研究課題名:雌花花成促進剤の利用によるかぼちゃの多収栽培技術 (連続着果によるカボチャの多収技術) 予算区分:道費 担 当 科:花・野菜技術セ 研究部 野菜第一科 研究期間:平8ー10年度 協力・分担関係:なし |
1.目的
株当たり収穫果数の増加ならびに一果重および品質の斉一化による多収栽培技術を確立する。
2.試験研究方法
試験場所:花・野菜技術センター
試験年次:平成8〜10年
供試品種:「えびす」
栽培方法:露地早熟(移植)、透明ポリフィルムマルチ使用、子蔓2本仕立て
年次 | 播種期 (月/日) |
定植期 (月/日) |
収穫期間 (月/日) |
施肥量 (Kg/a) |
堆肥 (Kg/a) |
|||
始 | 終 | N | P2O5 | K2O | ||||
平成8年 | 5月10日 | 6月7日 | 8月21日 | 9月17日 | 0.8 | 1.3 | 0.9 | 200 |
平成9年 | 5月8日 | 6月2日 | 8月16日 | 9月8日 | 0.8 | 1.1 | 0.9 | 200 |
平成10年 | 5月6日 | 6月1日 | 8月18日 | 8月28日 | 0.8 | 1.5 | 1.1 | 200 |
授粉:ミツバチを使用
供試薬剤(商品名)および処理方法:エテホン液剤(エスレル10)
200ppm、20ml/株、株全体に散布
3.結果の概要
1)エテホン液剤処理により一定の節位間を安定的に雌性化することができ、処理時期としては子蔓の4葉期が適当であった。この場合の連続して雌花が着生する節位は概ね15〜20節であった(図1)。
2)エテホン液剤処理を行った上で、連続着生した雌花のうち1子蔓当たり充実した2花を残して摘花(果)することにより、収穫果数および収量が増加した(表1)。
3)孫蔓の整枝法としては葉1枚を残して摘心するのが適当と思われた。
4)エテホン液剤処理を行った株では、雄花が正常に開花しなかった。また、処理後生育初期に蔓の伸長生長の抑制がみられた。
5)作物体の生育が不良の条件では、着果数が増加しても一果重が減少し、増収に結びつかないことがあった(表2)。
6)株当たりの着果数を増すことで、果実の内部品質が若干低下する傾向が認められたが、果実間の品質のばらつきは減少した(図2)。
7)エテホン液剤処理を行うことにより着果節位が揃い、一斉収穫による大幅な省力・軽作業化が可能であった(表3)。
8)エテホン液剤を利用したかぼちゃ栽培は、経営的にも改善効果が高かった。
表1 エテホン液剤処理および着果制限と収量(平成9年)
処理 | 着果数 (個/株) |
良果数 (個/a) |
良果 収量 (Kg/a) |
規格 内果率3 (%) |
平均 一果重 (g) |
|
エテホン | 着果制限1 | |||||
無 | 無 | 3.2 | 132 | 275 | 86 | 2,087 |
10〜15節 | 1.9 | 80 | 192 | 69 | 2,413 | |
15〜20節 | 2.8 | 115 | 311 | 42 | 2,713 | |
定植前 | 無 | 3.3 | 122 | 192 | 98 | 1,418 |
10〜15節 | 3.2 | 132 | 200 | 98 | 1,509 | |
4葉期 | 無 | 3.4 | 139 | 226 | 100 | 1,634 |
15〜20節 | 3.7 | 153 | 299 | 80 | 1,960 | |
慣行2 | 2 | 83 | 145 | 92 | 1,737 |
表2エテホン液剤処理および整枝法と収量(平成10年)
処理 | 着果数 (個/株) |
良果数 (個/a) |
良果 収量 (Kg/a) |
平均 一果重 (g) |
|
エテホン | 整枝法1 | ||||
無 | 全摘 | 1.7 | 71.1 | 170 | 2,379 |
1枚 | 1.9 | 76.4 | 174 | 2,280 | |
蔓 | 1.7 | 67.6 | 158 | 2,298 | |
1枚+蔓 | 1.8 | 72.9 | 158 | 2,093 | |
慣行 | 1.5 | 62.5 | 135 | 2,139 | |
有 | 全摘 | 2.2 | 83.3 | 140 | 1,584 |
1枚 | 2.2 | 83.2 | 150 | 1,714 | |
蔓 | 2.2 | 83.3 | 142 | 1,645 | |
1枚+蔓 | 2.5 | 92 | 162 | 1,653 | |
慣行 | 2.6 | 97.2 | 159 | 1,543 |
表3 作業時間に関する比較1
栽培法 | エテホン液剤処理に関係する作業時間 | その他 作業 時間 |
総計 | ||||
エテホン 液剤処理 |
整枝 | 摘果 | 収穫 | 小計 | |||
慣行(森町)2 | 0(-) | 6.0(2) | 0(-) | 20.0(2) | 26 | 79.2 | 105.2 |
慣行(和寒町)3 | 0(-) | 3.0(2) | 0(-) | 20.0(2) | 23 | 35.8 | 58.8 |
エテホン利用4 | 1.6(2) | 13.0(2) | 2.9(2) | 3.3(3) | 20.8 | 35.8 | 56.6 |
4.成果の活用面と留意点
①露地早熟(移植)作型における着果数の増加安定による多収、省力栽培技術として有効である(試験は「えびす」を用い子蔓2本仕立てで実施)。
②かぼちゃに対するエテホン液剤の使用については現在未登録であり、登録申請に向け作業中である。
③エテホン液剤処理を行った株では雄花が正常に開花しないため、授粉用に無処理の株を用意する(授粉用株の混植率については昭和62年指導参考事項を参照)。
④生育期間中の草勢の確保に努める。
エテホン液剤使用方法(案)
目的 | 使用時期 |
薬剤名および 使用濃度(量) | 使用方法 |
使用 回数 | 注意事項 |
雌花花 成促進 |
子蔓の 4葉期 |
エテホン液剤 〔エスレル10〕 (エテホン 10.0%) 500倍 20ml/株 |
株全体に 散布 | 1 |
1)生育適温範囲外での使用はさける。 2)降雨時および降雨直前の使用はさける。 3)授粉用に無処理の株を用意する。 4)生育期間中の草勢の確保に努める。 |
5.残された問題とその対応
エテホン液剤処理により着果数を増加させた際の草勢管理技術と内部品質向上法(肥培管理、栽植密度、整枝法等)。