成績概要書           (平成11年1月)
課題の分類
研究課題名:スプレーカーネーションの品種特性Ⅲ
        (主要花きの品種特性調査)
予算区分 :道単
担当:花・野菜技術センター研究部花き第二科
研究期間 :平9〜10年度
協力・分担関係:

1.目的 新品種の特性を調査し、北海道での無加温短期作型栽培において、市場性の高い高品質・多収の優良品種を効率的に選定し適正に栽培するための資料とする。

2.試験研究方法 
(1) 供試品種:平成9年度は21品種。平成10年度は、前年度供試した品種のうち、切花長が長い品種およびオレンジ色系や複色で花色に特徴のある品種11品種について継続調査した。
(2) 栽培概要:作型:無加温短期作型。栽植密度:8条植え(条間10cm、株間20cm、中1条抜き) 。2反復。
施肥量:N-P2O5-K2O 各3kg/a。定植期:平成9年度は5月1日、平成10年度は4月24日(ダイアンサス系は4月28日)。摘心期:平成9年度は5月22日、平成10年度は5月19〜20日。仕立て本数:4本/株、栽培箇所:無加温ハウス(1棟)。採花打切り:平成9年度は11月7日、平成10年度は10月22日。
(3)調査方法:採花始、採花期、採花終、採花率、切花長、茎径、節間長、分枝数、分枝長、有効花蕾数、は「園芸作物に関する試験方法・調査要領」による。
到花日数:定植期ないし摘心期から採花期までの日数。
切花重:下葉調製後の重量。
花径:最大花の直径。
下垂度:先端から45cmの部位を支点とし、下垂角度10°未満を1、30°以上を4。
花梗開度:広3〜狭1。
花弁色:分光測色色差計による。
茎の硬さ:頂花着生節を第1節とし、第3、第5、第7節の圧縮強度をテクスチュア・アナライザで測定。

3.結果の概要 2年間供試した品種の特性は次のとおりであった。
(1)赤系:
ペチカ:到花日数は、平成9年度は114日、平成10年度は115日であった。採花率は約78%であった。花色は鮮赤、小輪で、有効花蕾数はやや少なかった。第3節の硬さはバーバラよりも低く、第5、7節の硬さはバーバラよりも高かった。下垂度、花梗開度はバーバラなみ。オズ:採花率は両年とも46%程度で、著しく低かった。晩生で、無加温短期作型には適さないと考えられる。
(2)ローズピンク系:
バーバラ(標準品種):到花日数は、平成9年度は142日、平成10年度は126日であった。採花率は、平成9年度は75%であったが、平成10年度は60%以下にとどまった。第3節の硬さは他のすべての品種を上回った。平均切花長は71cmで、60cm以上の割合は97%、70cm以上の割合は56%であった。
(3)橙色系:
オータム:到花日数は、平成9年度は128日、平成10年度は116日で、バーバラよりも2週間程度短かった。採花率は、平成9年度は79%、平成10年度は86%であった。花は、明るい橙色の地にローズピンクの条斑が入り、小輪で、有効花蕾数はバーバラと同等であった。第3節の硬さはバーバラよりも低く、第5、7節の硬さはバーバラをやや上回った。下垂度、花梗開度はバーバラと同程度であった。切花長は長く、80〜100cmの割合が87%であった。
ティータイム:到花日数は、バーバラよりも3週間程度短かった。採花率は、平成9年度は84%、平成10年度は88%であった。花は淡橙色の地にローズピンクの条斑が入る。第3節の硬さはバーバラよりもかなり低かった。切花長は短く、60cm未満の割合は約53%であった。
(4)紫色系:
ライラックマギー:到花日数は、バーバラよりも3〜4週間程度短く、極早生であった。採花率は、平成9年度は約86%、平成10年度は90%であった。花色は淡紫色で、丸弁、小輪で、有効花蕾数はやや多かった。第3、5節の硬さは低かった。切花長はバーバラと同等で、70cm以上の割合は48%であった。
(5)複色:
バレンタイン:到花日数は、平成9年度は140日でバーバラなみであったが、平成10年度は104日で、バーバラよりも3週間程度短かった。採花率は、平成9年度は約75%でバーバラと同等、平成10年度は88%でバーバラよりも高かった。花は、ローズピンクの地に白の覆輪であった。第3、5、7節の硬さはいずれも低かった。切花長は長く、70cm以上の割合は96%で、揃いが良好であった。アレグリア:両年とも採花期には至らず、採花率は33%程度で、供試品種中もっとも低かった。極晩生で、無加温短期作型には適さないと考えられる。
アレクサンドライト:到花日数は、平成9年度は163日でバーバラより3週間長かったが、平成10年度は124日でバーバラなみであった。採花率は、平成9年度は約59%、平成10年度は66%であった。地色は淡緑色で、ローズピンクの細い条斑が多数入る。第3節の硬さはバーバラよりもやや低かったが、第5、7節の硬さはバーバラよりも大であった。
レニー:到花日数は、バーバラよりも2週間程度短かった。採花率は、平成9年度は約86%、平成10年度は88%であった。地色は白色で、ローズピンクの縁取りが入る。花弁の裏側にもローズピンクの条斑が入る。小輪で、有効花蕾数はやや多かった。第3、5、7節ともバーバラよりも低硬度であった。下垂度、花梗開度はバーバラなみで、切花長はバーバラよりもやや長く、70cm以上の割合は74%であった。
(6)ダイアンサス系:
ソネットスウ:到花日数は、平成9年度は83日、平成10年度は75日であった。採花率は、平成9年度は約103%、平成10年度は95%であった。地色はやや暗い(L*値は31.1)赤色で白色の覆輪。切花長はダイアンサス系としては長く、60cm以上の割合は88%であった。下垂度は小さかった。

主要成果の具体的数字

表-1 早晩性及び切花品質
品種名 到花日数 切花長 切花重
有効
花蕾数
茎径 花径 下垂度 第5節の
硬さ*
花梗
開度
採花率
定植期
から
摘心期
から
(cm) (g) (個) (mm) (mm) (g) (%)
バーバラ 157 134 70.7 35.1 4.9 3.1 52.2 1.7 1872 1.6 67.0
ペチカ(2618) 138 115 72.8 33.0 4.5 3.2 50.2 1.8 1923 1.7 77.6
オズ 180* - >73.0 47.0 7.1 3.4 50.7 1.3 2624 1.3 46.2
オータム(279-42) 145 122 82.2 40.8 5.2 3.1 48.3 1.5 2206 1.8 82.7
ティータイム 132 109 57.6 23.0 4.3 3.3 47.4 1.3 1914 1.4 85.7
ライラックマギー 130 107 68.9 31.8 5.8 3.2 48.2 1.5 1698 1.6 87.8
バレンタイン 145 122 77.8 35.4 5.2 3.2 52.2 1.8 1293 1.2 81.4
アレグリア - - 78.8 44.5 6.2 3.2 46.0 1.3 1829 1.6 33.4
アレクサンドライト 167 144 72.1 35.8 4.3 3.1 51.5 1.3 2733 1.4 62.6
レニー 142 119 73.6 31.9 5.5 3.0 48.1 1.6 1703 1.4 86.8
ソネットスウ
(ダイアンサス系)
101 79 68.2 19.2 6.7 3.0 35.9 1.3 1683 1.0 99.3
 *平成9年度のみ

表-2 切花長別割合(%)
品種名 55cm
未満
55cm
以上
60cm
未満
60cm
以上
65cm
未満
65cm
以上
70cm
未満
70cm
以上
80cm
未満
80cm
以上
90cm
未満
90cm
以上
100cm
未満
100cm
以上
バーバラ 1.7 1.7 12.2 28.4 48.7 7.3 0.0 0.0
ペチカ(2618) 0.0 1.3 2.1 20.7 56.3 19.5 0.0 0.0
オズ 0.0 0.6 2.6 7.3 44.5 42.5 2.6 0.0
オータム(279-42) 0.0 0.0 0.4 0.0 35.4 49.7 14.5 0.0
ティータイム 19.1 33.5 34.3 8.5 3.6 1.0 0.0 0.0
ライラックマギー 1.0 8.9 19.9 22.0 43.8 3.2 1.2 0.0
バレンタイン 0.0 0.0 0.0 0.0 40.3 56.4 3.3 0.0
アレグリア 0.0 1.3 3.4 4.7 39.4 49.5 1.7 0.0
アレクサンドライト 0.0 0.0 7.0 21.1 67.4 4.5 0.0 0.0
レニー 1.3 0.0 5.8 19.0 61.5 12.4 0.0 0.0
品種名 40cm未満 40cm以上
50cm未満
50cm以上
60cm未満
60cm以上
70cm未満
70cm以上
ソネットスウ
(ダイアンサス系)
0.0 0.0 11.7 39.6 48.6

表-3 要約表
品種名 花色 早晩性 切花長 切花重 花蕾数 茎径 下垂度 第5節
の硬さ
花梗
開度
採花率
晩中早 長中短 重中軽 多中少 太中細 大中小 硬中軟 広中狭 高中低
7 5 3 7 5 3 7 5 3 7 5 3 7 5 3 7 5 3 7 5 3 7 5 3 7 5 3
バーバラ ローズピンク 5 5 5 4 5 3 5 5 5
ペチカ
(2618)
2 5 4 4 5 3 5 5 6
オズ 暗赤 7 5 7 7 5 2 7 4 3
オータム
(279-42)
3 7 6 5 5 3 6 6 6
ティー
タイム
淡橙 2 2 2 4 5 2 5 4 7
ライラッ
クマギー
淡紫 2 4 4 5 5 3 4 5 7
バレン
タイン
赤/白 3 6 5 5 5 3 3 3 6
アレグリ
橙/ローズ
ピンク
7 6 6 6 5 2 5 5 2
アレクサ
ンドライ
淡緑/ローズ
ピンクの
条斑
7 5 5 4 5 2 7 4 4
レニー 白/ローズ
ピンク
2 5 4 5 5 3 4 4 7
ソネット
スウ
(ダイアン
サス系)
ローズ
ピンク/白
2 4 2 6 5 2 4 2 7
指数に相当する値 cm g mm   g   %
2  <120 <60 <25 <3 <2.0 <1.5 <1000 <1.1 <45
3  <125 <65 <30 <4 <2.5 <2.0 <1400 <1.3 <55
4  <130 <70 <35 <5 <3.0 <2.5 <1800 <1.5 <65
5  <135 <75 <40 <6 <3.5 <3.0 <2200 <1.7 <75
6  <140 <80 <45 <7 <4.0 <3.5 <2600 <1.9 <85
7  140≦ <85 <50 <8 <4.5 ≦4.0 <3000 <2.1 ≦100

4.成果の活用面と留意点


本試験は雨よけハウスにおける無加温短期作型で実施したものであることを考慮すること。


5.残された問題点とその対応


継続的な新品種特性の把握