1997914
成績概要書 (作成 平成10年1月)
課題の分類:根釧農試 研究課題名:チモシー基幹草地の集約放牧技術と牛乳の栄養成分 Ⅰ.チモシー基幹放牧草地の永続性と利用法 (ゆとりある酪農経営をめざした放牧による低コスト生乳生産の体系化) 予算区分:国補 研究期間:平7〜9年度 担当科:根釧農試 土壌肥料科、作物科、酪農第一科 協力・分担関係:天北農試 草地飼料科 |
1.目的
チモシー基幹放牧専用草地および兼用草地の永続性と季節生産性についての検討を行い、チモシー基幹草地を用いた放牧利用法の実用性を検証する。
2.方法
(1)チモシー基幹放牧草地の永続性
供試草地:基幹イネ科牧草としてチモシー「クンプウ」、「ノサップ」、「キリタップ」および「ホクシュウ」に随伴マメ科牧草牧草としてシロクローバ「ソーニヤ」を混播した。
放牧方法:育成牛による放牧 調査項目:冠部被度、草種構成
(2)チモシー基幹放牧草地の利用法
供試草地:放牧専用区 チモシー 「ホクシュウ」・シロクローバ「ソーニヤ」混播草地
兼用区 チモシー「ノサップ」・シロクローバ「カリフォルニアラジノ」混播草地
処理:模擬放牧は刈取り高さを15cmで行い、開始時期で「放牧専用区」、「採草前放牧区」、「1番草後放牧区」、「2番草後放牧区」および「採草区」を設置した。
調査項目:牧草収量、栄養価、一般化学成分
3.結果の概要
1)チモシー基幹の放牧専用草地および兼用草地では、「ノサップ」、「キリタップ」および 「ホクシュウ」は「クンプウ」に比べてチモシー割合が70%以上と高く雑草割合が30%以下と低かった(図1-1)。このことからこの3品種は少なくとも6年間の放牧利用が可能であると考えられた。
2)放牧専用区の乾物生産速度は6月下旬から7月にかけて最も大きく、8月以降は小さくなる傾向がみられた。1番草後放牧区では放牧専用区に比べて年次変動、季節変動が小さかった(図1-2)。
3)模擬放牧の結果から、放牧専用区では年間放牧回数8回、乾物収量563kg/10a、1番草後放牧区では4回、197kg/10aの利用が可能であると考えられた。また、2番草後にN-P205-K2Oを2.7-3.3-6.7kg/10aを施用してもあまり増収せず、施肥を行わない場合の乾物収量は14kg/10a程度であった(表1-1)。
4)チモシーの放牧草地で9/15〜11/20に刈り取り高15㎝で模擬放牧を行った場合、翌春の再生に差は認められず、オーチャードグラスのような危険帯は確認できなかった(図1-3)。
5)放牧専用区の推定TDN収量は401kg/10a、CP収量は116kg/10a、1番草後放牧区の推定TDN収量は146kg/10a、CP収量は41kg/10aと計算された(表1-2、3)。
表1-1 放牧草地および兼用草地の乾物収量
1番草 | 2番草 | 模擬放牧 | 合計収量 | 模擬放牧の 刈取り回数 |
|
放牧専用区(利用初年目) | 427 | 427 | 8 | ||
放牧専用区(利用2,3年目) | 563 | 563 | 8 | ||
1番草後放牧区 | 672 | 197 | 869 | 4 | |
2番草後放牧区(2番草後施肥) | 673 | 314 | 34 | 1021 | 1 |
2番草後放牧区(2番草後無施肥) | 665 | 310 | 14 | 989 | 1 |
採草区 | 655 | 306 | 961 |
表1-2 放牧専用地の栄養収量
6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | ||||||
前半 | 後半 | 前半 | 後半 | 前半 | 後半 | 前半 | 後半 | 前半 | 後半 | |
推定TDN収量(%) | 79.4 | 73.6 | 70.6 | 70.7 | 68.0 | 72.1 | 72.6 | 75.4 | 74.9 | |
CP含量(%) | 18.1 | 20.2 | 20.3 | 21.3 | 22.0 | 23.2 | 22.7 | 24.7 | 19.6 | |
NDF含量(%) | 44.4 | 49.7 | 56.2 | 46.1 | 46.2 | 40.6 | 42.4 | 40.9 | 39.2 | |
乾物生産量(㎏/10a) | 74.5 | 94.6 | 84.4 | 75.9 | 57.2 | 53.6 | 45.8 | 33.6 | 30.4 | 550.0 |
推定TDN収量(㎏/10a) | 59.1 | 69.7 | 59.6 | 53.6 | 38.9 | 38.6 | 33.3 | 25.3 | 22.8 | 400.9 |
CP収量(㎏/10a) | 13.5 | 19.1 | 17.1 | 16.1 | 12.6 | 12.4 | 10.4 | 8.3 | 6.0 | 115.5 |
表1-3 兼用草地の栄養収量
1番草後放牧区 | 2番草後放牧区 (2番草後施肥) |
2番草後放牧区 (2番草後無施肥) |
|||||||
7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 合計 | 10月 | 10月 | |||
後半 | 前半 | 後半 | 前半 | 後半 | 前半 | 前半 | 前半 | ||
推定TDN収量(%) | 71.8 | 71.7 | 71.7 | 74.1 | 73.9 | 75.1 | 74.9 | 75.4 | |
CP含量(%) | 20.4 | 20.4 | 21 | 24.2 | 19.3 | 17.0 | 17.5 | 15.8 | |
NDF含量(%) | 49.6 | 49.6 | 50.1 | 42.4 | 43.6 | 49.2 | 39.8 | 36.7 | |
乾物生産量(㎏/10a) | 38.4 | 43.2 | 40.4 | 28.8 | 25.5 | 23.7 | 199.9 | 33.7 | 14.3 |
推定TDN収量(㎏/10a) | 27.6 | 31.0 | 29.0 | 21.3 | 18.8 | 17.8 | 145.5 | 25.2 | 10.8 |
4.成果の活用面と留意点
1)永続性の試験は入牧前の草丈が約30〜40cm、退牧後の草丈が約10〜20cmで行っており、さらに厳しい 放牧条件では草種構成が悪化する可能性がある。
2)乾物収量の季節変動は根釧地域以外では異なると考えられる。
5.残された問題とその対応
1)放牧地の施肥量・時期については次年度より新規課題で検討する。