成績概要書                                       (作成 平成11年1月)

課題の分類
研究課題名:  スルホニルウレア系除草剤抵抗性水田雑草イヌホタルイおよびミズアオイ
        出現圃場における緊急対応
   (スルホニルウレア系除草剤抵抗性水田雑草イヌホタルイの生態解明および有効除草剤の選抜)
予算区分: 受託 担当科: 中央農試稲作部栽培第一科
研究期間: 平成10〜12年
協力分担関係:

1.目的: スルホニルウレア系除草剤(SU剤)抵抗性イヌホタルイ,ミズアオイが確認され,除草剤の不効問題が全道レベルで年々増加している。生産現場での混乱を最小限に抑えるため,これら抵抗性雑草に対する緊急的対応を提示する。

2.方法: 

(1)抵抗性検定

  残草圃場より採取したイヌホタルイ,ミズアオイの種子あるいは種子混入土壌を供試し,SU剤に対する反応を,ポット試験等により感受性生物型と比較検討した。

(2)残草状況の把握

 1998年の残草状況を把握するため,水田作のある全道37普及センターを対象に,所轄管内における残草程度甚の草種名,事例数(農家戸数単位),達観による増減傾向をアンケート形式により調査した。

(3)有効除草剤の選定

 SU剤抵抗性イヌホタルイ,ミズアオイが自然発生する圃場あるいはポット試験において,各種単剤および混合剤の効果検討を行った。

  1. 結果の概要
  1.  2市7町の12供試イヌホタルイ中,8供試イヌホタルイでSU剤抵抗性が確認され,内3供試イヌホタルイのLD50値は感受性生物型の40〜140倍の範囲にあった(図1)。また,長沼町のミズアオイについてSU剤抵抗性を確認した。
  2.  残草状況アンケートより,ホタルイ類(主にイヌホタルイ)の残草件数は472件,その面積は 2,281haに達することが判明し,このうちの相当数でSU剤抵抗性生物型が出現していると考えられる。ミズアオイは1,293件,6,851haであった。
  3.  SU剤抵抗性出現圃場の事例解析結果から,共通的特徴を5項目抽出し,これに基づき,イヌホタルイあるいはミズアオイ残草圃場について,使用除草剤の切り替えの必要性を判断するためのチェック項目を作成した(表1)。
  4.  SU剤抵抗性イヌホタルイあるいはミズアオイ出現圃場において,数種除草剤の効果を検討した結果に基づき,有効除草剤を示した(表2)。
  5.  チェック項目全てに該当する圃場では,SU剤抵抗性イヌホタルイあるいはミズアオイ出現の可能性が高いと考えられるため,表2に示す除草剤へ切り替えることにより,生産現場での混乱を最小限に抑えることが可能である。

 

                                   表1 使用除草剤切り替え必要性

                                       判断のためのチェック項目


                                  □ 除草剤の使用時期,使用量および

                                    使用後の水管理等は適正である。

                                   □ イヌホタルイあるいはミズアオイのみ

                       が残草している。

                                   □ イヌホタルイあるいはミズアオイの

                                 残草が2ヶ年以上継続している。

                                   □ SU剤を5年程度,もしくはそれ以

                         上連用している。

                                   □ 過去に甚程度の残草がない。


                                  注) 全5項目に該当する場合は切り替え必要。

 

表2 SU剤抵抗性イヌホタルイ,ミズアオイに有効な除草剤

初期剤

 

イヌホ

タルイ

ミズ

アオイ

中期剤

イヌホ

タルイ

ミズ

アオイ

一発処理剤

イヌホ

タルイ

ミズ

アオイ

TSM−612フロアブル

NS−177 1,3㎏粒

HSW−941 1,3㎏粒

CGM−15 3㎏粒

モリネートSM1㎏粒

SL−498(H)1㎏粒

SL−970フロアブル

       

NTN−831 1㎏粒

KUH−958フロアブル

     

HJ−941 1㎏粒

 

CG−113乳剤

○*

     

KPP−932フロアブル

 

CG−113 1㎏粒

○*

     

NC−329 1㎏粒

 

           

NC−311DCD1㎏粒

 

           

TH−913ADE1㎏粒

 

           

NSK−855フロアブル

 

○*

           

TH−913ADS(L)1㎏粒

 

○*

 注)ミズアオイの欄 ○は1葉期までで有効,○*は子葉期までで有効を示す。

 

4.成果の活用面と留意点

  1.  SU剤抵抗性か否かは,ただ単に残草したのみの状況では判断できない。イヌホタルイあるいはミズアオイ残草圃場に関する対応表に基づいた指導が必要不可欠である。
  2.  本成績は,残草の認められていない圃場におけるSU系除草剤の使用を制限するものではない。
  3.  緊急的対応であり,3年程度の後に見直しを必要とする。

 

  1. 残された問題点とその対応

除草剤の合理的な使用法およびここで示した対応の妥当性を検証するため,以下の項目を把握する必要がある。 

  1. SU剤抵抗性雑草の生態、 (2)全道レベルでの残草状況の変化