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成績概要書     (平成10年1月)

研究課題名:たまねぎのりん片腐敗病に対する防除対策
       (タマネギりん片腐敗病防除対策試験)
予算区分:道費
研究期間:平成5〜9年
担当科:上川農試研究部病虫科
協力分担関係:

1.目的

 タマネギりん片腐敗病の発生実態・分布及び発生生態等の解明を行い、防除対策として有効な手段を検索し防除法を確立する。

2.方法

 1)発生実態調査
 2)病徴
 3)伝染源と発生推移及び蔓延
 4)発病条件
 5)有効薬剤の探索と防除時期 

3.結果の概要

 1)発生実態調査
  (1)平成5〜8年の調査で、たまねぎの主要産地のほとんどで発病が認められ、全道に広く分布していた。    また、発生量の年次間差の大きい病害であることから、気象条件等に発生が大きく左右されることが示    唆された。

 2)病徴
  (1)葉(葉鞘ぎわの場合が多い)に黄褐色の水浸状の病斑を形成しやがて枯死する。組織はやや軟化する    ものの完全に崩壊せず、軟腐病のような腐敗臭はない。
  (2)りん片1〜数枚が黄褐色〜茶褐色に首の部分から茎盤方向へ腐敗する。

 3)伝染源と発生推移及び蔓延
  (1)りん片腐敗病の伝染源として土壌が重要であると考えられた。
  (2)人工的な汚染種子及び苗床に由来する発病は認められなかった。
  (3)りん茎の症状は、りん茎の肥大が顕著になる7月下旬から8月上旬頃の倒伏期前後に葉部から急激に    進行し、その結果、りん茎の発病個体率が増加した。
  (4)本病の発生状況は、発生量がピークとなる枯凋始以降にりん茎の切断調査(100球以上)を行うことによ    り、ある程度把握することができる。
  (5)罹病葉による、たまねぎ個体間の接触が本病蔓延の原因の一つと考えられた。

 4)発病条件
  (1)りん片腐敗病が多発する要因として、感染期間の多雨が重要であると考えられた。
  (2)たまねぎの本病に対する感受性は、葉数が最大となり葉部が繁茂し始める時期(6月下旬頃)から高ま    り、倒伏直前から倒伏始(7月下旬〜8月始頃)が最も高い。倒期から倒伏揃期(8月上旬〜中旬頃)に    なると徐々に低下し始め、枯凋始(8月下旬)以降は低くなり、感染しにくくなることが示唆された。
  (3)本病に対して抵抗性を持つと思われる品種は認められなかった。しかし、発病の程度に品種間差が認    められ、葉部が開張する品種で多い傾向があった。   (4)窒素との関係は判然としなかった。
  (5)適期に根切り処理を行うことは、発病を回避する効果があると考えられた。

 5)有効薬剤の探索と防除時期の検討
  (1)オキソリニック酸水和剤(1000倍)、銅(塩基性塩化銅)・プロシミドン水和剤(500倍)、銅(水酸化第二銅)水和    剤DF(1000倍)の3薬剤が安定して防除効果が高かった。
  (2)薬剤防除時期は、葉数が最大となり葉部が繁茂し始める時期(6月下旬頃)から、りん茎が急激に肥大    する倒伏直前〜倒伏始(7月下旬〜8月始頃)の立毛中の散布を中心に、倒伏期〜倒伏揃(8月上〜     中旬頃)までと考えられた。

(タマネギりん片腐敗病の防除対策)
  本病の防除対策は、たまねぎの施肥基準及び栽培基準を遵守する事が基本である。
 その上で、次の対策により被害を軽減することができる。

 ①本病の防除時期は、葉数が最大となり葉部が繁茂し始める時期(6月下旬頃)から倒 伏揃(8月中旬頃)  までである。

  したがって、タマネギ軟腐病の防除時期とほぼ一致するので、共通して効果のある薬剤(オキソリニック酸水和剤(1000倍)、銅(塩基性塩化銅)・プロシミドン水和剤(500倍)、銅(水酸化第二銅)水和 剤DF(1000倍))の使用により同時防除(7〜10日間隔)が可能である。

 ②薬剤散布開始が遅れると発病を十分に抑制できず被害が大きくなるので予防的な散布 につとめる。特   に倒伏直前から倒伏始はたまねぎの感受性が高いので注意する。

 ③葉部が倒れてからの防除(倒伏期〜倒伏揃(8月上〜中旬頃))は、たまねぎに十分 に薬剤を付着させ   るのが難しいが、たまねぎの感受性がまだ高い時期なので防除による 効果はある。

 ④葉部の枯凋始(8月下旬頃)以降の防除は不要である。

 表1 有効薬剤の検討
  薬  剤  名 希 釈 倍 率平成8年平成9年
発病個体率防除価 薬害発病個体率防除価薬害
銅・プロシミドン水和剤
銅(水酸化第二銅)水和剤DF
オキソリニック酸水和剤
無処理  
   500
  1000
  1000
 
  4.1
  5.9
  1.3
 23.0  
 82
 74
 94  


−  
  0.5
  0.8
  0.3
  5.5  
 91
 85
 95  
− 
− 
− 
  

4.成果の活用面と留意点

 1)本成績はタマネギりん片腐敗病の防除対策として活用できる。
 2)オキソリニック酸水和剤(1000倍)、銅(塩基性塩化銅)・プロシミドン水和剤(500倍)、銅(水酸化第二銅)水和剤DF  (1000倍)はいずれもタマネギりん片腐敗病に対して未登録である。

5.残された問題と対応

 1)その他の細菌性病害の特定
 2)肌腐れ症の原因究明