成績概要書                           (作成 平成11年1月)
研究課題名: 0.1%ヨウ素乳頭消毒剤を用いたプレディッピングの牛乳房炎予防効果
予算区分 : 受託 担当科: 新得畜試 生産技術部 衛生科
                          家畜部   酪農科
研究期間 : 平10年度
協力・分担関係: 日本全薬工業株式会社 中央研究所  

1.目 的
 プレディッピングにも適用できる消毒剤としてわが国で初めて認可を受けた0.1%ヨウ素乳頭消毒剤「NZ78」を用いたプレディッピングの牛乳房炎予防効果について検討するとともに、乳汁中のヨウ素残留への影響および乳頭表面細菌に対する殺菌効果について検討する。

2.方 法
 1)プレディッピングの牛乳房炎予防効果
 2)プレディッピングの乳頭表面細菌に対する殺菌効果
 3)プレディッピングの乳汁中ヨウ素濃度に及ぼす影響

3.結果の概要
 1)試験期間(6か月間)中に主要な乳房炎起因細菌に感染した牛は、プレディッピング群では14  頭中0頭、対照群では15頭中4頭で、乳房炎発生率はプレディッピング群の方が対照群よりも  低かった(P=0.057)(表1)。起因細菌の内訳は、大腸菌1頭、減乳性連鎖球菌1頭および乳房連  鎖球菌2頭で、いずれも環境性細菌であった(表2)。
 2)搾乳作業前およびミルカー離脱直後の乳頭表面細菌数はプレディッピング群と対照群の間に有  意差は認められなかった(各群8頭、16分房)。 
   ミルカー装着直前における同細菌数は、プレディッピング群の方が対照群よりも有意(P<   0.05)に少なかった。両群ともミルカー装着直前およびミルカー離脱直後の同細菌数は、乳頭清  拭前に比較して有意(P<0.01)に低い値を示した(図1)。
 
 3)個体乳中のヨウ素濃度はプレディッピング群と対照群の間に有意差は認められなかった。    (図2)
 
   以上の成績から、無乳性連鎖球菌以外の連鎖球菌および大腸菌などの環境性細菌による乳房炎  が多発している牛群においてはNZ78を用いたプレディッピングは、これらの乳房炎の発生率を  低下させるための一方策として有用であることが示唆された。
 

表1.乳房炎発生率
プレディッピング群
対照群
 0%(0/14)
27%(4/15)  
(感染牛頭数/供試牛頭数)

表2.乳 房 炎 罹 患 牛
牛番号 乳房炎型 起 因 細 菌 種
110
138
 74
174
臨床型
潜在性
潜在性
潜在性
Escherichia coli(大腸菌)
Streptococcus dysgalactiae (減乳性連鎖球菌)
Streptococcus uberis(乳房連鎖球菌)
Streptococcus uberis(乳房連鎖球菌)  

4.成果の活用面と留意点
 1)プレディッピングを行う際、乳汁中へのヨウ素の残留を一定レベル以下に保持するため、薬液  浸漬後の感作時間(15〜30秒間)を厳守し、ミルカー装着前の乳頭の清拭、特に乳頭口周囲の清拭は確実に行う必要がある。
 2)プレディッピングの十分な殺菌効果を得るために、搾乳牛の乳頭を清潔に保つ必要がある。 
 3)ディッパーはプレディッピング用とポストディッピング用としてそれぞれ専用のものを用意することが望ましい。

5.残された問題とその対応
 伝染性細菌による乳房炎に対する予防効果の検討。