新品種候補                       (作成 平成10年1月)

課題の分類

新品種候補名 とうもろこし(サイレージ用)「SL9305」

試験場所名 北海道立十勝,上川,北見農試,農林水産省北海道農試

1.来歴および試験経過

1)来  歴

とうもろこし(サイレージ用)「SL9305」は,雪印種苗株式会社が平成5年に育成した単交配(デント×フリント,構成系統名は不明)の一代雑種である。OECD登録はされていない。

2)導入および試験経過

平成6年,雪印種苗株式会社が場外予備検定試験を行った。平成7〜9年に,北海道立十勝農試,上川農試および北見農試において,とうもろこし(サイレージ用)品種比較試験を行った。さらに平成8〜9年に忠類村,士別市および遠軽町において同現地試験を行った。また,平成7〜8年には,農林水産省北海道農試において,すす紋病およびごま葉枯病に対する特性検定試験を行った。

 

2.特  性(標準品種「ヘイゲンミノリ」(早生の晩))

1)熟  期

絹糸抽出期は「ヘイゲンミノリ」並みである。収穫時熟度は「ヘイゲンミノリ」並みである。総体の乾物率は「ヘイゲンミノリ」並みかやや高い。熟期は早生の晩に属する。

2)耐倒伏性

  「ヘイゲンミノリ」よりやや強い。

3)発芽および初期生育

発芽は「ヘイゲンミノリ」よりやや遅い。初期生育は「ヘイゲンミノリ」並みである。

4)収量性および乾物特性

 乾総重およびTDN収量は「ヘイゲンミノリ」よりやや多い。乾物中TDN割合は「ヘイゲンミノリ」よりやや高い。

5)形態特性

 稈長は「ヘイゲンミノリ」より高い。着雌穂高は「ヘイゲンミノリ」より高い。雌穂先端部の子実は露出する。

6)耐 病 性

すす紋病抵抗性は「ダイヘイゲン」より強く,「ヘイゲンミノリ」よりやや強い。

  ごま葉枯病抵抗性は「ダイヘイゲン」「ヘイゲンミノリ」より強い。

 

3.試験成績

1)生育調査
場所 品種・系統名 発芽期
(月日)
初期
生育
絹糸
抽出期
(月日)
倒伏
(%)
収穫時
熟度
稈長
(cm)
着雌
穂高
(cm)
不稔個
体割合
(%)
収量(kg/10a) 総体
乾物率
(%)
乾雌穂
重割合
(%)
乾物中
TDN
(%)
乾総重 推定
TDN
同左比
(%)



SL9305 5.28 1.2 8.06 0.3 糊後〜黄初 255 103 0.6 1358 986 111 27.4 53.6 72.6
ヘイゲンミノリ 5.27 1.1 8.06 0.9 糊後〜黄初 233 88 0.6 1253 893 100 27.0 48.8 71.3
ディア 5.30 1.7 8.06 0.9 糊後〜黄初 246 107 0.0 1295 925 104 27.1 49.4 71.4
キタアサヒ (5.29) 1.4 8.09 4.8 糊後 253 111 3.3 1365 959 108 26.2 44.4 70.1
LG2290 5.29 1.7 8.08 0.1 糊後〜黄初 245 100 1.1 1356 968 108 26.8 49.1 71.4



SL9305 5.27 1.7 7.28 0.0 黄中 259 121 0.0 1739 1236 105 28.9 47.9 71.0
ヘイゲンミノリ 5.26 1.7 7.27 0.5 黄中〜後 236 97 2.2 1659 1177 100 27.1 47.7 71.1
ディア 5.27 2.0 7.25 0.0 黄中 252 114 0.0 1714 1211 103 27.7 46.7 70.7
キタアサヒ 5.27 2.1 7.28 1.9 黄中 245 115 6.1 1598 1123 95 28.8 45.0 70.3



SL9305 6.05 1.9 8.14 1.0 糊後 226 91 1.1 1421 1013 103 23.8 48.7 71.3
ヘイゲンミノリ 6.04 1.5 8.14 4.8 糊中 216 81 1.7 1400 986 100 23.5 45.4 70.3
ディア 6.06 2.8 8.14 16.8 糊後 214 86 1.7 1361 951 96 23.7 43.6 69.9
キタアサヒ 6.06 2.4 8.16 8.5 糊中 221 94 7.2 1327 915 93 22.9 39.8 68.9


SL9305 6.11 1.5 8.18 0.0 糊中 - - 0.0 1220 865 117 27.2 47.7 71.0
ヘイゲンミノリ 6.10 1.3 8.19 0.0 糊中〜後 - - 7.5 1057 733 100 26.6 42.4 69.6
ディア 6.12 1.7 8.16 0.2 糊後 - - 0.0 1126 795 107 27.4 46.7 70.7
キタアサヒ 6.11 1.8 8.23 0.4 糊中 - - 4.2 1097 748 101 25.4 37.4 68.2


SL9305 6.08 1.8 8.06 0.0 黄初〜中 255 115 1.3 1673 1254 110 29.0 44.0 70.1
ヘイゲンミノリ 6.08 1.8 8.10 1.3 糊後 230 94 8.8 1631 1135 100 25.4 42.8 69.2
ディア 6.09 2.3 8.05 3.8 黄初 242 111 1.3 1847 1293 114 28.9 44.1 70.0
キタアサヒ 6.10 2.3 8.11 3.3 糊後〜黄初 247 107 4.2 1684 1160 102 26.1 40.0 68.9


SL9305 6.09 3.0 8.10 0.3 糊中 238 99 1.3 1332 932 121 24.4 44.0 70.0
ヘイゲンミノリ 6.09 2.0 8.10 0.8 糊後 199 82 12.5 1107 769 100 23.6 42.0 69.4
ディア 6.09 3.0 8.10 0.0 糊中 219 89 3.8 1181 827 108 25.1 43.8 70.0
キタアサヒ 6.08 3.0 8.12 1.5 乳後 219 85 15.0 1186 800 104 23.6 34.5 67.5
 注1)試験年次は,各農試は平成7〜9年,各現地は平成8〜9年である。
  2)初期生育は,指数(1:良〜5:否)で示す。
  3)TDNの算出は,新得方式(TDN=乾茎葉重×0.582+乾雌穂重×0.85)による。

2)耐病性に関する調査
 病害抵抗性(特性検定試験,北海道農試)
品種系統名 項目 すす紋病 ごま葉枯病
調査時期 H7.9.10 H8.9.22 H7.8.27 H8.9.2
SL9305 1.7 2.8 2.7 2.0
ダイヘイゲン 2.8 3.0 3.7 3.8
ヘイゲンミノリ 2.0 2.7 3.2 3.5
 注1) 伝染源は,すす紋病については罹病葉の粉砕懸濁液,ごま葉枯病については麦粒培養した菌の接種による。
  2) Elliott & Jenkinsの指数(0:無〜5:甚)による。
  3) 試験年次は,平成7〜8年の2か年である。

3)雌穂の特性に関する調査
 収穫時における雌穂の先端部子実露出個体割合(%,十勝農試)
品種系統名 試験年次 H7 H8 H9 平均
SL9305 93.3 93.3 100.0 95.6
ヘイゲンミノリ 27.8 18.3 35.4 27.2
ディア 46.7 6.7 25.2 26.2
  注1) 数値=(子実が1粒以上露出している個体数)/(全調査個体数)×100

4.配布しうる種子量

平成10年度以降 70 t

 

5.普及対象地域および普及見込面積

十勝中部,道央北部,および網走内陸地域

  3000ha