1997228
成績概要書 (作成 平成10年1月)
研究課題名:卵寄生蜂の増殖技術の確立とヨトウガの密度低減効果 (卵寄生蜂活用によるヨトウガの密度制御技術確立試験) 予算区分:道 費 研究期間:平成6〜9年 担当科:北見農試 研究部 病虫科 十勝農試研究部病虫科 協力・分担関係:北海道病害虫防除所予察課 |
1.目的
昆虫の卵に寄生するタマゴバチの増殖技術を確立する。
タマゴバチのてん菜ほ場への放飼によるヨトウガの密度制御技術を確立する。
2.方法
1)てん菜ほ場におけるタマゴバチの発生状況調査
無防除てん菜ほ、てん菜の一般栽培ほ場におけるタマゴバチの発生状況調査
2)卵寄生蜂の大量増殖技術の確立
ヨトウガの大量増殖、タマゴバチの増殖
3)タマゴバチの放飼によるてん菜のヨトウガの密度抑制技術の確立
放飼間隔の検討、タマゴバチの大量放飼による防除効果の検討
3.結果の概要・要約
1)道内13ヶ所のてん菜ほ場20筆において、ヨトウガ卵塊へのタマゴバチの寄生状況を調査した。一般ほ場 全体での寄生卵塊率は約30%だった。ヨトウガ卵→1、2令幼虫→6令幼虫→ 蛹 → 成虫140頭 →卵70000卵←タマゴバチ 277卵 236頭 184頭 165頭 雄70、雌70頭 ↓ 寄生卵10000卵 (85.4%) (78%) (90%) (85%) (1000卵/♀) ↓ (倍率7.1倍) | ||||
卵14000粒 タマゴバチ雌成虫 10000頭 |
×5回 | |||
表1 卵トラップの放飼地点からの距離とタマゴバチによる寄生率(%)
距 離 |
卵トラップ 設置数 |
第1世代(6/22放飼) | 第2世代(8/21放飼) | ||
6/22-24 | 24-26* | 8/21-23 | 23-25* | ||
2m 5m 10m 15m |
8 8 8 8 |
100 38 0 0 |
50 25 0 0 |
75 25 25 13 |
25 0 13 0 |
表2 ヨトウガによるてん菜の被害の推移とタマゴバチによる寄生状況(長沼町)
産卵密度a | 被害程度指数b(上段)・被害株率(下段) | 寄生状況c 6/30,7/8 | |||
7.14 | 7.23 | 7.28 | |||
放飼区 (6/13,27放飼) |
7.7 |
13.4(44.5)d 46.3 |
22.7(57.8) 67.7 |
27.5(56.6) 73.3 |
1: 82.6% 2: 13.0 3: 4.3 |
無放飼区 | 8.7 |
30.1
82.7 |
39.3 90.0 |
48.6 94.0 |
1: 72.2% 2: 27.8 3: 0 |
(参考) 無防除無放飼 ほ場e |
10.7 |
35.0 92.5 |
57.4 99.5 |
66.5 100 |
1: 36.0% 2: − 3: − |
4.成果の活用面と留意点
1)本課題で示されたヨトウガ卵によるタマゴバチの増殖体系を活用することにより、放飼のためのタマゴバ チの計画的な大量増殖やタマゴバチ系統の維持が可能である。
2)2週間あたりタマゴバチ雌成虫を33万8千頭/1ha相当数放飼することによって、てん菜のヨトウガに対する 寄生率を高め、ヨトウガによる被害を軽減することが可能である。
3)本成績で示された事項に留意して、ほ場におけるタマゴバチの放飼による防除効果を判定できる。
4)バイオトップ社製造のタマゴバチは、農薬未登録である。
5.残された問題とその対応
1)良質なタマゴバチ系統探索のための検定手法の確立
2)北海道において、てん菜を始めとする各種作物の害虫に対して適したタマゴバチ
系統の探索
3)より効果的なタマゴバチの放飼方法、放飼回数の検討
4)大量放飼に向けたタマゴバチの大量増殖体制の整備
5)導入天敵放飼の土着天敵などに対する影響の評価