新品種候補                    (作成 平成11年1月20日)
課題の分類
新品種候補名  てんさい「H 125」
試験場所名 道立十勝農試、北見農試、中央農試、上川農試、根釧農試、北海道農試
<協力> 日本甜菜製糖㈱、北海道糖業㈱、ホクレン農業協同組合連合会

1.来歴および試験経過
 1)来 歴
 「H 125」は、オランダのバンデルハーベ種子会社が育成した三倍体単胚の一代雑種である。
 二倍体単胚雄性不稔種子親系統「MOMS 14B8,13.4」と四倍体多胚花粉親系統「T18/06」を交配し、平成5年(1993年)に育成された。
 2)試 験 経 過
 (1)平成6年:ホクレン農業協同組合連合会が輸入し、「HK94−13」の系統名で輸入品種予備試験を行った。
 (2)平成7年〜平成10年:「H 125」の系統名で、北海道立十勝、北見、上川、中央農業試験場並びに北海道農業試験場において輸入品種検定試験を行った。
 (3)平成9年〜平成10年:十勝農試において栽培特性検定試験、褐斑病抵抗性特性検定試験、根腐病抵抗性特性検定試験、中央農試において耐湿性特性検定試験、根釧農試において抽苔耐性特性検定試験を行った。
 (4)平成9年〜平成10年:全道17カ所において現地検定試験を行った。
 

2.特 性
 1)形態的特徴:「H 125」は、葉長は“やや短”、葉姿は“やや開平”で「ハミング」並である。葉数は“中”で「ハミング」よりやや多く、葉形は“楕円形”である。葉身の大きさは“中”で「ハミング」並である。クラウンの大きさは“小”、根形は“円錐形”、根周は“中”で「ハミング」並である。分岐根は“少”である。
 2)生態的特性
 (1)根重:「モノホマレ」、「ハミング」より多い“多”である。
 (2)根中糖分:「モノホマレ」より高く、「ハミング」並の“やや高”である。
 (3)糖量:「モノホマレ」、「ハミング」より多い“多”である。
 (4)抽苔耐性:「モノホマレ」、「ハミング」並の“強”である。
 (5)耐病性:褐斑病抵抗性は「モノホマレ」よりやや弱く、「ハミング」並の“弱”である。
        根腐病抵抗性は「モノホマレ」並の“やや弱”である。
 (6)耐湿性:「モノホマレ」よりやや強く、「ハミング」並の“中”である。
 3)品質特性
   アミノ態窒素は、「モノホマレ」より低く、「ハミング」並の“低”である。
   カリウムは、「モノホマレ」よりやや低く、「ハミング」並の“低”である。
   ナトリウムは、「モノホマレ」より低く、「ハミング」並の“低”である。
   不純物価は、「モノホマレ」より低く、「ハミング」並である。

表1 各農試における成績(平成7〜10年の4カ年平均)




品種

・系統名

根腐症

状株率

根 重

(t/10a)

根中糖分

( % )

糖 量

(kg/10a)

「モノホマレ」比

根 重

糖 分

糖 量




H 125
モノホマレ
ハミング

 0.0
 0.0
(0.0)

 6.39
 6.29
(6.15)

 18.27
 17.53
(17.89)

1,168
1,102
(1,097)

102(102)
100(100)
−(100)

104(104)
100(100)
−(104)

106(106)
100(100)
−(104)




H 125
モノホマレ
ハミング

 0.2
 0.0
(0.0)

 6.22
 5.89
(5.86)

 18.73
 18.12
(18.87)

1,164
1,065
(1,104)

106(104)
100(100)
−( 98)

103(104)
100(100)
−(104)

109(108)
100(100)
−(102)




H 125
モノホマレ
ハミング

 0.2
 0.0
(0.0)

 7.72
 7.60
(7.76)

 17.38
 16.61
(17.39)

1,339
1,259
(1,345)

102(106)
100(100)
−(104)

105(104)
100(100)
−(106)

106(111)
100(100)
−(111)




H 125
モノホマレ
ハミング

 0.0
 0.0
(0.0)

 8.26
 7.92
(7.48)

 17.81
 17.10
(17.83)

1,470
1,353
(1,331)

104(104)
100(100)
−( 95)

104(104)
100(100)
−(105)

109(108)
100(100)
−(100)




H 125
モノホマレ
ハミング

 0.1
 0.0
(1.1)

 6.53
 6.14
(6.24)

 16.76
 16.37
(17.24)

1,093
1,003
(1,079)

106(106)
100(100)
−( 99)

102(103)
100(100)
−(103)

109(110)
100(100)
−(103)




 

H 125
モノホマレ
ハミング
 

 0.1
 0.0
(0.2)
 

 7.02
 6.77
(6.62)
 

 17.79
 17.15
(17.88)
 

1,247
1,156
(1,180)
 

104(104)
100(100)
−( 99)
 

104(104)
100(100)
−(104)
 

108(108)
100(100)
−(103)
 




























 
注)根腐症状株率:指数4以上。()内は十勝、北見、上川、北農試は3カ年、中央は2カ年平均。なお、北農試は4カ年中、平成7,8年は札幌(羊ヶ丘)、平成9,10年は芽室である。
 

表2 特性検定試験・品質調査(十勝、根釧、中央、北見、上川、北農試、平成8〜10年)



系 統 名
または

品 種 名


褐斑病抵抗性

発病程度(十勝)


抽苔耐性(根釧)

 抽苔率(%)


耐湿性(中央)

  腐 敗 度

品質調査(H8〜10年)

有害性非糖分
 (meq/100g)

不純
物価

(%)

9上

10上

判定

H9

H10

判定

H9

H10

判定

アミノN


Na

H 125
モノホマレ
ハミング
 

0.75
0.92

 

3.03
2.79

 


ヤヤ弱
(弱)
 

0.0
0.0
 -
 

0.0
0.0
 -
 



(強)
 

52.0
79.9

 

55.2
69.1

 


ヤヤ弱
(中)
 

1.59
1.81
1.69
 

4.16
4.46
4.05
 

0.36
0.49
0.37
 

3.70
4.25
3.71
 











 
注1)褐斑病発病程度は平成9〜10年の2カ年平均値。()は平成9年以前の結果。
 2)品質調査は十勝、北見、上川、北農試は3カ年、中央は2カ年の平均。
 3)不純物価(%)=(3.5×Na(%)+2.5×K(%)+10×Amino-N(%))÷根中糖分(%)×100
    Na:ナトリウム K:カリウム Amino-N:アミノ態窒素
 

表3 根腐病抵抗性特性検定試験、黒根病調査(平成9〜10年)

系 統 名

     
品 種 名
 

根腐病発病程度

 (十勝農試)

       黒根病発病程度

 中央農試

     現地試験

H9

H10

判定

H9

H10

  H9

  H10

H 125
モノホマレ
ハミング
 

0.40
0.55 −
 

3.36
3.55

 

やや弱
やや弱
 −
 

0.33
0.44
0.19
 

0.16
0.27
0.09
 

0.24(0.12)
0.26(0.32)
 − (0.36)
 

0.32(0.26)
0.35(0.25)
 − (0.33)
 










 
注1)根腐病は病原菌を接種、黒根病は無接種。
 2)現地試験はH9:6カ所、H10:16カ所、()内は「ハミング」供試した場所の平均値。
 

表4 現地検定試験成績全道平均(平成9〜10年、17カ所)

系 統 名

品 種 名

根腐症状

株率(%)

 根 重

( t/10a)

 根中糖分

  (%)

 糖 量
    
(kg/10a)

対「モノホマレ」比(%)

根 重

根中糖分

糖 量

H 125
モノホマレ
ハミング
 

0.8(0.7)
0.8(0.3)
 -(0.8)
 

6.47(6.55)
6.29(6.24)
 - (6.42)
 

17.01(17.22)
16.30(16.40)
  - (17.20)
 

1101(1122)
1024(1019)
 - (1098)
 

103(105)
100(100)
 -(103)
 

104(105)
100(100)
 -(105)
 

108(110)
100(100)
 -(108)
 








 
注)()内は「ハミング」供試の延べ9カ所の平均値。
                          

3.配布可能種子量
 平成11年度  2,000kg   平成12年度以降 7,000kg
 

4.適応地帯および普及見込面積
 北海道一円  平成11年度 2,000ha  平成12年度以降 7,000ha
 

5.栽培上の注意
 1)褐斑病抵抗性は“弱”なので、適期防除に留意する。