1997806

成績概要書        (作成 平成10年1月)

課題の分類:
研究課題名:野菜規格簡素化による産地発展効果と産地対応のあり方
        (野菜規格の簡素化と出荷・流通費用の低減効果)
予算区分:民間
研究期間:平成8〜9年度
担当科:中央農試 経営部 流通経済科
共同研究の相手先:(社)北海道地域農業研究所

1.目的

 野菜出荷規格の簡素化は、労働力不足に悩む産地ばかりでなく、人件費の節減を図りたい流通関係、一定規格品の大量集荷に苦労する量販店からも期待されているが、産地の市場評価に対する懸念等からなかなか進まない。規格に対する消流段階のニーズを明らかにし、産地の出荷調製体制への改善効果を示すことによって、規格簡素化への産地対応のあり方を提言する。

2.試験研究方法

 1)野菜規格設定の動向と消流段階における規格ニーズを調査分析する。
 2)産地の出荷規格実態を調べ、規格設定と産地発展の可能性を検証する。

3.結果の概要

1)流通事情と規格評価の変化:野菜規格の細分化は、セリ中心の市場取引における差別化戦略として産地と市場の間で進められてきたが、予約相対取引の拡大に伴い、市場評価の要件も変化しつつある。品質の安定性、出荷の計画性、中心規格の大ロット等、量販店の需要に応えやすい安定的な供給と、消費者に支持される味・鮮度の内部品質の重要性が高まる一方で、小売り場面では1個売りが減少し規格の揃いに対するニーズは緩和している(表1)。

2)規格流通実態:根菜やかぼちゃなど大小差の大きい品目では4L〜3S等の細かな階級区分が流通しているが、用途上は価格形成力のある生食小売り向け規格とその外の業務向けに回る端物に大きく分けられる。生食向けの取引では市場流通に量販店の意向が反映されやすいが、業務需要の多い品目では安価調達のニーズが強く、輸入物の拡大により全体の価格形成が停滞している。       

3)加工需要の比較的少ないほうれんそうでは、コミ規格でも高い市場評価を獲得している(表2)。本州への移出を主体とするA産地では、量販店の集荷ニーズを仲介した市場の要望を受けて出荷拡大するため、平成8年に高能率の新資材包装機を導入しコミ規格に一本化した。市場評価を下げることなく規格簡素化を実現しえた条件は、鮮度保持で差別化を図ったことと、出荷体制の再編に産地が集結できたことである。

4)規格簡素化の可能性:生食向け規格については量販店の集荷意向の強まりを背景に、品質差別化が規格要件を越える競争力として市場評価を得る可能性が示された。一方で、加工業務向け野菜を市場調達する加工業務需要の安価要求は、規格区分による相対評価を強め、ごぼうの出荷事例にみるように規格簡素化の支障となっている(表2)。品質による差別化の難しい業務向け範囲については、市場競争ではなく安定的な取引への移行が必要である。

(データ)              

4.成果の活用面と留意点

 市場や品目によって品質差別化に対する評価は異なるので、規格簡素化に当たっては取引先ニーズの事前調査が不可欠である。

5.残された問題とその対応

 市場における加工業務メーカーの行動を十分に把握することができなかった。今後は輸入を視野に入れた加工業務用野菜の原料調達の動向を把握する必要がある。