成績概要書               (平成11年1月)
研究課題名:たまねぎの早期播種による前進栽培技術
        (たまねぎ新品種育成試験)
予算区分:道 費
担当科:北見農試 研究部 園芸科
試験期間:平成9〜10年度
協力・分担  

1.目的 少雪土壌凍結地帯において,8月上旬の早期出荷に対応する作型を開発する。

 

2.試験研究方法

(1)播種期と品種適応性 北見農試(平成9,10年),北見農技セ(平成10年)
  品種:「ソニック」,「北はやて」,「北早生3号」,「オホーツク1号」,
    「月輪」,「北もみじ86」,「スーパー北もみじ」
  播種期:12/19〜3/12,定植期:4/21〜5/13,育苗:慣行地床,定植:手植え
(2)播種密度
  品種:「北早生3号」,「オホーツク1号」,播種期:2/19,定植期:5/1
  育苗:慣行地床,定植:手植え,播種間隔:2水準
(3)育苗方式
  品種:「北早生3号」,「オホーツク1号」,播種期:1/16,2/19,3/11,定植期:4/21
  育苗:慣行地床,みのる式,定植:手植え
(4)内部品質
  試験(1)と(3)の「北早生3号」について,乾物率とBrixを測定。
 

3.結果の概要

(1)適応地域および圃場 当面,寒地秋播き栽培の困難な地帯で,4月20日頃から定植可能な圃場とする。
(2)適応品種と播種適期 「北はやて」,「北早生3号」が8月上旬までに収穫可能であり,本作型に適すると考えられた。なお,新たに適品種を検索する際には,収量性や品質のみならず,早晩性(日長感応性),耐抽台性,乾腐病抵抗性に留意する。「北はやて」では12月中旬から2月中旬までに播種し,4月20日頃から遅くとも5月初旬までに定植することが必要であり,「北早生3号」の場合は,12月中旬から2月上旬播種で,4月20日頃から遅くとも5月初旬までに定植することが必要であると考えられた。定植苗は,草丈25〜30cm,葉数3.5〜4.0枚,葉鞘径4〜4.5mmを目標とする。
(3)育苗方式 12月中旬から1月末播種までは,発芽期前後が厳冬期にあたるため,土壌水分保持と地温変化の緩慢な点から慣行地床育苗が安定している。みのる式育苗では厳冬期の育苗開始は苗生産に不安定であることが予想された。また,慣行地床育苗苗と比較して葉数,葉鞘径が優ることから,2月初旬以降の育苗開始が適すると考えられた。また,単年度の成績のみであるがみのる式では慣行育苗方式と比較して,圃場生育がやや劣り,分球の発生が多いなど,今後技術的な改良を加える必要があると考えられた。

表1 枯葉期と収量(播種期と品種適応性,平成10年)
 
 \播種
定植
枯葉期 規格内率(%) 規格内収量(kg/a)
12月
19日
1月
16日
1月
30日
2月
19日
3月
11日
12月
19日
1月
16日
1月
30日
2月
19日
3月
11日
12月
19日
1月
16日
1月
30日
2月
19日
3月
11日
  北はやて  
4月21日 7.3 8.2 8.6 8.5 8.12 88 78 79 73 (71) 611 591 659 523 (369)
5月1日 8.3 - 8.8 8.1 8.12 78 - 86 81 71 575 - 621 545 465
  北早生3号  
4月21日 8.7 8.14 8.15 8.15 8.2 76 59 63 57 (30) 640 529 549 440 (201)
5月1日 8.13 - 8.18 8.15 8.19 84 - 85 71 47 764 - 736 519 322
5月13日 - - - - 8.18 - - - - 57 - - - - 361
  オホーツク1号  
4月21日 8.17 8.22 8.23 8.25 9.4 77 73 59 60 (69) 713 732 569 571 (429)
5月1日 8.2 8.21 8.24 8.25 8.27 80 74 73 69 71 878 622 691 585 591
5月13日 - - - - 8.27 - - - - 69 - - - - 550
注)( )内は定植直後の高温と風害で欠株が著しかった区。規格は中晩生品種の選別基準によったため,通常の早期出荷基準より厳しい。


 ○:播種,〜:育苗期間,◎:定植,:圃場生育期間,■□:収穫および出荷
 図1 道産たまねぎの作型と本試験で提案する新作型(志賀,平成10年に加筆)

表2 8月上旬までに収穫するための播種期と定植期
品種(育苗方式) 播種 12月 1月 2月
定植予定
北はやて(慣行地床) 4/下-5/初  
北はやて(みのる式)          
北早生3号(慣行地床) 4/下-5/初      
北早生3号(みのる式)              
注)12月中旬から1月下旬播種:慣行地床育苗を中心とする。2月上旬から2月中旬播種:みのる式育苗を中心とする。倒伏揃後5日をめどに根切りし,枯葉期収穫を目標とする。

4.成果の活用面と留意点

(1)この栽培法は,8月上旬までに収穫・出荷を行う,早期出荷を目指したものである。そのためには,早期育苗技術だけではなく,本圃の準備と定植後の適切な栽培管理も重要である。
(2)通常の3月中旬播種慣行苗を4月下旬の早期に定植し,べたがけ被覆を行うと風害や高温害により欠株が多くなることがあるので使用を避ける。

5.残された問題点とその対応

(1)土壌凍結,残雪,降雨などで予定日に定植出来ない場合の対応(みのる式苗の延長管理)。
(2)極早生品種をみのる式で長期育苗する場合の剪葉基準の策定(平成11年試験実施予定)。
(3)乾腐病抵抗性の低い品種を長期育苗する場合の苗床での防除対策(苗床土壌消毒法)。
(4)苗床および本圃における適切な肥培管理法(平成11年試験実施予定)。
(5)多雪地帯での作型導入を検討する。
(6)本作型に適する品種育成をはかる。