1997911

成績概要書        (作成 平成10年1月)

課題の分類:北海道 畜産・草地 草地
研究課題名:根釧地域におけるスラリー施用によるとうもろこしマルチ栽培
       (根釧地方におけるとうもろこし栽培のスラリー散布による化学肥料節減試験)
予算区分:受託
研究期間平7〜9年度
担当科:根釧農試 作物科
            土壌肥料科
協力・分担関係:なし

1 目的

 根釧地域におけるサイレージ用とうもろこしマルチ栽培におけるスラリーの施用効果を査定するとともに、自給肥料主体のマルチ栽培の実証試験をおこなう。

2 方法

(1)スラリー成分(現物%)
年次 採取場所 N P205 K20
平成7年 場内 0.29 0.13 0.41
平成8年 場内 0.27 0.11 0.44
平成9年 場内 0.26 0.12 0.4
平成9年 農家 0.41 0.16 0.48

(2)処理区および10aあたり施用量
処理区 スラリー CN
①S4NO 4t -㎏
②S4N4 4 4
③S6 6 -
④CN8 - 8
⑤CN12 - 12
⑥S8 8t -
⑦S12 12 -
⑧農S6 6(農家スラリー)
⑨農S8 8(農家スラリー)
注1)CN:化学肥料窒素 注2)燐酸は化学肥料で調整

 供試品種  :「エマ」。 栽植密度:8000本/10a。

 平成7、8年:供試面積1.8ha、一区約30a、一連制。

 平成9年  :一区面積18㎡(畦幅75cm6畦*4m)、乱塊法3反復。

 作業工程  :大型の作業機械、マルチ播種機を使用。実規模で試験。

          耕起→土壌改良資材→砕土→鎮圧→スラリー散布→

          施肥→混和→整地→鎮圧→除草剤・マルチ・播種

3 結果の概要

1)試験を実施した3か年ともに、マルチ処理の高い増収効果が確認された。また、実規模のマルチ播種作業においてスラリー施用による問題点はなかった。

2)マルチ栽培において、投入窒素量の全量をスラリーで代替しても、とうもろこしの初期生育には異常は認めらず、このことは全窒素投入量30kg/10aにおいても同様であった。

3)とうもろこしの硝酸態窒素含量は抽糸期前では高いが、収穫時の値は低く飼料として問題はなかった(表2)。

4)全投入窒素量30kg/10aまでは窒素施用によって直線的に収量は増えたが、25kg/10aを越えると施用窒素量が吸収量を上回った(図1、2)。

5)とうもろこしのマルチ栽培においては、窒素成分量として15〜25kg/10aのスラリーを施用することにより化学肥料単用に比べて同等か、それ以上の収量を得ることができると考えられた(表1、図1、2)。

表1 収量成績(平成9年)
処理名 投入窒素量 乾物率(%) 乾物収量(kg/10a) 収量指数 乾雌穂
(kg/10a) 茎葉 雌穂 茎葉 雌穂 総重 茎葉 雌穂 総重 率(%)
S4N0 10.3 19.4 39.2 1043 575 1619 98 104 100 35.5
S4N4 14.3 18.2 40.1 1073 661 1734 101 120 107 38.1
S6 15.4 18.5 38.9 1119 633 1753 105 114 108 36.2
S8 20.5 17.9 41.5 1123 728 1851 105 132 114 39.4
S12 30.8 19.1 41.1 1287 757 2044 121 137 126 36.9
CN8 8 19.4 38.3 1061 545 1607 100 99 99 33.9
CN12 12 20 37.6 1066 553 1619 100 100 100 34.2
-NK 0 19.6 37.3 641 430 1071 60 78 66 40.2
農S6 24.4 18.7 41.1 1176 726 1903 110 131 118 38.2
農S8 32.5 18.4 39.6 1098 652 1750 103 118 108 37.1

 

表2 作物体成分(平成9年 DM%)
処理区 --------N03-N--------- ----------K-----------
8月7日 10月3日 10月3日 8月7日 10月3日 10月3日
茎葉 茎葉 雌穂 茎葉 茎葉 雌穂
S4N0 0.17 0.00 0.00 3.63 1.70 0.37
S4N4 0.21 0.03 0.00 3.50 1.65 0.33
S6 0.21 0.01 0.00 4.20 1.62 0.39
S8 0.24 0.04 0.00 3.95 1.68 0.36
S12 0.24 0.06 0.00 4.04 1.78 0.34
CN8 0.25 0.05 0.00 3.85 1.48 0.37
CN12 0.28 0.06 0.00 3.78 1.52 0.43
-NK 0.09 0.00 0.00 3.37 1.50 0.48
農S6 0.19 0.04 0.00 3.92 1.69 0.31
農S8 0.21 0.03 0.00 4.08 1.66 0.35

4 成果の活用面と留意点

 1)根釧地域のとうもろこしマルチ栽培に適用する。
 2)肥料およびスラリーは播種前に全層施用した場合のデータである。
 3)スラリーは施肥前に分析を行い投入量を決定する。
 4)リン酸は施肥標準拠して施用する。

5 残された問題点

 1)スラリー成分の簡易測定法の開発