成績概要書 (作成:平成11年1月)
課題の分類 研究課題名:フォーリングナンバーを用いた小麦収穫適期の推定 予算区分:民間 研究期間:平8〜10年度 担当科:ホクレン農業総合研究所 食品研究室 食品分析課 協力・分担関係:なし |
1.目 的
良質小麦の安定生産を目的として、登熟後期における小麦粉粘度の推移を調査し、品質面からの収穫適期を推定する方法の確立と、その実用性を検討する。
3.結果の概要
1)各年次(平成8、9年)、試験地、品種別にみると、小麦の粘度上昇期(およそ出穂期より30日目以降)のFNと出穂期からの積算気温との間に有意な正の相関関係が認められた(表1、r=0.871**〜0.999**, n=3〜16)。このことから、FNを目的変数(Y)、積算気温を説明変数(X)とした一次回帰式を各々求め、FNが300s(アミログラム最高粘度で380BU相当)を超える時期の推定を行ったところ、実測値と高い適合度が得られた(表1)。また、この回帰式の傾きにより、子実水分乾減に基づく収穫開始時期までにFNが300sに到達するか否かが判定され、傾きが0.8以上では到達し、同じく0.5以下の場合は到達できないと判断された。
2)現場での利用場面を考慮し、FNと積算気温との関係を導き出す方法をマニュアル化した(図1、2)。すなわち、①出穂期からの積算気温が550〜600℃頃(FN100〜120s程度)に一回目のサンプリングを行い定法によりFNを計測し、②その3〜4日後に二回目のサンプリングを行い同様にFNを計測し、③その間の積算気温との関係より一次式を算出し、FN300sに対する積算気温を求め、④二回目のサンプリング時の積算気温との差をその時期の日平均気温(本試験では18℃と設定)で除算することにより到達日数を求める。
3)以上のマニュアルを基に、現地における適合度を平成10年に調査したところ、予測日と実測日の差は−2〜+1日、平均で−0.54日(n=13)と、その適合度は高かった(表2)。
4)この方法と従来の子実水分乾減による収穫適期判定との組合せにより、適期幅と収穫対策のパターンを3種類に分類することができた(図3)。
4.成果の活用面と留意点
1)従来の子実水分乾減による収穫適期判定に加えて本方法を利用することにより、①品質上の収穫適期が事前に予測可能となり、②収穫体制の準備に示唆を与え、③主産地におけるフォーリングナンバー機の有効活用が図られることが期待される。
2)本試験は「チホクコムギ」および「ホクシン」での成績である。
3)到達日数算出に用いる登熟後期の日平均気温は、当該地区の平年値を用いる。
5.残された問題点とその対応