成績概要書                          (作成 平成11年1月)
課題の分類
野菜・茶業  野菜・花き  育種      花 き   遺伝資源  球類類
北 海 道   作 物  園芸 花き  エレムルス  遺伝資源
研究課題名:エレムルスの品種特性
      (花き遺伝資源の導入及び特性の解明)
予算区分:バイテク(ジーンバンク)
担当研究室:北海道農試・作物開発・野菜花き研
研究期間:平成7〜10年度
担 当 者:篠田浩一・村田奈芳
協力・分担関係:な し  

1.目 的   露地栽培及び無加温ハウス栽培でのエレムルスの品種特性を明らかにする。

2.方 法
  1)試験年次:平成7年〜平成10年
  2)裁植密度:畝幅90cm、通路60cm、2条植え(条間45cm、株間45cm)
  3)供試品種:平成7年 5品種、 平成8年 17品種、 平成9年 20品種
  4)定植時期:10月中下旬(平成8年はハウスに9月下旬定植)
  5)ハウス栽培(無加温)の温度管理等:平成9、10年の2月上旬にビニルフィルムを被覆し、消雪後、平成9年は15℃換気、平成10年は20℃換気とした。

3.結果の概要
 (1)主要品種の特性の概要
 1)ヒマライクス:最も早咲きで、5月下旬〜6月中旬に開花する。花色は白。花茎長は120〜130cmで、花茎径は10〜12mmとやや太い。小球では開花率が低下しやすい。
 2)ロブスタス:花は淡桃色。花茎長は180〜220cmと極めて大型で、小花径も44〜46mmと最も大きい。塊根重が300g以下球では開花率が大きく低下する。
 3)ホワイト・ビューティー:花は白色で、花茎長は150cm程度。塊根重が300gまでは不開花株が多く、500gの大球でも不開花株が発生する。
 4)パレード:花は淡桃色で、花茎長は160〜180cmとやや大型。花穂長も65〜70cmと長い。花茎径は10〜11mmとやや太い。開花率は高い。
 5)トロピカル・ドリーム:花は白色で、花茎長は150〜180cm程度とやや大型。大球でも不開花となるものが見られる。
 6)イメージ:花は黄色で、花茎長は140〜180cmとやや大型。小花はステノフィルスより大きい。小球では開花率が低下しやすい。
 7)オベリスク:花は白で緑褐色の条線が入る。花茎長は140〜160cm、花茎は8〜9mmとやや細い。葉とともに花茎にも黒い病斑が発生しやすい。
 8)ハイブリダ・ミックス:開花期はやや遅く、花色は黄色。花茎長は130〜140cmで、花茎径は7〜8mmと細い。ステノフィルスに似るが、小花はやや大きい開花率は高い。
 9)クレオパトラ:開花期はやや遅く、花は橙黄色。花茎長は120〜160cm。開花率は高い。主芽の周辺に小さな芽を複数分化し、細く短い花茎が発生することがある。
 10)ステノフィルス:開花期は遅く、花は黄色。花茎長は120〜140cmとやや小型。1株より2〜3本花茎が生じることが多い。
 11)ピノキオ:最も遅咲きで7月中旬開花。花は橙黄色。花茎長は120〜150cm。
(2)無加温ハウスでの開花及び切花品質
 各品種とも露地と比較して2〜4週間程度開花が促進された。開花時期の早晩は、露地栽培での開花の早晩とほぼ一致し、ヒマライクスの開花が最も早く、ピノキオが最も遅咲きであった。採花期間は露地より短くなる品種が多かった。切花品質については、露地と大きな差異は認められなかった。

第1表 主要品種の特性(露地栽培)
品 種 名 開花日 花茎
花穂
茎径
小花
採花
増殖
病害
発生度
花色
平9 平10
  月.日  
ヒマライクス
ロブスタス
ホワイト・ビューティー
パレード
トロピカル・ドリーム
イメージ
オベリスク
ハイブリダ・ミックス
クレオパトラ
ステノフィルス
ピノキオ
6.11
6.22
6.25
6.25
6.26
7.02
7.01
7.02
7.01
7.03
7.11
5.30
6.17
6.20
6.22
6.22
6.23
6.24
6.27
6.29
7.01
7.12
4
7
5
6
6
5
5
4
5
4
4
3
7
5
7
5
6
6
5
5
5
6
5
7
5
5
5
4
4
4
4
3
3
5
6
5
5
5
5
6
4
5
4
4
4
3
5
5
4
4
4
5
5
6
5
4
3
4
6
4
5
5
7
6
7
7
3
4
5
4
4
3
7
4
3
4
4

淡桃

淡桃






橙黄

第2表 主要品種の特性(無加温ハウス栽培)
品 種 名 開花日




平9 平10
月.日(日)
ヒマライクス 5.16(26) 5.04(26) 4 3 5
ホワイト・ビューティー
6.09(16) 5.25(26) 6 7 5
パレード 6.11(14) 5.24(29) 5 5 5
イメージ 6.19(13) 5.27(27) 6 7 4
オベリスク 6.18(13) 5.31(24) 6 7 4
クレオパトラ   - 6.01(28) 4 5 4
ステノフィルス 6.20(13) 6.04(27) 4 4 3
ピノキオ   - 6.18(24) 3 5 3
 ( )内の数字は、露地の開花日との差。
クレオパトラ、ピノキオは平成10年のみの調査。

   参考(指数に相当する値)

花茎長 花穂長 茎径 小花径 採花数 増殖性 病害発生度
7 5 3 7 5 3 7 5 3 7 5 3 7 5 3 7 5 3 7 5 3

3
4
5
6
7
    cm
<120
<140
<160
<180
<200
    cm
<30
<40
<50
<60
<70
  mm
<7
<10
<13
<16
<19
  mm
<20
<30
<40
<50
<60
本/株
<0.8
<1.2
<1.6
<2.0
<2.4
 
少ない
 
 
 
多い
 
少ない
 
 
 
多い
 

 4.成果の活用面と留意点
 産地における品種選定時の資料とする
 

 5.残された問題点とその対応
   加温促成栽培時の低温要求量の把握