1997910

成績概要書               (作成 平成10年1月)

課題の分類:
研究課題名:近赤外分析法による牧草サイレージの飼料成分推定
        (近赤外分析による粗飼料の品質評価法の確立)
予算区分:道費
研究期間:平8−9年度
担当科:新得畜試 生産技術部草地科
協力・分担関係:なし

1.目 的

 飼料分析サービスにおける近赤外分析法(NIRS)による成分推定精度の現状を把握、問題点を明かにする。また、より高精度の検量線を作成し、複数の分析センターに移設して用いることにより、分析精度の向上を図ると共に推定値の分析センター間差をなくすことを目的とする。また、分析値のセンター間差の主要因である、繊維分画における酵素分析方法の違いを統一する。

2.方 法

1)粗飼料分析サービスにおける近赤外分析精度の現状

  道内の主要な分析センター4カ所にNIRS精度検定用粉砕サンプル(牧草サイレージ)39点を配布し、成分推定精度の現状を調べた。

2)新しいNIRS用検量線の作成および移設

  道内各地より収集および新得畜試で調製した牧草サイレージサンプル149点を用い、CP ADF、NDFおよびOb含量についてNIRS用検量線の作成および移設を行った。

3)OCWおよびObにおける酵素分析方法の検討

  分析センター間で異なっていた細胞壁物質(OCW)および低消化性繊維(Ob)画分におけるαアミラーゼ処理方法または処理の有無について検討した。

 

3.結果の概要

1)道内4カ所の分析センターにおける現状の成分推定精度は各センターともCPで高く(精 度の判定はB判定以上)、OCWおよびObで低かった(判定B〜C)。OCWではバイアスのずれが大きかった(表1)。これは酵素分析方法が分析センターにより異なっていることが主要因であると考えられた。

2)NIRS用検量線(キャリブレーション)の作成は、ニレコ社NIRS6500型機種により11 00nmから2500nmの波長域を用いてPLS回帰分析法により行った。作成したキャリブレーションを未知試料39点で検定(プリディクション)した結果、rはADFで0.92とやや低かっ たが他の成分では0.96以上、推定の標準偏差SDPは0.76(CP)〜2.00(NDF)となり、精度の判定はCPでA判定、他の成分ではB判定となった。検量線を2カ所の分析センターに移設した結果、移設による推定精度の低下は認められず、複数の分析センターで同一検量線の使用が可能であることが確認できた(表2、図1)。

3)OCWおよびObの酵素分析値は、αアミラーゼの処理方法または処理の有無により異なったため、参画分析センター(ホクレン、十勝農協連、雪印種苗、オホーツク農業科学研究センター、浜中町農協)においてはαアミラーゼ処理を加える(分離処理)方法に統一する事にした。αアミラーゼ分離処理によるOCWからNDFへの回帰にイネ科とマメ科で明らかな違いはなかったため、イネ科・マメ科共通のOCWからNDFへの変換式    NDF=0.99×OCW-1.96  n=90 r=0.97 SE=2.63  を得た。

表1 分析センターにおけるNIRSによる現状の成分推定精度
   成  分 (DM%) 
分析センター C P O C W O b
SDP bias 判定1) SDP bias 判定1) SDP bias 判定1)
0.94 0.99 -1.78 B 0.88 3.09 3.7 C 0.8 4.28 -2.93 C
0.96 0.8 0.37 A 0.92 2.32 -0.27 B 0.9 3.1 0.09 B
0.94 0.94 -1.66 B 0.89 2.79 4.97 C 0.85 4 -0.31 C
0.94 0.94 0.13 B 0.83 3.29 -8.43 C 0.92 2.8 -3.85 B
注1)判定は水野らによるEI値(EI=2×SDP/レンジ×100)の精度判定基準によった。
 A:非常に高い、B:高い、C:やや高い、D:低い、E:非常に低い

表2 新たに作成したNIRS用検量線の精度(未知試料39点による)
  プリディクション 移設後のプリディクション
成分 新得 Aセンター Bセンター
r SDP Bias 判定 r SDP Bias r SDP Bias
CP 0.96 0.76 -0.16 A 0.96 0.76 0.65 0.96 0.75 -0.15
ADF 0.92 1.69 -0.79 B 0.96 1.37 -0.27 0.92 1.61 -0.72
NDF 0.97 2 -1.37 B 0.97 1.7 -0.98 0.97 2 -1.31
Ob 0.97 1.82 0.67 B 0.96 2 -0.44 0.97 1.82 0.7

4 成果の活用面と留意点

(1)NIRS用検量線はイネ科主体牧草サイレージの飼料成分分析に利用できる。
(2)今回作成した検量線はニレコ社NIRS6500型の機械であれば移設が可能である。
(3)検量線は、飼料分析サービスを目的とする機関には希望があれば配布する。
(4)繊維分画における酵素分析方法の統一は当面のところ今回参画した分析センターのみに限定する。

5 残された問題とその対応

(1)他の分析項目についても検量線の作成を検討する。
(2)乾草およびコーンサイレージについても同様に検討する。
(3)TDN推定方法の改良