアジノンで殺虫効果がみられた。圃場試験ではテフルトリン粒剤の被害軽減効果が作型に関係なく安定して高かった。エチルチオメトン・ダイアジノン粒剤では作型によって被害軽減効果にふれがみられた。(図4)
② 毒餌殺虫剤(ベイト剤):ゴミムシ類成虫は供試4剤とも活発に食害した。NAC粒剤を用いた圃場試験では作型によって被害軽減効果にふれがみられたが、播種20日後からの10日間隔3回散布で比較的安定した結果が得られた。DEP粒剤は収穫しただいこんの根部に色素の付着が認められた。
③ テフルトリン粒剤とNAC粒剤散布を組み合わせても、NAC粒剤による防除効果の増加は認められなかった。
④ マルチ栽培作型において、茎葉散布殺虫剤の1回散布では、散布時期にかかわらず被害軽減効果は認められなかった。
⑤ 露地栽培では被害程度は非常に低く、防除の必要はない。
図1 マルガタゴミムシ成虫の捕獲消長
図2 異なるだいこん栽培作型での被害程度
図3 PAP及びエトフェンプロックスに対するマルガタゴミムシ雌成虫の感受性
図4 各種防除法による被害軽減効果(4月25日播種作型)
図中記号 処理内容
Ⅰ NACベイト1回播種20日後
Ⅱ NACベイト1回 〃 30日後
Ⅲ NACベイト1回 〃 40日後
Ⅳ NACベイト2回〃20,35日後
Ⅴ NACベイト3回〃20,30,40日後
Ⅵ テフルトリン粒剤播種時土壌混和
Ⅶ エチルチオメトン・ダイアジノン粒剤 〃
Ⅷ テフルトリン播種時土混+ベイト30日後
Ⅸ DEPベイトト30日後
Ⅹ イソキサチオンベイト30日後
ⅩⅠ 無処理
4 成果の活用面と留意点
1.本成果は、だいこんに多発するゴミムシ被害の防除対策に活用する。
2.テフルトリン粒剤及びNAC粒剤についてはマルガタゴミムシに対して未登録である。
5 残された問題点
1.ゴミムシ類幼虫に対する各種調査の実施