成績概要書                     (作成 平成11年 1月)

研究課題名 :ほうれんそうの品種特性Ⅲ
         (地域の振興方向に対応した野菜の品種特性調査)
         (野菜新品種導入促進事業)
予算区分 :道費
担当科:上川農試 研究部 園芸科
試験期間 :平成7〜10年度
協力・分担関係:                                

1.目的

生産地において速やかに優良な品種を導入・普及するために、民間育成品種・系統の作型、作期毎の特性を明らかにし、品種選択の資料を提供する。

2.試験研究方法

(1)試験実施場所および年次  上川農試(平7〜10)、2)厚沢部町(平9、10)、3)北檜山町(平9、10)、

  4)三石町(平9、10)、5)伊達市(平9、10)、6)旭川市(平9、10)、7)遠別町(平9、10)、

  8)帯広市(平9、10)、9)長沼町(平10)、10)北見市(平9、10)

(2)耕種概要(上川農試)

3.結果の概要

上川農試において評価が2年間(加工用は3年以上)標準品種「トニック」(加工用は「プロセス27」)と同等以上であった品種・系統は以下の通りである。

「アーガス117」:二作期ともに標準よりやや晩生であり、標準並の抽台特性である。草姿は中間型でありやや丸形の葉形である。葉色は標準よりやや淡い。収量は作期Ⅰでは標準よりやや劣るものの作期Ⅱでは標準並である。

「晩抽ジュリアス」:標準並の早晩性、抽台特性である。葉形はやや丸形、半開張性の草姿である。葉色は標準よりやや淡い。収量は標準よりやや劣る。

「バンクーバー」:標準並の早晩性、抽台特性である。草姿は半開張性で葉形はやや丸形、葉色は標準よりやや淡い。収量は標準よりやや劣る。

「ベクトル」:発芽はやや不良であり、標準よりやや劣る早晩性である。抽台性は標準より晩抽である。草姿は半開張性で、葉先に尖りがみられる中間形の葉形であり、葉色は標準より濃く、青みが強い。葉身部のβカロチン含量は非常に多い。収量性はやや劣る。

「JT67」:標準よりやや晩生であり標準並の抽台特性である。草姿は半開張性、葉形はやや丸形であり葉色は標準よりやや淡い。収量性はやや劣る。

「進太郎」:標準並の早晩性、抽台特性である。草姿は中間型でありやや丸形の葉形である。葉色は標準よりやや淡い。収量性は、標準よりやや劣るが規格内株率が高く安定している。

「ノルディカ」:標準並の早晩性、抽台特性である。草姿は中間型でありやや丸形の葉形である。葉色は標準よりやや淡い。標準並の収量性である。

「SC3—22」:標準より晩抽性であるが二作期ともに標準並の早晩性である。草姿は半開張性で、やや丸形の葉形であり、葉色は標準より濃い。葉身部におけるβカロチン含量は非常に多い。収量はやや劣る。

(露地栽培)標準品種並の抽台特性および早晩性である。収量性は標準並である。

「いなずま」:標準より早抽性であり生育速度も早い。草姿は中間型でやや剣葉形で、葉色は標準並に濃い。葉身部のβカロチン含量は非常に多い。収量は劣る。

βカロチン、クロロフィル含量および葉柄糖度については品種間に有意な差が認められ、標準品種と比較して「いなずま」「ベクトル」「SC3−22」はβカロチン、クロロフィルともに含量が極めて多かった。各内部成分および生育期間の相関関係において、βカロチンとクロロフィルに非常に高い正の相関関係が認められた。またβカロチンおよびクロロフィルはアスコルビン酸とも正の相関関係が認められた。葉柄糖度と生育期間に正の、硝酸とアスコルビン酸には負の相関関係がそれぞれ認められた。

4.成果の活用面と留意点

ほうれんそうの産地における品種選定時の資料となる。

5.残された問題点とその対応

新たな品種および系統での特性を検討する。