成績概要書(作成 平成10年1月)
課題の分類 研究課題名 テンサイそう根病抵抗性遺伝子の探索 (新育種法によるテンサイそう根病抵抗性素材の開発試験) 予算区分 共同研究 担 当 中央農試 生物工学部 遺伝子工学科 細胞育種科 北海道てん菜協会 研究期間 平成7〜9年 協力・分担関係 |
1.目 的
形質転換系を用いてテンサイそう根病ウイルス遺伝子がコードする遺伝子の中から抵抗性として機能する可能性のある遺伝子を探索し、さらに、その遺伝子を導入した形質転換体についてウイルス抵抗性の検定と評価を行い、抵抗性遺伝子を特定する。
2.試験方法
1) 植物発現ベクターの構築
クローニング:テンサイそう根病ウイルスRNAのcDNAクローンからPCR法により増幅し、pUC119に挿入した。植物発現ベクター:pBI121
2) 形質転換体の作出
遺伝子導入:アグロバクテリウムLBA4404を用いてリーフディスク法により、Nicotiana benthamiana に遺伝子を導入した。導入遺伝子の解析:PCR法
3) 形質転換体の検定と評価
ウイルスの接種:形質転換体の自殖次世代(R1世代)のカナマイシン耐性個体に、ウイルス分離株No.96 (N型系統:RNA-1+2+3+4)を汁液接種した。ウイルスの検定:上位葉のエライザ検定
3.結果の概要
1) テンサイそう根病ウイルスRNAがコードする非構造蛋白質遺伝子から8種類の遺伝子(M21, M22, M23, M24, M25, M26, M27およびM28)をクローニングし、植物発現ベクターを構築した。
2) ウイルス遺伝子をアグロバクテリウムを用いて Nicotiana benthamiana に導入した結果、それぞれ3〜5個体のカナマイシン耐性再分化個体が得られた。
3) これらの再分化個体の葉からDNAを抽出してPCR法により遺伝子の導入を検定した。その結果、いずれの個体からも期待される大きさのPCR産物が検出され、目的とする遺伝子が導入されていることが確かめられた。
4) これらの個体の自殖次世代(R1世代)種子を採り、R1世代のカナマイシン耐性個体に汁液によりウイルスを接種したところ、pM27、pM28を導入した植物体では、ウイルスの増殖・移行が遅れる傾向が認められた。
4.成果の活用面と留意点
1) ウイルス遺伝子を導入したNicotiana benthamiana にウイルスの増殖・移行が遅れる系統が見つかったので、この遺伝子をてんさいに導入することにより、そう根病抵抗性のてんさいを作出できる可能性がある。
5.残された問題点
1) ウイルス遺伝子導入による植物のウイルス抵抗性獲得のメカニズム
2) 抵抗性に働く他の遺伝子の探索
3) てんさいへの遺伝子導入法の確立