成績概要書                        (作成 平成11年2月3日)

課題の分類  根釧農試
研究課題名   フリーストール経営における飼養管理と経済性評価
          (大規模土地利用型酪農における省力的群管理技術の開発)
     Ⅱ フリーストール牛舎における乳牛行動と牛床の快適性判定法
予算区分  国費補助(地域基幹)
担  当   根釧農試 研究部 酪農施設科
研究期間  平成6〜10年度
協力分担  群馬畜試、福岡総農試畜研、
        大分畜試、宮崎畜試

1.目的

 フリ−スト−ル・ミルキングパ−ラ方式を導入するにあたっては、省力的な乳牛管理作業と乳牛にとって快適な空間を確保する必要がある。そこで、フリーストール方式における施設構造やレイアウトによる乳牛行動を明らかにするとともに、フリーストール牛舎の快適性の判定法を提示する。

2.方法

1)フリーストール牛舎における乳牛行動
(1)乳牛行動調査農家の牛舎構造
 乳牛行動調査農家12戸(A〜L農家)、項目:飼養頭数、牛床数・構造、牛舎レイアウト等
(2)フリーストール飼養農家の乳牛行動(1996年6月〜11月)
 根室管内のフリーストール飼養農家12戸(うちビデオ撮影4戸)、24時間行動観察、ビデオ撮影
2)牛床の快適性判定法
(1)牛床改良と乳牛行動の変化
(2)乳牛行動による牛床の快適性の改善と判定法
 24時間乳牛行動調査から横臥率(観察時の牛床利用総頭数に対する牛床横臥頭数の割合)を検討

3.結果の概要

1)24時間連続観察とビデオ撮影による乳牛行動解析の結果、24時間の連続観察であっても発情牛や治療などで大きく乳牛の動きが乱されない限り、1週間の平均的行動と同様の傾向がみられた。乳牛の日中の牛床横臥率は搾乳後が最も高く、その後徐々に低下し搾乳前で最低となる傾向にあった。夜間の横臥率は夜中に採食頭数が増加するため一旦低くなる場合もあるが、飼槽の飼料が減少するにしたがって横臥率は上昇する傾向にある。

2)搾乳作業前後の飼料給与の有無により、搾乳後の乳牛行動が決定され、搾乳終了時に新鮮な飼料が配餌されているとまず採食してから横臥していた。

3)搾乳時間を除いた乳牛の一日の行動は、牛床横臥が52.7%、牛床佇立15.0%、採食21.7%であった。しかし、農家間に明らかな差がみられ、牛床構造によって牛の休息しやすさが異なると考えられ、全頭に対する牛床横臥頭数割合と牛床横臥率を観察することによって、牛床の快適性が推定できる。

4)牛床空間を改善して頭部突き出し空間を確保した場合には、牛床横臥率は約2週間〜3週間で安定し、牛床改善後、平均横臥率が前年と比較し17%増加した。

5)牛床横臥率から一般的な牛床の快適性を判断するための目安は、乳牛の行動が比較的安定している状態での24時間観察の場合、平均的な横臥率の範囲は70〜80%、牛床が快適で横臥しやすい横臥率の範囲は80%以上、牛床に何らかの問題がある横臥率の範囲は70%以下と分類できる。

6)乳牛行動から簡易に牛床の快適性を判断する場合には、夜搾乳終了1.5時間後から2時間の観察(搾乳終了後給餌の場合には給餌終了2時間後から2時間の観察)により判断できる。


図1 24時間観察による経産牛行動の日変化(左:F農家 (横臥率62.0%)、右:K農家(横臥率85.7%))

表1 乳牛行動の出現割合(%)
農家区分* A B C D E-1 E-2 F-1 F-2 G H I J K-1 K-2 L 平均 偏差

牛床横臥

52.0 62.8 58.3 45.9 55.6 52.1 42.1 44.8 36.7 44.1 55.2 56.3 63.4 66.9 53.8 52.7 8.6
牛床佇立 18.4 9.0 8.0 13.6 14.5 9.1 26.0 15.2 28.7 21.0 18.4 13.5 10.6 7.0 12.9 15.0 6.4

牛床側
通路佇立

1.3 2.3 7.9 7.6 2.4 6.2 3.1 4.7 4.7 - 1.5 1.2 1.7 1.2 1.8 3.2 2.4

飼槽側
通路佇立

6.9 4.1 7.3 7.1 5.6 8.1 7.4 8.4 10.7 20.3 4.7 4.7 4.2 4.9 6.4 7.4 4.0

採  食

21.4 21.8 18.5 25.8 21.9 24.5 21.4 26.9 19.2 14.6 20.2 24.3 20.1 20.0 25.1 21.7 3.2
 注:農家区分(-1):経産牛、(-2):初産牛、下線は平均±σの範囲を超えているもの。

図2 F農家初産牛群の牛床での行動(4日間平均、左:改造前1996、右:改造後1997)

表2 24時間乳牛行動調査による平均横臥率、平均牛床利用率(初産牛群単独除く、%)
農家区分*

C0

F0

H

F2

F1

G0

E1

A0

I0

D0

K1

E0

J0

L0

K0

B0

平均* 偏差*
横臥率 87.9 62.0 66.3 67.4 68.4 68.9 72.1 74.4 74.5 77.3 78.6 78.8 80.0 81.0 85.7 87.4 74.9 7.4
牛床利用率 66.3 70.3 63.9 70.2 65.2 70.6 72.0 70.1 78.6 62.9 65.6 74.2 77.7 66.1 77.2 68.0 70.2 5.0
注:農家区分の後の数字は、0は1997年、1〜2は1998年の反復調査回数である。
  平均・偏差は乳牛収容密度が1.3(頭数/牛床数)と高いC0農家を除く。

4.成果の活用面と留意点

 1)この調査結果は、温暖な期間の平均的な乳牛行動である。
 2)給飼作業や採食行動など、飼養管理も含めた乳牛管理全体の問題点が把握できるので、乳牛行動観察は24時間の連続観察を基本とする。

5.残された問題とその対応

 1)暑熱期および寒冷期の乳牛行動の変化。
 2)牛床の素材による牛床横臥率の変化、および連続横臥時間の調査と検討。