成績概要書                         (作成 平成11年1月)

課題の分類

北海道

       

根釧農試

研究課題名:フリーストール経営における飼養管理と経済性評価

     (大規模土地利用型酪農における省力的群管理技術の開発)

      Ⅶ.フリーストール経営の投資水準と収益性

予算区分:国補(地域基幹)       担当科:根釧農試研究部経営科

研究年度:平成9〜10年度        協力・分担関係:根釧農試酪農第一科、二科、酪農                

                    施設科、福岡県総農試畜研、大分県畜試、宮崎県畜

                    試、群馬県畜試

1.目 的

本課題ではFS牛舎規模が牛床数100程度、経産牛頭数115頭程度、家族労働力3人を基本とした大規模フリーストール飼養技術を想定し、規模拡大した酪農経営の資本投資と回収状況を現状での技術体系を用いたモデルから検証する。

2.方 法

 フリーストール飼養体系モデルを用いたシミュレーション分析。

 基本的な設定条件は目標経産牛頭数規模115頭、乳量水準8,000kg/頭、家族労働力3人および2人、1日の労働時間は1人当たり10時間、初産分娩月齢24、26、28ヶ月、分娩間隔13ヶ月、除籍率25、30%、通年舎飼で育成牛のみ公共牧場利用、牧草生産量3,600kg/10a、投資水準は標準投資タイプ(公社営事業などでの施設導入)、低水準投資タイプ(機械取得額半額、牛舎施設等は農家が建設・耐用年数短縮)、中間投資タイプ(機械などの取得額を半額)の3つ、施設・機械などの取得費用の借入金比率を20、50、80%の3水準、農地は乳牛の増加に応じて確保する(購入と借地を半々)としたなど。

3.結果の概要

1)家族労働力3人、初産分娩月齢26ヶ月、除籍率25%、借入金比率50%の場合、目標経産牛頭数に達するのは7年目で、農業所得は低水準投資タイプ2,002万円、中間投資タイプ1,940万円、標準投資タイプ1,604万円であった。労働時間は男性1が2,795時間、男性2は1,006時間、女性が1,678時間であった。初産分娩月齢28ヶ月になると標準投資タイプは農業所得が1,230万円と低下した。さらに、初産分娩月齢26ヶ月・除籍率30%では目標頭数到達に11年を要し、農業所得は1,310万円となった。標準投資タイプでは繁殖が悪い場合の収益性に問題が残った。

2)家族労働力を2人にした場合の労働時間は男性2,893時間、女性2,212時間で457時間の不足が生じた。その対応として雇用労働力利用、一部コントラクタの利用、全面的なコントラクタ利用時の農業所得の比較を行った。労働力不足の時期だけスポット的な臨時雇用を行う時の所得(1,545万円)が高いが、長期間にわたり労働力が不足し人員確保や作業能率に不安が残り、今回の検討の中では季節雇用や通年雇用者の確保のほうが農業所得(標準投資タイプで1,483万円)としては妥当性があると考える。

3)資本回収法で設備投資の妥当性を検討したが、どのタイプもフリーストール牛舎導入直後は資本回収必要額に対して資本回収見込額が下回る。上回るようになるには標準投資タイプが6年目、中間投資タイプと低水準投資タイプが4年目である。標準タイプでは繁殖成績低い場合や借入金比率が高い場合では資本回収が進まなくなり設備投資の妥当性が失われるため、フリーストール飼養体系の酪農家平均程度の繁殖成績を維持するなどの対応が必要である。また、低水準投資タイプでは農業所得が高いが、機械・施設の耐用年数を短く設定したので繁殖成績が悪い場合には、資本回収がそれほど進まない結果となり、フリーストール牛舎等への投資額を低く抑えた場合でも耐用年数を引延ばすことが必要になる。


図 年次経過と農業所得の推移(投資水準の違い)

 

表2 標準投資タイプの資本回収状況(家族3人、初産月齢26ヶ月、除籍率25%、借入金50%)

 

4.成果の活用面と留意点

 経産牛頭数規模115頭程度の試算であること、草地型FS飼養体系を念頭においたものである。

 

5 残された問題とその対応

 舎飼飼養のみの検討であり乳量水準が一定であるため、放牧導入の検討などが必要である。

 牧草収穫などでの費用削減対策についての検討が必要である。

 既存負債や資金調達などについて更に検討する必要がある。