(作成 平成11年1月)
ばれいしょ新品種候補系統「P961」
     北海道立中央、上川、十勝、根釧、北見農業試験場
     農林水産省北海道農業試験場

1.特性一覧表
系統名 ばれいしょ「P961」 組合せ ホッカイコガネ × ND860-2
特 性 長所
1)低温(6℃)での長期貯蔵後のチップ品質が優れる
短所
1)小粒のため、中以上いも収量がやや低い
2)ジャガイモシストセンチュウ抵抗性がない
採用県と普及見込み面積 北海道 500 ha
調査場所 中央農試 上川農試 十勝農試 北見農試
      品種名
 形質
P961 トヨシロ
(標準)
P961 トヨシロ
(標準)
P961 トヨシロ
(標準)
P961 トヨシロ
(標準)
萌芽期 (月日)
枯凋期 (月日)
茎長 (cm)
上いも数 (個/株)
一個重 (g)
上いも重 (kg/10a)
対標準比 (%)
中以上いも重 (kg/10a)
対標準比 (%)
でん粉価 (%)
5.26
9. 6
 53
13.5
 70
4,192
 102
3,091
 86
15.7
5.29
9. 6
 54
10.0
  93
4,105
 100
3,601
 100
16.4
5.28
9.19
 60
15.4
 101
5,624
 117
5,034
 114
15.8
5.29
9.10
 59
11.8
 113
4,815
 100
4,410
 100
16.5
6. 2
9.10
 74
12.7
  75
4,179
  96
3,300
  84
16.1
6. 3
9. 9
 75
 9.0
 112
4,328
 100
3,929
 100
16.2
6. 8
9.16
 76
10.1
  95
4,392
  87
3,889
  83
15.3
6.11
9.19
 83
 9.2
 128
5,318
 100
4,997
 100
16.0
花の色 
塊茎の形状
皮色
目の深浅
肉色
赤紫
 球
黄褐
 浅
 白

扁球
黄褐

 
耐病虫性
  シストセンチュウ
  塊茎腐敗
  そうか病
  中心空洞
  褐色心ぐされ

弱(h)
やや強



弱(h)
やや弱


チップ褐変
用途

加工用

加工用
調査年次 平成8〜10年

2.ばれいしょ「P961」の特記すべき特徴
 「P961」は「トヨシロ」と同様中早性のチップス原料用系統である。「P961」は6℃で長期貯蔵(翌年5月まで)した場合、還元糖の増加が少なくチップカラーが良好である。

3.北海道で奨励品種に採用しようとする理由
 ばれいしょを用いた加工食品は、油加工食品(ポテトチップ、フレンチフライなど)とそれ以外の加工食品(サラダ、コロッケ、各種総菜など)に大別される。油加工食品のうち、ポテトチップ用としては「トヨシロ」が多く用いられているが、6℃の低温貯蔵ではチップカラーを悪化させる還元糖が蓄積し、加温処理してもチップカラーの戻りが劣るため、10℃程度で貯蔵し、さらに加温処理をして還元糖含有量を下げて使用している。このため、呼吸などによる損耗が激しく、貯蔵が長期化すると芽の伸長が製造作業上の問題にもなる。ポテトチップ加工業界は、北海道産のばれいしょが高品質で消費者に対して好感を持って受け入れられている現状から、長期間低温貯蔵が可能で高品質な新品種の出現を強く期待している。
 「P961」は「トヨシロ」に比べて収穫時からチップカラーが優れ、長期間低温(6℃)貯蔵しても還元糖の増加が緩慢なため、チップカラーが低下しにくく、加温処理をしなくても良質のチップの製造が可能である。低温で貯蔵することにより呼吸などによる損耗や芽の伸長も抑えることができる。このような低温での貯蔵性は既存品種には見られない優れた特性である。また、塊茎の形状、大きさ等の外観品質も「トヨシロ」より優れる。このため、「P961」を「トヨシロ」などの原料ではチップの製造に支障のある春先に使用することにより、製造コストの低減など加工業者の競争力強化に寄与できると考えられる。
 既存品種より低収となる場合があるが、既存品種にはないポテトチップ加工用としての優点を生かし、品質を価格に反映させることにより同程度の収益を確保できるものと考えられる。
 以上のことから、「P961」を「トヨシロ」の一部と置き換え、道産ばれいしょ生産の振興をはかりたい。

4.普及対象地域及び見込み面積
1)普及対象地域
北海道一円、ただし、ジャガイモシストセンチュウ汚染地域は除く。
2)普及見込み面積
500ha

5.栽培上の注意
1)収量を確保するために、生育の後半まで塊茎の肥大期間を確保するようにつとめる。
2)ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持たないのでセンチュウ汚染地域での栽培を避ける。