成績概要書                                 (作成 平成11年1月)

課題の分類−根釧農試 研究課題名:フリーストール経営における飼養管理と経済性評価
      (大規模土地利用型酪農における省力的群管理技術の開発)
      Ⅲ.フリーストール牛群の飼養管理と乳牛行動
予算区分 :国補(地域基幹)
担当研究室:根釧農試 研究部 酪農第一科
研究期間 :平成6〜年度
協力・分担関係:新得畜試、福岡総農試畜研
          宮崎畜試、大分畜試、群馬畜試

1.目的

 フリーストール牛群への移行期、群分け基準別の牛群行動への影響を調査することによって、フリーストール群管理上の留意点を示す。

2.方法

①フリーストール農家における牛群行動の調査
管内12戸において24時間乳牛行動観察を行い、行動と乳量、飼養密度との関係を調査した。
②フリーストール移行期の乳牛の行動調査
初産牛5頭および経産牛3頭のフリーストール移行後3日間、4〜7日間、2週目,4週目,8週目の3日間の乳牛行動と乳量、血液成分との関係を調査した。
③飼養密度と乳牛の群分け基準別の乳牛の行動調査
初産牛5頭と2産以上の牛10頭の合計15頭の小群を用いて、1度に利用可能な飼槽数と牛床数を15,10,5頭分に減少させたときの乳牛行動と乳量、飼料摂取量の関係を調査した。

3.結果の概要

①フリーストール農家における24時間牛群行動調査
1)1頭当たりの牛床数が1.0以下の農家の乳牛の1日の平均横臥時間は654分であり、1.1以上(813分)よりも少ない傾向があった(表1)。
2)1頭あたりの牛床数が一番少ない農家において、全横臥時間に占める0〜5時の割合は初産牛が25%であり、2産以上の牛(30%)よりも少なかったが、6〜11時の割合は初産牛で29%と2産以上の牛(23%)より多い傾向があり、初産牛は夜間の横臥の不足分を昼間に補うと考えられた(図1)。
3)1頭当たりの飼槽幅が70cm以上の農家の乳牛の1日の平均採食時間は315分であり、70cm以下の農家(271分)よりも長い傾向があった(表2)。
4)1日の反芻頭数は牛群の35〜40%であり、搾乳前後以外は1日を通じて安定していた(図2)。

②フリーストール移行期の乳牛の行動的特徴
5)フリーストール移行期の初産牛の採食時間は219分であり、移行後8週目には341分まで増加したが、個体差が大きかった。

③飼養密度の変化が乳牛行動や生産性に及ぼす影響
6)15頭に対して利用可能な飼槽数が5になると、2産以上の1日の採食時間は297分、初産牛の採食時間は235分となり、初産牛において飼槽数の減少による影響は大きい傾向があった。15頭に対して利用可能な牛床数が5になると、2産以上の1日の横臥時間は554分、初産牛の横臥時間は594分となったが、通路で横臥する初産牛が見られるようになった(表3)。
7)飼槽数および牛床数の減少により、乳量がやや低下する傾向が見られたが、乾物摂取量への影響はみられず、飼養密度と生産性の関連については今後検討が必要である(表4)。

表1.頭当たりの牛床数と横臥時間との関係

表2.頭当たりの飼槽幅と採食時間の関係

表3.飼槽数や牛床数の減少が採食、横臥行動に与える影響

表4.飼槽数や牛床数の減少が採食量、乳量に及ぼす影響


        図1.1頭に当たりの牛床数が0.67
        の農家における横臥行動への影響


             図2.一日の反芻頭数の推移

4.成果の活用面と留意点

1)反芻行動の評価には、搾乳前後それぞれ約2時間を除いた、牛群に占める頭数割合を用いる。

5.残された問題点とその対応

1)飼料の物理性や飼料構成に対する牛群の採食行動への影響を検討する。
2)佇立時間が肢蹄に及ぼす影響について検討する。