１．来歴および試験経過
　１）来　歴：「ＨＴ　１５」は、スウェーデンのノバルティス種子会社が育成した二倍体単胚のそう根病抵抗性一代雑種である。二倍体単胚雄性不稔種子親系統「MS-367-O」と二倍体多胚花粉親系統「2X/52」を交配し、平成６年（1994年）に育成された。
　２）試　験　経　過
　（１）平成７年：北海道糖業株式会社が輸入し、「HMR95-07」の系統名で輸入品種予備試験を行った。
　（２）平成８年〜平成10年：「ＨＴ　１５」の系統名で、北海道立十勝、北見、上川、中央農業試験場並びに北海道農業試験場において輸入品種検定試験、北見農試においてそう根病抵抗性品種検定試験を行った。
　（３）平成９年〜平成10年：十勝農試において栽培特性検定試験、褐斑病抵抗性特性検定試験、根腐病抵抗性特性検定試験、中央農試において耐湿性特性検定試験、根釧農試において抽苔耐性特性検定試験を行った。
　（４）平成９年〜平成10年：全道１７カ所において現地検定試験を行った。

２．特　性
　１）形態的特性：「ＨＴ　１５」は、葉長は“中”、葉姿は“やや直立”で「エマ」並である。葉数は“やや多”、葉形は“やや皮針形”、葉身の大きさは“やや小”で「エマ」並である。クラウンの大きさは“小”、根周は“中”で「エマ」並である。根形は“やや短円錐形”である。分岐根は“少”である。
　２）生態的特性
　（１）根重：「モノホマレ」、「エマ」より多い“多”である。
　（２）根中糖分：「モノホマレ」よりやや低く、「エマ」より低い“中”である。
　（３）糖量：「モノホマレ」よりやや多く、「エマ」より多い“多”である。
　（４）抽苔耐性：「モノホマレ」並の“強”である。
　（５）耐病性：褐斑病抵抗性は「モノホマレ」、「エマ」より強い“やや強”である。
　 　 　　　　　根腐病抵抗性は「モノホマレ」よりやや弱い“弱”である。
　 　 　　　　　そう根病抵抗性は「エマ」よりやや強い“強”である。
　（６）耐湿性：「モノホマレ」並の“やや弱”である。
　３）品質特性：アミノ態窒素は、「モノホマレ」よりやや高く、「エマ」より低い“やや低”である。カリウムは、「モノホマレ」、「エマ」並の“やや低”である。ナトリウムは、「モノホマレ」、「エマ」より高い“やや高”である。不純物価は、「モノホマレ」、「エマ」並である。

表１　健全圃場における成績（十勝、北見、上川、中央、北農試　平成８〜10年）

品種 ・系統名	根腐症 状株率	根 重 (t/10a)	根中糖分 ( ％ )	糖 量 (kg/10a)	「モノホマレ」比
					根重	糖分	糖量
ＨＴ　１５	0.3	7.01	16.78	1,174	103(103)	98( 99)	102(102)
モノホマレ	0.0	6.78	17.13	1,156	100(100)	100(100)	100(100)
エマ	(0.1)	(6.67)	(17.51)	(1,161)	−　( 97)	−　(103)	−　( 99)

注）根腐症状株率：指数４以上。（　）内は平成９，10年の２カ年平均。なお、北農試は３カ年
中、平成８年は札幌（羊ヶ丘）、平成９，10年は芽室である。

表２　そう根病発生圃場における成績（北見農試隔離圃場　平成８〜10年）

系統名又は 品種名	葉部黄 化程度	根　　重 ( t/10a)	根中糖分 (％)	糖　　量 (kg/10a)	そう根病 抵 抗 性
ＨＴ　１５	0.4	5.42(181)	16.18(127)	878(224)	強
モノホマレ(標準)	1.7	3.00(100)	12.75(100)	392(100)	やや弱
エマ　　　(対象)	1.1	4.13(138)	15.76(124)	655(167)	やや強
シュベルト(比較)	0.3	4.89(163)	17.29(136)	847(216)	強
リゾール　(比較)	0.4	4.53(151)	16.32(128)	743(190)	強
リゾホート(比較)	0.4	4.42(147)	15.85(124)	704(180)	強

注１）表中の（　）内は「モノホマレ」に対する比。　
注２）葉部黄化程度：０（正常）〜４（全ての葉で退緑黄化）

表３　特性検定試験・品質調査（十勝、根釧、中央、北見、上川、北農試、平成９〜10年）

系　統　名 または 品　種　名	褐斑病抵抗性 発病程度(十勝)			抽苔耐性(根釧) 抽苔率（％）			耐湿性(中央) 腐 敗 度			品質調査(Ｈ9〜10年)
										有害性非糖分 (meq/100g)			不純 物価
	９上	10上	判定	Ｈ９	Ｈ10	判定	Ｈ９	Ｈ10	判定	アミノN	Ｋ	Ｎａ	(％)
ＨＴ　１５	0.21	1.42	やや強	0.0	0.0	強	79.8	76.3	やや弱	2.06	4.42	0.58	4.56
モノホマレ	0.92	2.79	やや弱	0.0	0.0	強	79.9	69.1	やや弱	1.99	4.64	0.50	4.52
エマ	-	-	(弱)	-	-	(強)	−	−	(−)	2.38	4.54	0.37	4.61

注１）褐斑病発病程度は平成９〜10年の２カ年平均値。（　）は平成９年以前の結果。
　２）不純物価(％)＝(3.5×Na(%)＋2.5×K(%)＋10×Amino-N(%))÷根中糖分（％）×100
　　　　Na：ナトリウム　Ｋ：カリウム　Amino-N：ｱﾐﾉ態窒素

表４　根腐病抵抗性特性検定試験、黒根病調査（平成９〜10年）

系　統　名 品　種　名	根腐病発病程度 （十勝農試）			黒根病発病程度
				中央農試		現地試験
	Ｈ９	Ｈ10	判定	Ｈ９	Ｈ10	Ｈ９	Ｈ10
ＨＴ　１５	1.19	3.95	弱	0.93	0.55	0.72	0.75
モノホマレ	0.55	3.55	やや弱	0.44	0.27	0.26	0.35
エマ	−	−	−	0.67	0.42	−	−

注１）根腐病は病原菌を接種、黒根病は無接種。
　２）現地試験はＨ９：６カ所、Ｈ10：16カ所の平均。

表５　現地検定試験成績全道平均（平成９〜10年、１７カ所）

系　統　名 品　種　名	根腐症状 株率(％)	根　重 ( t/10a)	根中糖分 （％）	糖　量 (kg/10a)	対「モノホマレ」比（％）
					根　重	根中糖分	糖　量
ＨＴ　１５	2.4(4.0)	6.42(6.34)	16.06(15.81)	1031(1007)	103(100)	98( 97)	101( 98)
モノホマレ	0.8(1.0)	6.24(6.31)	16.33(16.27)	1019(1027)	100(100)	100(100)	100(100)
ユーデン	-　(4.5)	-　(6.62)	-　(16.46)	-　(1090)	-　(105)	-　(101)	-　(106)

注）　( )内は参考品種「ユーデン」供試の延べ12ヶ所の平均値。

３．配布可能種子量
　平成１１年度　　　７００ｋｇ　　 平成１２年度以降　　７００ｋｇ

４．適応地帯および普及見込面積
　北海道一円のそう根病発生地帯　 平成１１年度 ７００ｈａ　平成１２年度以降 ７００ｈａ

５．栽培上の注意
１）そう根病抵抗性は“強”であるが、汚染程度が高いと思われる圃場での栽培を避ける。
２）根腐病抵抗性は“弱”なので、適期防除に留意する。
３）耐湿性は“やや弱”なので、湿害が懸念される圃場での栽培は避ける。