1997231
成績概要書 (作成 平成10年1月)
課題の分類: 研究課題名:てん菜のヨトウガに対するモニタリング手法の開発 −第2世代を中心として− 植物防疫事業 (環境保全型防除要否判断基準の確立) 予算区分:植物防疫事業費 研究期間:平4〜9年度 担当科: 北海道病害虫防除所 予察課 協力・分担関係:北見農試 研究部 病虫科 十勝農試 研究部 病虫科・てん菜特産作物科 |
1.目 的
てん菜の主要害虫であるヨトウガの第2世代に対して、生産者自らが簡単に防除時期を決定できる簡易なモニタリング手法を開発し、適切で効率的な防除を推進する。
2.方 法
(1)てん菜ほ場におけるヨトウガの発生状況(平5〜9年)
(2)被害株率を利用したモニタリング(平5〜9年)
(3)モニタリングによる防除(平6〜9年)
(4)モニタリング法の精度と利用(平5〜9年)
3.結果の概要
(1)第2世代の防除時期を決定する被害モニタリングは被害株率を指標とし、防除開始時期 はそれが50%に到達する時期である。この時期は、慣行の第2回目防除の前後(-3〜+9 日)に相当した。
(2)第2世代は各年とも中発生での試験であったが、モニタリングによって被害株率50%を 指標として防除を実施した区は、食害程度が被害許容水準とした25以下であり、防除効 果が認められた。
(3)幼虫放飼試験の食害程度は、放飼密度に比例して増加した。被害許容水準である食害程 度25を与える初期幼虫密度は、第1世代で、0.3〜0.7/株、第2世代で、0.7/株が予想さ れた。また、第1世代で2令幼虫放飼13日後頃、第2世代では、放飼20日後頃までに被害 株率が50%に達しなければ、防除を行う必要はないものと考えられた。
(4)被害株率が50%に達した時点において、第1世代で採用した、連続10株を単位とした50 株の調査データが95%の確率で含まれる範囲は、ほ場全面の被害株率からの誤差に換算 すると、年次、世代によって50%±18.6〜24.2%と広い値になった。
(5)調査期間は、8℃を発育下限温度として、4月1日からの有効積算温量が第1世代で300〜550日度、第2世代で1050〜1300日度を目安に短縮できると考えられた。
(6)調査労力と精度とのバランスを勘案すると、調査方法は連続10株を調査単位とする50株 調査法が適当であると思われる。
第1図 第2世代の被害推移と防除開始時期の指標となる被害株率50%(1996)
第1表 モニタリングの手順と防除法
手順 | 第1世代 | 第2世代 |
調査期間 規模 方法 防除時期 方法 |
被害発生初期から5日間隔 ↓ ↓ (道央地帯で6月下旬から) (道央地帯で8月下旬から) ↓ ↓ 連続10株,5カ所の合計50株を系統抽出 ↓ ↓ 調査株の被害痕の有無 調査株の被害痕の有無 古い食害痕が残る下葉は見ない ↓ ↓ 被害株率が50%に到達した時期 ↓ ↓ 防除 防除開始 | |
追加防除 | 必要ない |
第1回目防除の2週間後以降も被害 が進展するときは追加防除を検討 |
調査期間の短縮法 |
発育下限温度を8℃として 4月1日から300日度〜550日度 |
1050日度〜1300日度 |
4.成果の活用面と留意点
(1)生産現場において、ヨトウガ第2世代の防除開始時期を決定するための簡易なモニタリング法として、被 害株率が利用できる。
(2)調査期間の短縮法として、有効積算温量が活用できる。
(3)ヨトウガ以外の食葉性害虫による被害が問題となる地域では、利用にあたって注意が必要である。
5.残された問題とその対応
(1)第2世代が多発生したときの追加防除の実施タイミングの検討。
(2)ヨトウガの各世代の食害量に対応した被害許容水準の策定。
(3)フェロモントラップを利用した、より簡易で高精度な手法の検討。
(4)現地ほ場における利用効果の実証