1997906

成績概要書     (平成9年12月作成)

課題の分類:
研究課題名:搾乳牛の集約放牧計画の立案方法
予算区分:経常
研究期間:平成6〜9年度
担当研究室:北農試・草地部・放牧利用研
担当者:須藤賢司 落合一彦 池田哲也
協力分担関係:なし

1.目的

 個体乳量8,000〜9,000㎏の搾乳牛の集約放牧を対象とした、各地域で汎用的に使える集約放牧計画の立て方は具体的に示されていない。そこで、牧草の生育条件が異なる地域でも適用できる、標準的な集約放牧計画の立て方を示す。

2.方法

 北海道農業試験場内に、メドウフェスク(MF)主体草地(MF区)とペレニアルライグラス(PR)主体草地(PR区)各々1,6haずつを造成した。播種品種はMFがトモサカエ、PRがフレ ンド、混播マメ科単品種はシロクローバ(ソーニャ)とした。両草地はそれぞれ23牧区に区分し、5月上旬から11月上旬まで、搾乳牛各4頭を1日輪換放牧した。季節により放牧利用面積を変え、余剰草を採草処理した。放牧前と放牧後に現存草量と草高の測定を行った。供試牛は1日2回、搾乳前に1〜2時間牛舎に収容し、補助飼料を給与した。MF区もしくはPR区入牧時および牛舎収容時以外は8頭1群で、80aの放牧地に定置放牧した。

3.成果の概要(図1).

1.1日1頭あたりの放牧面積(割当草量)の設定

 割当草量(体重100㎏あたりの乾物現存草量)が5.5㎏のとき、短草利用・昼夜放牧では体重比約2%の放牧草の採食が期待できる(図2)。MFは草高25cm,PRは草高20cmで利用すると、乾物現存草量はそれぞれ176g/㎡、130g/㎡を見込める(図3)。650㎏の体重の乳牛では、体重の2%の採食量を確保するため、1日1頭あたり各々、203㎡、275㎡の牧区を準備する。

2.草地の季節別TDN生産速度の把握

 2〜3カ所の代表的な牧区について、ライシングプレートメータなどを用いて、放牧前後の現存草量を把握する。同時に入牧時に草をサンプリングして、TDN含量を測定し、時期別の草地のTDN生産速度を求める(図4)。

3.牛群のTDN必要量の把握と放牧による供給率

 飼養標準により、放牧牛群のTDN必要量を求める。平均乳量8,500㎏の搾乳牛なら必要TDN量の55%を放牧草から供給できる。

4.季節ごとの牧区数、輪換日数の決定

 平均乳量8,500㎏の40頭の搾乳牛群をMF草地に放牧する場合、1牧区81a(0,203×40)とし、生育した放牧草の利用率を85%とすると、必要放牧地面積は以下の式で求まる。輪換日数は必要面積を1牧区の面積で割る(表)。
    必要放牧地面積:(日TDN必要量x0.55)/(目TDN生産速度xO.85)

表 季節ごとの必要放牧地面積並びに輸換日数の求め方(MF草地)
季節 目必要TDN量
牧草TDN生産速度
kg/ha
必要放牧面積 必要牧区数
(=輪換日数)
6月上旬まで 1.731)×0.552)×40=324 55 324/55/O.853)≒7ha 7/0.81≒9
7月下旬まで 同上 35 324/35/0.85≒11ha 11/0.81≒14
8月以降 同上 20 324/20/0.85≒19ha 19/0.81≒24
1)体重650㎏、3産、日FCM乳量28㎏の40頭放牧搾乳牛群の必要π)N量
2)必要TDN量の55%を放牧草で供給
3)牧草生育量の85%を採食

4.成果の活用面と留意点

 ①地域を問わず、本方法の考え方は適用できる。
 ②その年の天候によって牧草のTDN生産速度が変動するので、牛と草をみて調整する。

5.残された問題点とその対応

 放牧草の利用率については、変動する可能性があるため、新規課題の中で検言立する。