1997909

成績概要書     (作成 平成10年1月)

課題の分類:
研究課題名:馬におけるチモシー乾草・サイレージの栄養価の牧草アミノ酸組成
        (軽種馬用乾草の調整条件と栄養価に関する研究)
予算区分:受託
研究期間:平成6〜8年度
担当科:新得畜試 生産技術部環境資源科
                       草地科
協力・分担関係:なし

1.目 的

 馬におけるチモシー乾草とサイレージの採食量、栄養価を比較するとともに、飼養標準を活用するために可消化エネルギー(DE)含量の推定方法を検討した。併せて、牧草類のアミノ酸含量をしらべた。

2.方 法

 北海道和種馬を用いてチモシー1番草、2番草の乾草およびサイレージの採食量・栄養価を調べた。牧草中の化学成分と可消化エネルギー(DE)含量との関係を調べ、DEの推定式の作成を試みた。

3.結果の概要

1.乾草およびサイレージを自由に採食させた際の乾物摂取量に差はみられなかった。1,2の例外を除きおおよそ体重の2.0%〜2.7%の範囲で摂取し、1番草と2番草の差はなかった。乾物消化率や可消化エネルギー含量にも差はみられなかった。

2.乾物消化率、可消化エネルギー含量は1番草、2番草とも収穫までの日数が長くなるにともない低下した。

3.馬の維持に要する可消化エネルギー量を満たすためにはチモシー早生品種では1番草は出穂期に、2番草では生育日数60日以内に収穫する必要がある。

4.牧草のOb含有率とDE含量との間には
   1番草 DE(Mcal/kg)=4.68−0.043×Ob(%) (r=-0.952)
   2番草 DE(Mcal/kg)=3.91−0.031×Ob(%) (r=-0.776)
の関係があった。2番草では相関係数がやや低いが、両式には等分散性、傾き、高さに有意な差がないことから1、2番草を込みにして
   DE(Mcal/kg)=4.34−0.038×Ob(%) (r=-0.898)
の回帰式が得られる。この回帰式はNRCが採用している推定式の決定係数、式の高さもほぼ一致する。この式でチモシーの馬におけるDE含量の推定が可能である。

5.各アミノ酸含有率は粗タンパク質含有率によって左右されるが、モル比ではほぼ一定の値となった。生草・乾草・サイレージの間にも差は見られなかった。

6.粗タンパク質含有率が馬の要求量(8%以上)を満たしていればリジンの要求量も満たす。

表1 乾物摂取量、乾物排泄量よび可消化エネルギー含量
  収穫日 区分 乾物摂取量 乾物排泄量 DE
Mcal/kg
DN
kg/100kg体重
1番草 6.12 サイレージ 2.55 0.99 2.68 57
6.16 サイレージ 2.43 1.17 2.25 50
7.20 サイレージ 2.71 1.54 1.96 43
7.20 乾草 2.55 1.43 1.81 42
7.26 サイレージ 2.62 1.70 1.65 34
7.26 乾草 2.59 1.63 1.55 36
2番草 40 サイレージ 1.43 0.72 2.44 51
40 乾草 2.10 1.03 2.09 49
50 サイレージ 2.21 1.06 2.39 51
60 サイレージ 1.27 0.76 1.84 41
60 乾草 2.01 1.11 1.83 41
63 サイレージ 2.76 1.44 2.19 46
63 乾草 2.75 1.43 2.04 46
収穫日:2番草は1番草収穫からの生育日数。
同一収穫日あるいは日数のサイレージと乾草は同一草地より収穫調製した

 


Ob含有率とDE含量の関係


Ob含有率と乾物消化率の関係

表2 チモシーのリジンとメチオニンの含有率およびモル比
  1番草調製法別 1番草収穫日別 番草別
生草 サイレージ 乾草      
  収穫日 6.13 6.14 6.2 6.2 7.1 7.3 6.22 8.1 10.12
リジン 含有率 0.37 0.37 0.31 0.31 0.14 0.12 0.43 0.37 0.5
モル比 4.66 4.35 3.71 3.71 3.65 3.13 4.6 4.81 4.83
メチオニン 含有率 0.12 0.12 0.12 0.12 0.06 0.07 0.14 0.11 0.16
モル比 1.44 1.35 1.47 1.47 1.57 1.64 1.46 1.4 1.56
アミノ酸合計   6.8 7.2 7 7 3.3 3.3 8 6.7 8.9
CP含有率   10.7 14 11.5 11.4 6.6 6.2 9.5 13.9 15.1
収穫日:2番草は1番草収穫からの生育日数。
     同一収穫日あるいは日数のサイレージと乾草は同一草地より収穫調整した。

4.成果の活用面と留意点

 1.本試験で得られたDE含量の推定式は北海道和種馬を用いた消化試験から得られたものであるが、軽種馬の飼料設計にも利用可能である

5.残された問題とその対応

  馬の飼料設計にあたっては放牧地からの栄養摂取量を把握する必要がある。

  放牧草の栄養価は現在進行している課題で検討中である。