成績概要書                 (作成 平成11年1月)
課題の分類   北海道  家畜・草地  畜 産  育種遺伝  根釧農試
研究課題名: カゼイン遺伝子型解析による乳牛群選抜法
        (乳量乳質向上のためのカゼイン遺伝子型による乳牛群選抜法)
予算区分:道  費
担 当 科:根釧農試 研究部 酪農第一科
研究期間:平成5〜9年度
協力・分担関係:  なし

1.目的

北海道乳牛群の乳蛋白質遺伝子型を検索することで、乳中カゼインに関する遺伝的特性を解析する。その結果、乳牛群の乳蛋白遺伝子多型の遺伝的構成を明らかにし、他の生産性に関する遺伝的能力との関連性を解明する。

2.方法

(1)北海道乳牛群の乳蛋白遺伝子多型の検索 北海道東部3町3395頭の乳蛋白質遺伝子多型による遺伝的変異をポリアクリルアミド電気泳動法を用い、乳清およびカゼイン蛋白の遺伝的変異を検索した。
(2)乳蛋白質遺伝子型構成と他の形質との遺伝的関連性の解明
最小二乗法による要因解析および血統情報を組み込んだ多形質REML法を用いた個体モデルBLUP法による遺伝パラメータおよび育種価の推定を行った。

3.結果の概要

(1)βラクトグロブリンおよび3つのカゼイン遺伝子頻度は表1に示した。
(2)カゼイン遺伝子型の生産形質への効果は、κカゼインで乳量、乳蛋白質量および乳脂肪量でBB型が有意に多かった。βカゼインおよびαS1カゼインでは、生産量への寄与は判然としなかった。
(3)カゼイン遺伝子型を考慮した多形質REML法による解析の結果としての遺伝パラメータは表2に示した。
(4)産乳形質の推定育種価(BV)の集団平均の誕生年による年次変化は、乳量、乳蛋白質量および乳脂肪量で、年当たり推定遺伝的改良量は各々8.86kg、1.25kg および0.61kgであった。
(5)雌牛集団を乳蛋白質遺伝子型別に年当たり推定遺伝的改良量を算出した。
乳量はκCN-BB型13.57kg/年、αS1CN-BB型63.95kg/年およびβCN-A1A1型19.94kg /年であった。
乳蛋白質量ではκCN-BB型1.92kg/年、αS1CN-BC型1.59kg/年、βCN-A1A1型5.45 kg/年であった
(図1)。
そして、乳脂肪量はκCN-BB型2.28kg/年、αS1CN-BC型0.97kg/年、βCN-A1A1型 1.87kg/年であった。
したがって、カゼイン遺伝子はκCNにおいて、B遺伝子、αS1CNはB遺伝子そしてβCNはA1遺伝子の存在で乳量、乳成分量の増加が期待されることが示唆された。年当たり期待遺伝的改良量は、表3に示した回帰式により得られる。

4.成果の活用面と留意点

(1)乳牛群の年当たり遺伝的改良量を、遺伝子型別回帰式を用いて推定できる。
(2)種雄牛側の乳蛋白遺伝的多型情報を基礎に、交配種雄牛を選択する必要がある
(3)地域各種分析施設を利用し、乳蛋白質の遺伝的多型分析を実施するための、雌側の分子遺伝学的解析システムの構築が必要である。

5.残された問題とその対応

(1)カゼインハプロタイプの遺伝的解析が必要である。
(2)管理形質・繁殖形質・抗病性に関する遺伝的特質等の解析が必要である。