1997807

成績概要書   (作成 平成10年1月)

課題の分類:
研究課題名:十勝地域の野菜畑作複合経営における作付方式の実態
       (豆類等の高品質・省力収穫技術と高収益畑輪作体系の確立)
       (高品質・省力収穫技術と高収益畑輪作体系の成立条件)
予算区分:国補(地域基幹)
研究期間:平7〜9年度
担当科:十勝農試 研究部 経営科
担当者:浦谷 孝義 
協力・分担関係:なし 

1.目的

 野菜部門は今後の十勝農業にとって重要な位置づけを与えられており、その担い手である野菜畑作複合経営の持続的な展開をはかるために、適切な作物構成と規則性のある作物交代に基づく作付方式を確立することが必要である。そのため、ここでは野菜畑作複合経営における作付方式の実態を把握し、その問題点を整理する。

2.方法

 ①十勝管内4地区(帯広市川西:24戸、幕別:25戸、豊頃:15、芽室:25戸、計89戸)の野菜畑作複合経営に対する配票調査とその解析
 ②対象とした4地区は、十勝地域における主要野菜5品目(ながいも、ごぼう、だいこん、にんじん、キャベツ)の主要産地。調査対象農家は、一定の野菜生産経験と技術レベルを有する農家を、普及センターとの協議に基づいて選定

3.結果の概要

1)調査対象の経営概況

 規模や労働力では4地区間に大きな差はみられない。小麦、てん菜、馬鈴しょ、豆類が耕地面積の75%以上を占めており、土地利用の上では畑作物が基幹となっている。地区別の特徴は、豆類の作付では豊頃が大きく、野菜計では幕別が大きい。豊頃ではだいこんに集中するとともに品目数は少ないのに対して、幕別では多品目が作付されている。

2)輪作方式

 ①畑作経営に野菜が導入・拡大されることにより畑作物の作付は影響を受け、その影響は品目・作物間で相違がみられる。

 ②輪作方式の特徴は、ア)てん菜または馬鈴しょを基幹とする4年輪作が支配的であり、畑作物を基幹とする土地利用の中に野菜が取り込まれていること(表1)、イ)輪作方式に野菜を明確に組み込んでいる農家は少なく、かつ品目間で差がみられること(表2)、である。

 ③輪作の実施率は必ずしも高くなく、輪作を阻害する主な理由は土地条件不良と労働力不足である。野菜の輪作が不可能な圃場を持つ農家は90%以上あり、その理由は品目によって異なる。

④現状では野菜と畑作物の組み合わせのうち、前後作関係が未確定という農家が50%前後もある組み合わせが多く、また確定している場合も後作の畑作物はばらついている(表3)。

 ⑤農家は野菜の作付間隔の確保に留意しており、想定している作付間隔は品目によって若干異なるが2〜5年が多い。

3)肥培管理

 ①野菜後の畑作物への施肥を加減する農家は55%で、基肥を減らす農家が多い。

 ②麦稈は堆肥との交換(62%)や販売(28%)として利用され、豆がらは焼却処分が過半を占めている。

 ③堆肥を調達している農家は91%あり、酪農に由来する堆肥が65%、肉牛に由来する堆肥が30%である。堆肥は、主にてん菜(66%)とながいも(71%)に投入されている。

 ④畑作物が後作の野菜に与える影響としては、悪影響の方が多いと考える農家が多く、特に病虫害の発生を懸念している。悪影響を受けやすいと指摘されている品目はだいこんである。

 ⑤野菜と畑作物の前後作関係で発生するものとして病害虫が多く指摘されたが、これまでの知見と合致するものは少なかった。

4)労働力利用

 ①野菜と畑作物との間での労働競合は大部分は野菜の収穫作業と畑作物の収穫作業との間で発生し、春作業での競合は多くない。

 ②野菜の収穫作業は、家族労働力と雇用で行われる場合が多く、にんじんでは作業委託(受託者は出荷先)、だいこんでは共同作業が一部で行われている。

4.成果の活用面と留意点

1)成果の活用面
 ①野菜と畑作物の前後作に関する農家の認識に関する知見が得られるので、指導上の情報として活用でき  る。
 ②野菜畑作複合経営の作付方式に関する経営研究・技術研究を推進する際の情報として活用できる。

2)普及上の留意点
 対象経営の構成作物は十勝特有なものであり、他地域で活用する場合には留意が必要である。

5.残された問題点とその対応

 ①野菜の導入ないし拡大に伴う土地利用の変化を詳細な実態調査に基づいて検討し、野菜を組み込んだ作付方式を形成するメカニズムと条件を解明する。
 ②基幹作物であるてん菜及び馬鈴しょと野菜とが安定的に生産を継続しうる肥培管理の解明。