1997902

 成績概要書                (作成 平成10年1月)

課題の分類:新得畜試
研究課題名:TMR給与による泌乳一群管理の有効性
       (泌乳牛一群管理のためのTMR給与基準の確立)
予算区分:道費
研究期間:平5−8年度
担当科:新得畜試 家畜部酪農科
            生産技術部衛生科
協力・分担関係:なし

1.目的

 泌乳牛に給与するTMRは乳期に応じて泌乳期を2〜3群に分けて調整するのことが推奨されているが、飼養頭数の少ない酪農家おいては、飼料調整が煩雑になるとともに施設の制約を受けることから群分けが困難な場合が多く、TMRの利点を活かしながらもより簡易な一群飼養技術の開発が望まれている。そこで、一乳期を通して同一TMRを給与する一群管理の有効性および一群管理に適したTMRのエネルギー濃度について検討する。

2.方法

供試家畜:2−6産泌乳牛26頭
          1群高区:全泌乳期間TDN75%(粗濃比50:50)
処  理:3処理  1群中区:全泌乳期間TDN73% (粗濃比50:50)
          2群区 :泌乳前期TDN75%、後期TDN68%
試験期間:試験開始時から3乳期目の泌乳前期まで

3.結果の概要

  1. TDN含量の高い飼料を1乳期をとおして給与した1群TMR区は、他に比べて乳量が多い傾向がみられたがその差はわずかであった。1群中区では泌乳前期の乳量は少ないものの泌乳後期の1群高区と同様に高かったことから、2群と同様の乳量が期待できると考えられた。
  2. 濃厚飼料給与量は1群中区と2群区の濃厚飼料給与量はほぼ同じ量であったが、これに対し1群高区では濃厚飼料を約千㎏多く必要とし、濃厚飼料の利用効率は低かった。
  3. 一群区では乳量水準の低い個体ほど泌乳後期の体重増加量が多く、乾乳開始時のBCSが高い傾向がみられた。この傾向は1群高区で顕著であった。
  4. 代謝病の発生頭数は1群高区および1群中区とも2群区に比べて多い傾向がみられた。
  5. 2群区に比べて1群区では分娩から初回発情発見までの日数および空胎日数が長い傾向がみられた。

 

以上のことから、乳量、飼料効率、健康維持および繁殖性など総合的にみて、1群区に比べて乳期に応じてTMRを調整・給与する2群区が優れていた。一乳期同一のTMRを給与する一群飼養管理も可能であるが、牛群の能力に応じた栄養水準が重要であり、一乳期乳量9千キロ程度の牛群に対しては、飼料効果、BCSの適正維持から判断して、中TMR(粗濃比65:35、TDN73%)適当と判断された。

表1 泌乳前後期の乳量および泌乳持続性 
   1群高区 1群中区 2群区
泌乳前期FCM量 (㎏) 4984 4615 5277
泌乳後期FCM量 (kg) 4318 4305 3833
一 乳 期FCM量 (kg) 9302 8920 9110
後期泌乳持続性 (㎏/日) -0.07 -0.08 -0.10
濃厚飼料摂取量 (㎏) 3208 2164 2372
飼 料 効 果 * 2.9 4.1 3.92
*注)飼料効果:FCM量/濃厚飼料乾物摂取量

表2 乳量水準と泌乳期間増体量および乾乳時BCS
乳量水準(千㎏) 7 8 9 10 11 12
1群高区 増体量 128 90 50 48 65 62
BCS 3.8 3.8 3.8 3.6 3.3 3.5
1群中区 増体 159 86 84 22    
BCS 3.5 3.3 3.5 3.0    
2群区 増体量 64 57 66 21 44  
BCS 3.9 3.5 3.6 3.1 3.9  

表3 各処理における繁殖成績
試験産次 処理区 授精対象
頭数
分娩から初回発情
までの日数
空胎日数 授精回数 受胎遅延牛 不受胎
  
Ⅰ乳期目 1群高区 8 65±37 162±96 1.9 2 0
1群中区 9 54±34 93±16 1.4 0 0
2群区 9 57±33 130±70 2 1 1
Ⅱ乳期目 1群高区 7 93±48 199±117 1.6 3 0
1群中区 8 93±60 166±117 1.5 3 1
2群区 7 54±26 153±70 1.6 2 0
注) 受胎遅延牛:分版から受胎までのの日数が200日以上の個体

表4 血液性状から脂肪肝と診断された牛の頭数
  Ⅰ乳期目 Ⅱ乳期目 Ⅲ乳期目
1群高区 1/8 3/7 0/4 4/19
1群中区 0/9 1/8 3/6 4/23
2群区 1/9 0/8 0/6 1/23

4.成果の活用面と留意点

1) 本成績はは経産牛により得られたものである。したがって、経産牛の乳期乳量が9千㎏程度の牛群を対象とする。

2) TMR・一群管理方式の採用に当たっては、健康管理や繁殖性の低下を防ぐため牛群の能力の斉一化を図る必要がある。

3) 給餌場での牛個体間の競合を緩和するためTMR給与量や1頭当たりの飼槽スペースを確保する。

 

5.残された問題とその対応

1)乾乳時過肥牛のための乾乳期飼養法

2)TMR・一群管理方式への初産牛の適応性

3)一群管理に用いるTMRのタンパク質濃度の検討