成績概要書     (作成平成10年1月)

課題の分類:
研究課題名:小型・軽量・安価な放牧牛の採食行動自動記録装置(グレイズメモリー)
予算区分:経常(重点基礎)
研究期間平成8年〜9年
担当研究室:北農試 草地部放牧利用研究室
協力・分担関係:早坂理工(株)

1.目的

 放牧牛の採食時間、採食時間帯、採食量を知ることは放牧草地の評価や放牧牛の栄養管理のために重要な情報であるが、これまでは人海戦術による行動調査か、高価でしかも不安定な装置を用いてしか計測できなかった。
 そこで、より安く、簡単に、しかも確実に採食時間がわかる装置の開発を試みた。

2.方法

 万歩計に使われている振り子型上下動センサーが顎運動のセンサーとして使えるかどうかを検討する。センサーの放牧牛への取り付け方法を検討する。センサーの信号と喫食回数が一致するかを採食行動観察によって確かめる。1分あたりのセンサーの信号から放牧牛の採食を判定できるかどうか行動観察によって確認する。センサーのパルス信号を半導体メモリーに蓄積し、パソコンに簡単に取り込んで解析できるシステムを開発する。

3.結果の概要

(1)振り子型上下動センサーで採食時のみ顎の上下動を感知

 牛は反甥するときは頭を水平にし、草を採食するときは頭を下げるので、顎の角度が異なる。上下動センサーの角度を調節することで、採食しているときだけ口の上下動を感知する(図1)。

(2)小型・軽量・安価で牛にストレスをかけない装置(グレイズメモリー)を開発

 これまでの行動記録計に比べ、小型(90×48×26mm)、軽量(80g)、安価(約4万円、従来の1/10)で安定的に計測できる。頭絡の下部に付けた収納ケースにグレイズメモリーを入れるだけで、牛の顎運動を妨げず、大きなストレスをかけずに長期間(最大3週間程度)、採食行動を1〜5分刻みで経時的に記録できる(写真)。

(3)データ解析はパソコンで既存ソフトを使ってできる

 メモリーに記録されたデータをパソコンに取り込み、解析することで採食時間が経時的にわかる(図2)。

4.成果の活用面と留意点

(1)多頭数の放牧試験牛の採食時間が経時的に、長時間、簡単にわかるので、この装置を使うことで放牧方法の改善や、採食量の比較試験などの試験を効率的に行える。

(2)①異常牛や発情牛の発見、②放牧牛(乳牛)における放牧草の採食量を推定し、補助飼料の量を決定、  ③フリーストール飼養牛の個体管理などが可能になる。

(3)防水性に欠けるので、防水対策を完全にとる。