1997805

成績概要書     (作成 平成10年1月)

課題の分類:
研究課題名:北海道水田地帯における広域野菜産地の形成手法と条件
研究期間:平7〜9年度
予算区分:道費
担当科:中央農試 経営部 流通経済科
協力・分担関係:なし  

1.目 的

 農協再編を考慮した広域野菜産地の形成をスムーズにはかるため、次の諸点を明らかにする。
  1)北海道水田地帯における広域野菜産地の展開
  2)野菜を共販する農協の広域連合と合併農協における広域野菜産地の特徴
  3)広域野菜産地形成の意義と形成手法・条件

2.方 法

  1)道央・道南の水田地帯を含む広域野菜産地の実態調査
  2)広域農協連合(以下、広域連合)と合併農協における産地比較分析

 

3.結果の概要

1)広域野菜産地を「複数の市町村をまたぐ区域において、農産物の販売意思を統一し、生産から販売までの主体的な意思決定力をもつ地縁的関係にある農業経営集団の組織」と定義する。これによる水田地帯の広域野菜産地をみると、
 ①設立の早い広域野菜産地は稲作限界地=田畑混同地帯に形成され、畑作経営による畑地での野菜生産をベースに水田経営の転作野菜が加わる形で展開
 ②最近設立された広域野菜産地は稲作中核地帯=水田地帯で形成された水田経営による転作野菜生産をベースとしている。

2)広域連合、合併農協のいずれにおいても広域野菜産地の形成によって物流の一元化が進み、短期的に輸送費、資材費の低減、ならびに多様な市場情報の入手による販売先選択肢の拡大がはかられる。また、中長期的にはJA職員の専門化をベースとした販売能力の向上、地域的栽培条件の違いに基づく継続出荷、施設投資の効率化によって、産地の対市場位置が高まり有利販売の可能性が広がる。この他、農業者には従前の農協区域が取り払われることで栽培品目の選択肢拡大、多くの優良農家から技術修得機会がもたらされる。

 これらのメリットを発揮するには、地域間で異なる栽培技術・品種・選別規格の統一と品質向上、生産部会組織の再編、農協と普及センターの提携関係の見直し、販売機能の集中化の徹底、販売戦略の明確化が条件になる。合併に際し地域重視の点から販売機能を支所に分散する事例があったが、産地形成上マイナスであった。産地広域化を進める上で普及センターの果たす役割は特に大きく、
 ①複数普及センターの再編
 ②普及員の品目別専門能力の向上
 ③技術指導に限界があるため生産者組織の主体的強化策が課題となる。

 一方、広域連合はデメリットとして、経済、人事面で構成農協の方針の影響を受けるため、JA職員の専門化、新規品目の開発、施設整備面で制約があり、また農協と広域連合の組織運営で二重コストが一部生じる。これら広域連合の問題点は、合併農協において克服する可能性をもつ。また広域合併においても補助事業をめぐる自治体間の調整は課題として残るが、これには広域対象の補助事業の拡大、施設の他用途制限の緩和といった与件改革とともに、関係自治体を含めた地域振興計画づくりと交流機会の増加が求められる。

3)広域野菜産地形成のメリットを得るには、その条件づくりに長期間を要するものが多く、主要な経済効果も同様である。そして、広域連合のメリットを発揮させるには農協合併を前提とするものが多い。さらに、広域連合と合併農協もその機能の多くは同じであることから、ただちに農協合併に至らない場合、事前に広域連合という形で進めておくことが有効であり、これは農協をベースとした民主的な産地形成面からも重要である。

4.成果の活用面と留意点

 農協の広域合併に先行した野菜産地形成として参考にすること。

 

5.残された問題とその対応

 野菜の広域産地形成と米の広域的な流通販売=産地形成との関係は解明していない。次年度の新規課題の中で検討課題の1つとする。