1997233

成績概要書    (作成平成10年1月)

課題の分類:
研究課題名:北海道におけるコナガの殺虫剤感受性の現状と有効薬剤の探索
予算区分:道費
研究期間:平成7〜9年度
担当:道南農試 研究部 病虫科
協力・分担関係:北海道病害虫防除所
          十勝・北見・上川農業試験場病虫科 
          檜山南部、北後志地区、南羊蹄地区、伊達地区、日高中部地区農業改良普及センタ−  

1 目 的

 北海道におけるコナガの殺虫剤感受性の現状を把握し、北海道への飛来機構について解析した。

2 方 法

 室内検定試験:リ−フディスク法による散布法での感受性検定 2−3齢幼虫供試。
 圃場効果試験:道南農試圃場での各種薬剤の効果査定
 飛来実態の解析:発生予察事業における各種トラップでの日別誘殺消長、及びJPP-NETにおける850hPa面での下層ジェット気流図の解析

3 結果の概要

1)北海道におけるコナガの殺虫剤感受性の現状

(1)1995年における試験結果
 ① 室内検定ではBT剤7種類のほか、異なる系統の5種類の殺虫剤について感受性検定を行った(表1)。圃場試験ではBT剤7種類のほか、異なる系統の3種類の殺虫剤について防除効果を検討した。
 ② 室内検定では、BT剤7種類ともにLC50値が1.3〜5.2ppmの範囲にあり、感受性は高かった。圃場試験では、生菌剤に比較して死菌剤の方が防除効果は高かった。
 ③ 室内検定ではエマメクチン安息香酸塩の感受性は高く、アセタミプリドも実用濃度で感受性は高かった。
 ④ チオシクラムは、室内検定でLC50値が約32ppmと高かったが、圃場試験での防除効果は劣った。
 ⑤ クロルフルアズロンは圃場試験では防除効果がやや認められたが、室内検定ではLC50値が650 ppmで、感受性の低下が認められた。
 ⑥ フェンバレレート・マラソンは、実用濃度での感受性は低く、圃場試験でも防除効果は低かった。

(2)1997年における試験結果
 ① 試験はBT死滅菌(トアロ−)剤、クロルフルアズロン、フェンバレレート・マラソン、クロルフェナピルを中心として行った。
 ② 地理的分布:BT死滅菌剤は各地とも感受性が非常に高かった。クロルフルアズロン及びフェンバレレート・マラソンに対する感受性は、道南、後志、胆振、上川などで大きく低下しており、十勝ではやや感受性が高い傾向がみられた(図1)。しかし、感受性の低下程度は全体に大きかった。
 ③ 時期による感受性の変化:BT死滅菌剤では変化がなかった。フェンバレレート・マラソンでは傾向が判然としなかった。クロルフルアズロン及びクロルフェナピルでは春季から秋季に向かうにつれて感受性が高まる傾向が認められた。
 ④薬液の散布量による感受性の変化:BT死滅菌剤では変化がなかった。クロルフルアズロンではわずかに高まる程度であったが、フェンバレレート・マラソン及びクロルフェナピルでは散布量の増加によってLC値は高まる傾向がみられた。各薬剤の殺虫効果の発現機作の違いが原因と考えられた。
 ⑤ IGR系3種類の感受性:クロルフルアズロン及びテフルベンズロンでは感受性が大きく低下していたが、フルフェノクスロンに対する感受性は高かった。

2)コナガの飛来実態の解析

① 合成性フェロモントラップでの日別誘殺消長から、北海道へのコナガの多飛来現象は5月から11月までみられ、5月中旬から6月にかけての飛来頻度が高いと推測される。コナガの飛来現象は年に幾度となくみられるが、その頻度は年によって異なる。タマナヤガまたはアワヨトウなどの長距離移動性害虫が同時期に飛来する場合があると考えられる。

② 夏季においては、コナガの誘殺特異日は判断できない場合が多いが、セジロウンカの飛来日にコナガの誘殺数が増加する期間がみられる。

③ コナガの日誘殺数が特異的に増加した期間について850hPa面の下層ジェット気流図を解析すると、中国大陸華南地方から朝鮮半島及び九州を含むわが国日本海側を北海道に向かって北上する強風域が認められた(図2)。

表1 1995年における殺虫剤12種に対するコナガの感受性(散布72時間後)

4 成果の活用面と留意点

 1.殺虫剤感受性検定結果はアブラナ科野菜のコナガの防除対策に活用する。
 2.コナガの飛来実態の解析結果は殺虫剤抵抗性個体群出現を解析するための基礎資料とする。

5 残された問題点

 1.コナガの北海道への飛来機構の解明